⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

林真理子著「下流の宴」読了♪

林真理子著 下流の宴 読みました  

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流石 林真理子女史、リアリティ溢れる会話や人物描写で
ぐいぐい 読者(私)を引き込み
私の脳内で 登場人物が生き生きと動き ドラマが進みます

ネタバレあり ↓

福原家(父親が医者、国立大出身でプライド高く教育ママの母)と 
宮城家(沖縄の離島に住み バツイチで
スナックのママ 豪放磊落な性格の母)、という
家風(今時古い言い回し?)の違う 2つの家の対比
ま、よくあるパターンです

その息子と娘が結婚することになったことから
両家の 生き方の違いが浮き彫りになっていきます
この二つの家(家族)・仲間を軸にストーリーは展開

ある ひとつの事件を引き金に
意外な方向へと物語りは進み・・・・

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そして読後感は・・・。

へっ? これが最後?という終わり方で 釈然としないのよ
モヤモヤ

確かに、 現代の問題や 話題性のあることを上手に切り取って
鮮やかに描き出してあるので
読んでて 楽しいです!

登場人物の発する言葉にも 現実味があって
あるある!と 納得したり チクッと心に棘が刺さったり 身につまされたり
すっかり ストーリーに引きずりこまれ,、先へ先へと読み進みます

登場人物のキャラクターや 悩みや生き方がはっきりしいて面白い

中流意識とプライドを固持する福原家
母・由美子は学歴や世間体に囚われて 幸せの本質を見失っている
が、本人は気づいていない
やる気がなくて 中高一貫校を中退してアルバイト生活をする息子・翔
同棲中の珠緒と結婚すると言い出し 母を悩ませる
結婚相手に幸せにしてもらおうと玉の輿狙いの長女・可奈
外見を磨くことに執心 常に戦略的に男を落とすことを考えている

その対極として描かれる珠緒のもとに 求職中の弟が転がりこんでくる
その弟は 翔から借りた保険証で飛ばし携帯を作るバイトをしてしまう
珠緒はアルバイトで知り合った オカマの男性と懇意にしており
そのお陰で 医学部受験に便宜を図ってもらえることとなる

福原家の翔の母親に結婚を反対され
翔の結婚相手・宮城珠緒は
「医者がそんなに偉いなら 私も医者になってやる」と啖呵を切って
自分のプライドと福原翔への愛を賭けて 
高卒アルバイト、の身から 医大受験を敢行
見事 合格を勝ち取った! 胸の溜飲が下がる思い
そんな サクセスストーリーが 唯一 救いであり
物語として展開を見せています


珠緒の場合 たまたま知り合いの人の同窓生に 
医大受験用の予備校校長がいたり
学費を立て替えてくれるスポンサーが現れるなど 
都合が良すぎ!ってちょっとひっかかる

珠緒が国立大医学部に合格したときは
やった~!と 感情移入して 感動したけど
冷静に考えたら 2年の努力で国立医学部合格するわけないじゃない?
諦めるな 努力すれば夢は叶う、なーんて
成功したほんの一握りの人だけが言える言葉なんだよ

そんなんで合格したら 誰も苦労しないさ
なんか この珠緒の受験のくだりは
後になってから 鼻白みました
非現実的~! ここは、???連発!


福原家の嫌味な母代表・由美子は
自分が間違っていたと 反省をしたのかと思いきや
結局 最後まで考え方 全く変わらず
むしろ 最後のシーンで 由美子のダメ押しに 暗澹たる気分に・・・

今までの あれやこれやの出来事は一体何だったのか?
全く懲りてなかったと言うことなのね?
素晴らしい大団円を迎えるための布石じゃなかったんだ?
ここまで読んできて 最後がこれかい!

由美子が、おじいちゃんが医者だったからあなたも、と
翔に望んだ医者の道に下流の娘、と蔑んだ珠緒が進み
翔は 努力もチャレンジすることも投げ出して家に戻ってくる
なんとも皮肉な結果
娘の可奈も お金目当てで結婚したため 夫が職を失ったと同時に実家に戻る

目論んだように人生は進まないものなんだよ、という教訓が込められているのか


中流だ 下流だと色分けすることは、私は好きではないし
中流と下流をどのように線引きするのか知らないけど
そういうことに 囚われること自体馬鹿げている、と思う


作者が 由美子のような生き方に警鐘を鳴らし 
プライドと旧式の考え方に固執する母・由美子を
アイロニックな視点で描いているってことで とりあえず(?)
この作品を評価したいと思います

いや、ホントはなんか 読後感がすっきりしない小説なんですが…