山内令南著 「癌だましい」読みました。
2012年6月21日NHK News Watch9で取り上げられていたので
図書館に予約を入れてました。
2011年第112回文學界新人賞を受賞。
がっ!!!
選考委員の方に問いたい。
この作品のどこがよかったのでしょうか?
NHKのアナウンサーに聞きたい、
この作品、紹介するほどのものか?
2012年6月30日放送のNHKスペシャル 「がんを生きる」の
前ふり的、番宣的役割を担っていたのかなと、後になってから思いました。
私の感受性のアンテナが曲がっているのかも知れませんが、
この作品から「文学性」というものが全く感じられないんです。
これは、生生しいまでの闘病記です。
2011年度「文学界」新人賞受賞後の第一作となる
「癌ふるい」脱稿 10日後に著者が亡くなられたという
センセーショナルな作品です。
亡くなられたとき、枕元に
「書くことは使命なり」というメモが残っていたそうです。
少し違和感のようなものを覚えました。
書くことが使命ならば、何故 使命を全うするために
もう少し 命を大切にしなかったのか?
治療を受けるか受けないかは、患者本人の自由ですが、
「治療を受けず 癌と戦った」ことを
ことさら 美談に仕立て上げている気がしてなりません。
何故、癌を切除して、また食べられる生活を
手に入れようとしなかったのか?という疑問を最後まで拭いきれませんでした。
うがち過ぎかも知れませんが、文芸春秋の
一つの話題づくりかな・・・なんて。
食道がんになった主人公・麻美=著者なのでしょうか?
食べては吐き、を繰り返すシーンを読むのはつらいです。
この主人公・麻美という人物が嫌な人間に描かれています。
食べることが大好きで、買ってきたばかりの食材に 必ず声をかける麻美。
それなのに、勤務先の老人ホームでは、
入居者に必要最低限の声かけしかしないし、老人を乱暴に扱っています。
麻美には、
老人たちは食材ほどの価値さえない。なんといっても、食べられないのだから。
はぁ~??
死者に鞭打つようで申し訳ないんですけど、
どういう神経でこの文章書かれたんでしょうか??
人間と食材を同列に並べるとは!!!!
主人公が癌だと宣告された時の反応にも、違和感がありました。
「やった~ 今まで病気になったことがなかった私が病気になった。
しかも癌だって!」
これには、全く共感できない。
やった〜、って…喜んでるの? 負け惜しみ?
食べることが好きだから、著者の気持ちがわかる、という方も
いらっしゃるかも知れませんが
私だって食べることは大好きです。
そもそも、食べることが嫌いな人っているんでしょうか?
美味しく食べたいのは、麻美だけではありません。
彼女の祖母が、お料理上手で
食べ物=愛だと 幼い頃から体験的に学んだようです。
だからこそ 人生に満たされない分、食べ物に依存したのかなという印象。
「食」こそ麻美の人生であり
それ以外に価値のあるものなど何ひとつとして存在しない。
とまで 言い切る。
人生の楽しみが、生理的欲求を満たす「食」しかないなんて。
もはや、麻美(ひょっとして著者も?)は、鶏舎の鶏ではないか。
個人的な他人との交わりもなく、生きがいも無い。
食べ物のことだけを考えて、食べることだけが楽しみ。
彼女は、「お食事」じゃなくエサを食べていたんです。
健康なときは 詰め込むように
食道がんを患ってからは、水で流し込んで・・・。
およそ 「食事」とは言いがたい光景の描写に紙面をさいています。
もう、読むのに辟易 (;´Д`)
末期癌の病床で よくぞこれだけのものを執筆された、とは思うけれど
最後まで もやもやしながら読みました。
一緒に収められている 絶筆となった「癌ふるい」の方が面白かったです。
主人公が100人の友人・知人に
「食道がんステージIV」になったことをメールで知らせました。
その返信文に、知らされた友人たちの
とまどいやそれぞれの思いが垣間見えて興味深いです♪