映画『あなたへ』のノベライズ本です
『あなたへ』は、降旗康男監督、高倉健主演で2012年8月25日に公開された日本映画。
2012年2月に初版のこの作品は、森沢明夫さんの作品をAmazonで探していた時におすすめに出ていた作品です。
Amazon★4.4 ★5=60%
富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。
BOOK データベースより
主人公・倉島英二と弱っていく妻の姿が描かれて始まりますが、程なくして妻はなくなります。
そんな英二のもとに、遺言サポートの会の女性が訪れます。
亡き妻は、英二に遺言を遺していたんですが、妻は生前、英二に知らせずにサポートの会に遺言の一切を任せていました。
妻のふるさと、長崎の薄香(うすか)の郵便局留めでもう一通の遺言を送るので、期日までに取りに行って欲しい、とのことでした。
弱っていく妻と出かけられるようにワンボックスカーをカスタマイズしていた英二は、車で寝起きしながら富山から長崎へと向かいました。
前半は、出会った人たちの物語が描かれています
旅の道すがら出会った人たちとの交流も温かいです。
元国語教師ながら、女子生徒に嵌められて教師を辞め 今や身を落として車上荒らしで食いつなぐ杉野輝夫との出会い。
ちょっとヒヤヒヤしながら読みました。
全国にいかめしを売り歩く田宮(久しぶりに家に戻った時に、妻の不倫現場を観てしまう…)との出会い、
薄香に行くなら、と船を出してくれそうな人の連絡先をくれた薄香出身の南原との出会い…。
彼らと英二の長崎行がうまく絡んで物語が綴られていきます。
亡き妻のふるさと、長崎の薄香に英二が着いてからが読ませどころ
薄香漁港の漁師、娘や孫娘と若い漁師、南原との関係など温かいものがじわじわと寄せてきて…
最後に薄香の郵便局で受け取った妻の書いた最後の手紙。。
ここは泣かせどころ。
1人で夫を遺して先立つ妻の夫への思い。
人生に賞味期限はないから、英二なりに自由に生きて欲しいと願う 淡々としていて深い愛。
「あなたへ」。
本、映画のタイトルにもなっている、洋子の英二への思いが込められた4文字。
静かに、熱い。
「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」(P175)という素敵な言葉にも出会いました。
元国語教師の杉野が英二にくれたのはボロボロの種田山頭火の句集。
時折、ポツリ、と句を諳んじる杉野も、いい味を出していました。
それぞれの登場人物のキャラが立っていて、それぞれの人生がうまくつながっていく最終章はお見事。
キャンピングカーに吊るした、洋子が好きだった風鈴が時々 凛。と鳴ります。
森沢明夫さんの作品『エミリのちいさい包丁』でも、風鈴職人のおじいさんが作った風鈴が軒先で凛。と鳴っていました。
森沢明夫さんの作品は、心温まる素敵な作品ばかり^^
これからも未読の作品を読んでいきたいと思いました。