happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

角田光代著「八日目の蝉」読了♪

4月11日に予約してた
角田光代著「八日目の蝉」が3ヶ月ほど待って 回って来ました
本屋大賞 2008年度 第6位の作品です


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先日 檀れいさん主演で NHKで同名のドラマが放映されてましたね。(観なかったけど)

新聞で紹介されてたので 予約してた気がします

すごく面白いので あっという間に読んでしまいました
まさにノンストップノベルでした!

↓ネタバレあります

第一章:日記形式で 希和子が赤ちゃんを誘拐するところから始まり
    小豆島の港で逮捕されるまでの5年が語られる

第二章:赤ちゃんだった「薫」のその後
    もとの両親の元へ戻ったが 決して幸せとは言えない少女時代を過ごし
    大学生になった 薫こと恵理菜
    いかに苦しんだかが語られる

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考えさせられる小説です

主人公の野々宮希和子は 不倫をしていた男性(秋山)の子を身ごもったが
自分たちの将来のために・・・と言いくるめられ堕胎させられた

が、結局 秋山は妻との間に子供をもうけ、希和子とは別れる

自分は子供を諦め そのせいで妊娠できない体になってしまったのに
男の家庭には赤ちゃんが生まれた・・・
なんという理不尽、なんという損な役回りの希和子

憎むべきは 優柔不断な男、秋山
罪を作るのは たいてい 間に入った優柔不断な人間(男でも女でも)ですね

赤ちゃんを一目見るだけ、のつもりで忍び込んだ秋山家で
ひとたび 赤ちゃんを胸に抱いてしまえば
その柔らかさに、温かさに、はかなげな存在に
「守らなくては!」という使命感にも似た感情が湧き上がり、突き動かされ
どこまでも 希和子の赤ちゃん連れの逃避行は続く

一度も育児をしたことのない 希和子が
逃げる途中に 育児用品を買い 慣れない手つきでおむつを替えるとき
ばれるのではないか、とこちらまでハラハラドキドキ

いつも 追われながらも すんでのところでヒラリと身をかわし
次なる逃げ場を探してさまよう
はぁ~ 手に汗握る~

子供のためならなんでもできる、という勇気は 母親なら 大概持ち合わせていますよね。

だからこそ 私も 不貞を働いたのに ちゃっかり家庭で夫&父親をしてる秋山に反感を抱き
誘拐という大それた犯罪をおかしたはずの希和子の逃避行に 
温かいまなざしを注がずにはいられなかったのだと思います。


血の繋がった親子以上に、 いや 血が繋がってないからこそ
一生懸命に 親になろうとする希和子が切ないです。
私の元で育って不幸せであっては可哀想、と薫にたっぷりの愛情を注ぐ希和子に涙。

カルト教団の住み込みの施設に逃げこんだが そのカルト教団が警察に目をつけられ
危険を感じた希和子は 逃げ出して 教団で知り合った女性・久美の実家のある小豆島へ。

そこでようやく幸せな日々を手に入れるが やはり長くは続きませんでした。
高松行きのフェリー乗り場で ついに警察に囲まれ 薫と分かれ分かれに・・・

第二章では 薫(既に大学生になっている)、こと恵理菜のその後

彼女は 本当の親から引き離されて 幼少期を過ごしたと言う苦しみと
本当の親の元に戻された、という二重の苦しみを背負っています

元の家族に戻ったことが 良かったとは決して言えなかった
そんなやりきれなさが たまりません。

本当の両親は わが子が戻ってきたけれど どう扱っていいか悩み、とまどい
希和子のように 愛をそそいではくれなかった
家庭内も 恵理菜を見ると 夫の不倫相手を、誘拐事件を思い出し
情緒不安定になる実母と それをどうすることもできない実父がいて暗いし
周囲も好奇の目で見、小中学校では友達もいなかった。


そんな歪んだ家族にしてしまい、恵理菜を事件の当事者にしてしまった元凶が
希和子であり、断罪されるべき犯罪者なのね・・・
私だって 幼稚園児くらいの子が 自分の子供としていきなり我が家に来たら・・・
どうしていいかわからないと思うし まして夫の不倫相手が育てたとなれば
心中穏やかな筈がない!
 
ん~~~すごい設定だわ・・・

誘拐事件のことを自分でも調べた恵理菜は
希和子を犯人として憎みながらも
あの 幸せだった頃をともに過ごした「母」として
希和子を記憶の断片の中に懐かしく思い返し
今また 自分も お腹の中に不倫の子を宿したのも
「母」希和子と同じ運命だ、と受け入れていく

ふ~ 重いテーマでした・・・
でも 畳み掛けるような逃走劇に 読み始めたら最後まで突っ走ってしまった!
お勧めです!