happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

西加奈子著 「ふくわらい」読了♪

西加奈子著 「ふくわらい」を読みました。


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何の予備知識もなく読み始めたら、
不思議な「西加奈子ワールド」へ…


 ネタばれあります、ご注意ください panda_pekori.gif


主人公・定は(古風な名前だけれど現代の25歳女性)
幼い頃、静かで内向的な子供だった。友達もいなかった。
ある日、親に買ってもらった「ふくわらい」をして遊んだ時から
「ふくわらい」に傾倒し、
いつもいつも 自分で目隠しをして、一人「ふくわらい」に興じていた。
目を閉じると暗黒の世界に自分ひとり…。
その感覚が定には居心地が良かったのです。

そうするうちに、定は、他人の顔を見て、そのパーツを
頭の中で動かして遊ぶのが習い性になっていきます。
リアルふくわらい。

5歳の時に母と死別してからは、
日々旅にして旅をすみかとするような紀行作家の父と2人で
世界中をを旅し、
18~23歳までは、一人で世界中を放浪していた経験を持っています。


父との旅での体験が、ずっとずっと定の細胞の中に息づいていて
事あるごとに、父との思い出が語られます


ちょっとエグイ、特異な出来事をへて形成された定という人間は、
世間離れしたような不思議な女性。
潔癖で、一本筋が通ってはいるけれど、
人との関わりが極端に薄い、野生児のような女性でした。

編集者として、エッセーを書くプロレスラーの守田廃尊を担当し、
盲目の男性・武智次郎と知り合い、
編集部の小暮しずくと関わるうちに
定は、少しずつ血の通った人間らしさを身に付けていきます。


変人で扱いにくく、プロレスの試合で顔面を骨折したまま
放置したため、目や口が異常な位置にある廃尊は、
編集部の皆から 敬遠されていたけれど
定は怖気づかず真摯に向き合い、信頼を得ていきます。

ふくわらいで遊ぶときにする目隠し。
外からの情報を遮断して自分の声に耳を澄ますことができます。
定は、目で見えるものではなく、
心の目で物を見る、だから本質を見ることに長けていたのだと思います。


先日観た タカラヅカスペシャルの花組のパロディにあった
大事なものは目に見えないんだよ」というセリフを思い出しました。
大切なものほど、心の目の力を借りて慎重に見抜くことが大切なんですね 

ものすごく遅咲きの花が、ゆっくりと開花するのを見守るような
「ふくわらい」でした。

定が、乳母に、小暮しずくを「友達」と紹介した時の
ちょっとこそばいような、照れくさいような、でも嬉しい
定の胸の内が描かれていて じーんときました。


・・・と書けば、ひとりの女性の感動的な成長物語ですが、


実は彼女は 父との旅行中に 人肉を食べた経験を持っています。
父がワニに食われて亡くなるところも目撃しているばかりか、
父の肉も食べました。 読んでてちょっと気分悪くなります
 
 
これから読まれる方は、心してお読みください。



定は、文章が好きだった。
文字は文字なのに、無限の組み合わせで、無限の「言葉」になり、
やがて「文章」になる、その仕組みが好きだった。
』        本文より

すごくよくわかります!同感です!


定が言います。
『言葉を組み合わせて、文章ができる瞬間に立ち会いたい、という守口さんの気持ち、
本当に分かります。私はそれが、私以外の誰かが作った、ということに、
とても感銘を受けるんです。
言葉そのものを作ったのは誰かわからないけれど、
その言葉をくみあわせることによって、文章が出来る、
しかも誰かが作るとそれは私の思いもよらないものになります。
その文章が、言葉が、その人そのものに思えてきます。
』   本文より

ものすごく共感できる一文です。
私も、いろんな方の本やブログを読むにつけ、いつも思います。
文章に個性があります、文章は、その人となりです。

同じテーマで書くにしても、
どんな言葉を拾ってきて、どのようにつなげるか、に
その人らしさが表れるのですから。

ブログを書き始めてから、
頭の中に思い描くことを 言葉を組み合わせて伝える事に
すごく面白みを感じているhappyです。