happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【本屋大賞・辻村深月】「朝が来る」読了♪

辻村深月著 朝が来る 読みました
本屋大賞 5位の作品です。

朝が来る


先日特別養子縁組の制度を悪用した詐欺事件の犯人が逮捕されました。
「特別養子縁組」…あまり縁のない言葉でしたが
私の中で急にクローズアップされました。

丁度そんな時に この本を読みました。

自分の読書記録のため ネタバレあります、ご注意ください。


どうしても子供が欲しいのに授からない夫婦と
育てられない命を授かった母親を取り持つ制度。

双方にありがたい制度なのです。

栗原佐都子と夫の清和は 共に40代
幼稚園に通う一人息子の朝斗と幸せに暮らしていたのですが…

ある日 無言の電話がかかり始めます。
事件のかほり・・・

そんな中、幼稚園でのトラブルでマンション内で嫌な思いをする佐都子。
ドラマ「砂の塔」を思い起こさせるような事件も起こります。
ママ友の言葉に傷つき 巻き込まれた子どもたちも遊べなくなってしまうような…

何度目かの電話で 無言電話の主がか細い声で話しかけてきます。
なんと 朝斗の実母からだったのです。

朝斗は特別養子縁組制度で 赤ちゃんの時に 清和と佐都子の元に来ました。
実母とは 連絡を取らないという約束が交わされていたにもかかわらず
何故か、生みの母である「片倉ひかり」から電がかかって来たのです。

朝斗を返して欲しい、それが駄目ならお金が欲しい、と。

脅迫…??

夫婦は生みの親 片倉ひかりに一度だけ会ったことがありました。
当時まで中学生14歳のひかりは
ありがとうございます、この子をよろしくお願いします、と泣きながら必死で訴え
子供が大きくなったら読んで欲しい というお手紙も添えていました。

実母・片倉ひかりが今になってそんなことをするだろうか?
疑問を抱く佐都子は一度会ってみることに。

佐都子の家に現れた「片倉ひかり」と名乗る若い女は
手入れの出来てない髪や 疲れた服装に
とても 6歳の朝斗を引き取って暮らせる余裕はなさそうに思うのだが…

この女は一体誰なのか??

女性が現れた一ヶ月後、警察が女の写真を持って聴き込みにきます。
佐都子は警察に逆質問、「この人は一体だれなんですか??」

一気にミステリー色が強くなり 怒涛のごとく一気読み!
夜更かししてしまいました。



共働きの栗原佐都子と清和夫婦が子供を持つことを考えた時には
妊娠もうまくいかず 遠方まで不妊治療に通うことになるのですが

その肉体的、精神的、経済的苦労は 計り知れません

そして 夫の無精子症が判明。

顕微鏡受精にも挑戦するものの あまりにも負担が大きく
二人で行きていこう、と決意します。

そんなある日テレビで特別養子縁組を仲介する「ベビーバトン」と言う存在を知り、
佐都子も登録します。

そして、ついに初めて
軽くて柔らかくて 髪の毛がほわほわの赤ちゃんを抱いた日、

終わりがない、長く暗い夜の底を歩いているような
光のないトンネルを抜けて。
永遠に開けないと思っていた夜が、今、明けた
この子はうちに朝を運んできた。
」       本文より

本のタイトルはここから、ですね。

栗原家に朝を運んできた朝斗の、生みの母の転落の人生。

もてないタイプを自認してたひかりを可愛い、と言ってくれた同級生の巧。
まさか…でもちょっと誇らしい思いで付き合い始めます。
ひかりが、まだ初潮も迎えていないと知って 避妊もせずに
若さに任せてやりたい放題やっていたら・・・
気がついた時には もう堕胎できないところまで来ていました。

ひかりは お硬い両親(ふたりとも教師)が大嫌い。
自分はこんなに人生を楽しんでる!と親を見下してもいました。
こっそり 親の知らない秘密を持つ愉しさを満喫していたのです。
それが裏目にでてしまいました。

ひっそりと特別養子縁組を仲介する「ベビーバトン」が用意した施設で出産しました。
ひかり、まだ14歳、中学二年生でした。

他の入所者はキャバクラの客の子供を身ごもって
早く産んですっきりして 働きたい、という女性が多く
大好きな彼氏の子供を生むんだ、というひかりは変わり種です
出産までの毎日、生まれてくる赤ちゃんに手紙を書いて過ごしていました。

生まれた子供はすぐに 栗原家に引き取られ 自分は元の中学生活に戻りますが

元カレの巧とは 話をしたけれど以前のような熱い思いもなく 関係は自然消滅。
親との折り合いの悪い実家では衝突ばかり。

バイト代や 親の財布から抜いたお金で
「ベビーバトン」のある広島へ家出。転落の始まりでした。

ベビーバトンでは、少しの間雇ってもらえたものの 
(この間に 栗原家の個人情報を盗み見る)
3ヶ月後には解散が決まっていたので
代表の浅見さんから 住み込みでも働ける新聞配達の仕事を紹介してもらいました。

住み込みの部屋で一緒になった女性がかなりの悪で
勝手にひかりの名前でお金を借りたために
借金の取り立てにチンピラが毎日のようにひかりのところにやってきます。

お世話になった新聞屋さんに多大な迷惑をかけて
逃げ出し 
東京でようやく 住み込みでホテルの掃除にありついたのもつかの間
草の根かき分けても探し出すヤクザは
そのホテルにまでやってきて 50万の借金の返済を迫るのです。

払う必要が無いことも、警察に相談することも知らないひかりは

結局ホテルの金庫の50万を盗んで支払ったものの 犯罪その1
見つかって 
ホテルに返すために今度は 栗原夫妻を脅迫する 犯罪その2

悪のスパイラルから抜け出せず!

激動のひかりの人生は 本当に読まされた、という感じ。
スピーディな展開に、
もうページを繰る手が止まらず!!
一気にラストまで~~~!

栗原家のリビングで 
片倉ひかりは、出産当時の自分が、いかに子供を思っていたかを佐都子から聞かされて
今の自分は堕落してしまったけれど
この家には 中学生で純粋だった 本当の片倉ひかりが生きている、と感じたのでした。

あの子を生み 迷い 葛藤しながら 朝斗を二人に託した
あれが 私 片倉ひかりだ。
自分が泣きながら この子をよろしくお願いしますと叫んだ、
その願いどおり 佐都子は6年間立派に育ててくれた…

私は片倉ひかりではありません、ごめんなさい、と謝って飛び出してしまいます

歩道橋の上で 自分の来し方を思い出し
自分はもう、どこにも必要とされていない 行き場がない
もう、人生を終わりにしようかな…と思った時
背後からドンと衝撃が…

佐都子が追いかけてきて 抱きしめたのでした。

あなたが本当の朝斗のお母さんだって気付かなくてごめんなさい。
二人は抱き合って泣いています。

そんな二人の母を朝斗はじっと見つめていたのでした

最後の描写は美しく切なく泣けます。
読後感爽やかです、が…


Amazonの評価は星ひとつが多いです。

実際 不妊治療されて 特別養子縁組をされた方
しようと考えてる方は 「違う」と思う部分が大きいようです。

また、この作品によって 違った認識が世間に広がることを危惧されてもいます。

また、私は観てないのですが ドキュメンタリー番組が放送されたそうで
その内容に酷似している、との指摘も…。

血は水よりも濃い、ということわざがDNA的に親子であるけれど

たとえ血の繋がった家族であっても 互いが
「家族であろう」としなければ 家族とは名ばかりで

血がつながっていなくても 互いが家族と認め合って
心から信頼しあえるならそれは家族なんだと思います。

「家族という病」を書かれた 下重暁子さんに教えてあげようか? 


この作品もドラマ化されてたのですね。
面白そうな作品って、大概ドラマ化されてるわ