⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

奥泉光著 「シューマンの指」 読了♪

奥泉光著 「シューマンの指」を読みました。

2011年本屋大賞5位の作品です。

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カバー装丁のリアルな血痕にドキッ 不穏なものを感じますね


重要なネタバレあります 未読の方はUターンお願いします。



ピアニスト「永嶺修人」のシューマンの演奏を聴いた、
彼の指は切断されたのだけれど 再生手術をうけて
ピアニストとして活躍している・・・。

友人・鹿内堅一郎は留学先のドイツでみた驚きを
「私」に書き送ってきた手紙。

それを受け取ってから、時を経ること30年。

ピアニストを志すも、音大を中退し、
勉強し直して、医師になった私=里橋優は
今、くだんの手紙を 読み直し
実家の押入れから当時綴られたノートを探し出して
鹿内堅一郎と、
若き天才ピアニスト・永嶺修人との
青春の日々を思い出しながら手記を書き始めた・・・。


手記の殆どは
シューマン論ともいえるほどの 
シューマンの作品や 演奏方法、
その技巧についての細かな描写が 鮮やかに描かれています
その修辞の素晴らしさに、読者はたちまち引き込まれ
頭の中で 音を奏でようと想像力を膨らませます。

文中で語られる作品は、実際はどういう曲なのか、
MIDIでダウンロードして聴いてみたくなります。


若き天才ピアニスト永嶺修人と
里橋優、鹿内堅一郎は、同じ高校で
ダヴィッド同盟」なるグループを作って
シューマンを熱く語り合ったのだったが・・・

ある事件により、修人は指を失って ピアニスト生命を絶たれた。

その事件とは何なのか、
「それ」は、後に語ることになるが、
というフレーズが何度と無く出てきて
どのような事件が彼らに起こったのかを知りたくて
先へ先へと読み進んでいきます。

結局 事件が語られるのは 本も中半を過ぎた頃。
そこまでは 延々とシューマン論。
そして
最後のどんでん返しに・・・ 

えーーーっ? 
作者に騙された~~~~っ!!
て びっくりな展開。

いや、ね。 途中、ちょっとそんな気がしないでもなかったけど。


なんと!







この、里橋優が書いた手記は
全て彼の妄想だった~!
事件は実際に起こったことだし
ピアニスト・永嶺まさとは実在するけれど
永嶺修人は、実在の人物ではなく、
里橋優と鹿内堅一郎が作り上げた 架空の人物だったのですっ!!

あれほどまでに、シューマンを語って、語って、
シューマンに傾倒していた 永嶺修人は存在しなかった?

なんということ・・・panda_がっくり




手記を書き終えた里橋優は、永嶺修人のように 自分で指を切断し
失踪したことが

里橋優の妹の手紙で明かされます。

永嶺修人が存在しなかったことも、
事件の真相も、そして その後の事件のことも。

そしてまた、里橋優が、男色だったことまで・・・

なんともいえない後味です mugon.gif




次は、2012年本屋大賞7位の「誰かが足りない」を読む予定です!