happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

恒川光太郎著 「夜市」 読了♪

恒川光太郎著「夜市」を読みました。

       夜市


リンクして頂いている 「くちゃちゃとるるっけつ」のcuchiko様が読まれていたので
興味を持ち、私も読んでみました。

第12回日本ホラー小説大賞受賞作
第134回直木賞候補作品

ホラー小説=恐怖、怪奇小説

おどろおどろしい世界かと思いますが

夜市に収められた二作は、
どちらも 大人のファンタジー的色合いの濃い作品です。

◆夜市

この世の中とは別の世界に存在する「その夜市」は
誰もが行ける場所ではなく、
ある時 ある場所に 入り口が開かれます。
そこに迷い込んだ以上 何かを買わずには出ることができないのです。

昔 その夜市に迷い込んだ少年は、
「野球の才能」を買いました、幼い弟と引き換えに。

必ず迎えに来ると約束して。

夜市から出た少年が知ったのは
もう誰の記憶からも 弟が消されている、ということ。

せっかく手に入れた「野球の才能」も
自分の中ではだんだん虚しい物になっていき
野球も止めてしまいました。

弟に罪悪感を感じて。

ある日 もうすぐ夜市が開かれる、とコウモリに聞いた(←ここがファンタジー)少年は
弟を救いに 夜市に行くのです。

夜市で出会う 怪しげなお店の店主たち(妖怪)がホラーぽい。

百戦錬磨の妖怪の商売人との駆け引きも読まされます。

一体弟はどうなってしまったのか
あれから 15年の間 罪の意識に苛まれていた兄

実は弟は、売られた直後に逃げ出して
別の店で 自分の「若さ」を売り
代わりに「自由」を手に入れ 夜市を抜けだしていたのです。

弟もまた、兄が迎えに来た時 自分がいなかったら
どうなるのだろう、と罪の意識をもって暮らしてきたのでした。

「夜市」という特殊な世界を通って
また元の世界へ戻ろうとする二人でしたが

兄は、取引をするものが無かったので、夜市に飲み込まれたまま
夜市の入り口は閉じてしまったのです

固く握られた手が スルリと抜けて夜市に飲まれてしまうシーンは
哀しみがぐっと胸に押し寄せます。

もう 兄の記憶は遠くおぼろげになって
存在すら忘れ去られ なかったことになってしまう

ただ、最後に兄に握らされた財布には
弟を救うために用意した72万円がはいっていたのでした…

なんとも切ないラスト!
心にずし~んときます。

相手を想い合って生きてきた二人なのに
もう二度と会えなくなってしまった。
そして かつて兄弟がいたという記憶すらなくなってしまうのでした。

ビジュアル的に面白いものになりそうなので
映画化したら…と思ったら
円谷エンターテイメントが映画化を発表したとのこと。
まだ実現してないのですが、面白いものになりそう。


もうひとつ収められている

◆風の古道

こちらもファンタジー

息子曰く、スタンド・バイ・ミーに似ている、と。

ふとしたことから迷い込んだ道は
誰でもがいけるわけではなく、
魑魅魍魎が往来する不思議な道です。

しばし 空想の世界に遊べる2作品でした。