中央公論文芸賞受賞作品
東野圭吾著 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を読みました。
東野圭吾と言えば、ミステリーですけれど、
東野圭吾の新ジャンル?
心がほっこりする、ファンタジーです♪
ネタバレあります ご注意ください [emoji:e-1]
3人の若者たちは、こそ泥を働いて、
朝まで身を隠すために、以前から目をつけていた廃屋へとやってきた。
古い看板には「ナミヤ雑貨店」と書いてあるのが、かろうじて読めた。
その家の鍵は開いていたが、家の中はホコリだらけ。
長い間、人が住んでいた形跡もなく、一夜の宿にと入ったのだった。
その時、パサリ、と店のシャッターの郵便受けに手紙が届いた。
こんな夜更けに?3人に緊張が走った[emoji:e-329]
が、
開いてみれば、その手紙は、悩みの相談だった。
若者たちは面白半分で、思いつくままに返事を書いて
店の横の牛乳箱に返事を入れると…
程なくして 店のシャッターから先ほどの手紙の返事が届いた [emoji:e-350]
ナミヤ雑貨店は、30年前の世界と繋がっているようだ…。
ナミヤ雑貨店に、相談を持ちかけた人たちと、
相談者のその後の人生が、5つの章に分けて描かれています。
若者たちは、最初は面白半分に答えていたのだけれど
その内容を真摯に受け止める相談者に、
自分たちでも人の役に立てるんだ、と自信を取り戻していきます。
誰でも、誰かの役に立てたら幸せですね♪
1979年と2012年。時空を超えて過去と現代がつながるナミヤ雑貨店。
ナミヤ雑貨店の主の三十三回忌、一夜限りの復活、
ナミヤ雑貨店が1日だけ、再開したその日に、
若者たちは、たまたま「ナミヤ雑貨店」に入って
この不思議な現象に立ち会うことになったのです。
若者たちが考えたテキトーな回答と、それを大真面目に解釈する相談者。
それが、うまい具合に辻褄があっています。
東野圭吾、さすが。
登場人物たちは、皆、ナミヤ雑貨店の相談者で
児童養護施設「丸光園」とつながっていきます。
登場人物たちそれぞれの人生物語は、読まされ、泣かされます。
後半は、ジグソーパズルのピースをはめていくように
ピタリと符合していくところが面白く、サクサク読めます。
物語前半で張られた、伏線が後半で次々に絡み合って
堅牢な太い綱に、なわれていくのは、さすが東野圭吾作品!
最後に、30年前とつながっているのかを確かめるべく
若者の一人、敦也が白紙の手紙を、シャッターの郵便口に入れてみると…
達筆な文字で、返事が返ってきた!
差出人は…30年前のナミヤ雑貨店主。
「わざわざ白紙をくださった理由を爺なりに熟考いたしました。
中略
私のところへ悩みの相談を持ち込んでくる方を迷子に喩えますと、
多くの場合、地図は持っているが、見ようとしない、
あるいは自分のいる位置がわからない、という状態です。
でもおそらくあなたは、そのどちらでもないのですね。
あなたの地図はまだ白紙なのです。だから目的地を決めようにも、
道がどこにあるかさえもわからないという状況なのでしょう。
中略
だけど見方を変えてみてください。白紙なのだから、どんな地図だって描けます。
すべてがあなた次第なのです。何もかもが自由で、可能性は無限に広がっています。
これは素晴らしいことです。どうか自分を信じて、その人生を燃やし尽くされることを
こころより祈っております。」
本文より
なんと勇気づけられる内容でしょうか。
何気なくシャッターの郵便口に押し込んだだけの白紙の便箋に、
深い意味を見出して、返事をくれたナミヤ雑貨店主。
その手紙を読んで、
悪の道に入りかけていた若者たちの目に、希望の光りが宿ったところで、完。
目頭が熱くなり、鼻の奥がツーーーーンて痛くなりました。
さすが東野圭吾作品!
読後感爽やかでした。さすが!