なにかを検索していたときに、Amazonの関連書籍に出ていた内館牧子さんの『終わった人』を読みました。
Amazon ★4.1 ★5=50%
舘ひろし主演で映画にもなった作品です。
主人公・田代壮介は、東大法学部を卒業後、意気揚々メガバンクに入社し、出世争いをしたものの破れ、子会社の役員になって63歳で会社員人生の幕をおろしました。
壮介はジムや趣味の講座に通うのはジジババのすること、と考えていましたが、体力が落ちると若々しさがなくなる、と聞いてジムに通い始めます。
せっかくのジム仲間からランチのお誘いもあんなジジババと一緒に食えるか、と時間を持て余しているクセに断っていました。
ジジババのアイドル的存在、若くてかっこいい鈴木に誘われて行ってみると…楽しいw
壮介は、変なプライドが邪魔をして、すごく損をしているんです。
素直になりなよ、と思いながら読んでいました^^
当初、昼間からジムに来て、コイツ、ホストか?と下に見ていた鈴木、実はIT企業の社長で…彼との出会いで壮介の人生に大きな展開を見せることになります。
「成仏」することが大事
妻の千草は、
「年齢や能力の衰えを泰然と受け入れることこそ、人間の品格よ」(190ページ)
ジジババの域に達しているのにそう見られることを嫌がって必死に抗う夫にグサリ、と一言。
高校時代の友人・二宮は、
「孫の成長と幸せばかりを願うやつらには近寄らないようにしてるんだ。」(198ページ)
ジジババの生き方って伝染るから、だそう…
年齢と共に、それまで当たり前に持っていたものが失われて行く。世の常だ。
親、伴侶、友人、知人、仕事、体力、運動能力、記憶力、性欲、出世欲…(218ページ)
いつまでも、昔と同じであろうはずもないです。
諸行無常。
主人公・壮介は、自分の人生まだ「終わって」などいない、エリートの俺はもっとできたはずだ、と仕事に執着していたのが辛さの原因か。
彼の矜持を満たす職歴であったなら、もしくは、なにかをやりきった、と手応えを感じるものがあったなら、楽しい老後人生になったのでは?
なにかに後ろ髪をひかれてウジウジするのが一番見苦しい、と教えてくれた壮介さん。
この後のチャレンジが大変な結果を招くのですが…ネタバレしません。^^
胸熱なふるさとの友との再会
壮介の出身校の野球部が県大会で決勝に残ったので見に行こう、と二宮に誘われてふるさと岩手に帰ります。
そこに集まっていたのは、17歳の顔をした「終わった人」たち。
ミニ同窓会が開かれ、それぞれの来し方を聞くとみんな「いろいろあり」、ふるさと岩手の復興に尽くす工藤にNPOの仕事を手伝って、と頼まれて…
同窓会に来たいが来れない、壮介に会いたがっていたという川上の家を覗きにいった壮介。
壮介は東大、川上は京大へ進学したが 事故で妻と息子を亡くし、心を病んで。
父に認知の症状が出たので介護のために帰ってきた、と父にご飯を食べさせながら言います。
川上と壮介の会話がほのぼのとしていて、盛岡弁も利いてます、じわ〜っと温かいものがこみ上げます。
ようやく、皆の前で、自分の惨めな状況を吐露することを決意しました。
東大京大を出ても、思うようにならない人生、高校時代どこにいるのかわからなかった存在感の薄い男が、今やふるさと岩手でバリバリやっている。
壮介はふるさとで素の自分をさらけ出せる同窓生と語り合って、頑なな心が解けていったようです^^
長いこと生きてれば、良いときも、大変なときもあるけれどそれらすべてひっくるめて人生なんですね。
ふるさと岩手の石川啄木の句が、随所に盛り込まれていて、素敵な趣向だと思いました。
さすがシナリオライターの内館牧子さん
たくさんのドラマのシナリオを書いておられます。
そのせいか、言葉が生きてます。
脳内ドラマを再生するのがすごく楽しいです。
日常の「あるある」がユーモアたっぷりに描かれて…映画になるはずです!
面白かった〜!!
『終わった人』は、『今度生まれたら』『すぐ死ぬんだから』『老害の人』と高齢者小説4部作。
『すぐ死ぬんだから』はNHKでドラマ化されたされているようです。
面白そうなので、機会があれば読んでみたいと思います。