2023年14冊目、青山美智子著『猫のお告げは樹の下で』読了
友人オススメの作品です。
青山美智子さんの作品は、迷ったり、悩んだりする人が前に進める言葉が出てきます。
書き留めておきたいようなキラリと光るフレーズ。
今回は…タラヨウの木の葉にヒントとなる言葉が刻まれていて…^^
青山美智子さんの
『鎌倉うずまき相談所』や、『お探しものは図書室まで』と同系列のストーリーです。
『鎌倉うずまき相談所』では、悩める人にしか見えない、時間の止まった古い時計店への階段。
双子のおじいさんと水瓶の底を覗き込むと…帰りにヒントが渡されます。
『お探しものは図書室まで』では、司書の小町さゆりさんが、提案してくれる図書の一番下に書いてある、一見関係なさそうな本にヒントが隠されています。
今回は…猫とタラヨウの葉。
本当に困った時に、困った人にしか通れない道、会えないもの…というのは
映画『となりのトトロ』で、さつきがトトロに「メイを探して」とお願いに行く茂みに似てます^^
Amazon ★4.5 ★5=67%
⚠️ネタバレあります、ご注意ください
7話とエピローグ
ニシムキ
21歳のミハルは美容師。
店長に淡い恋心を抱いていたものの店長は、結婚を機に別の支店へと移って行きました。
早く店長のことを忘れたい…学生時代は走ることで嫌なことは忘れられたのに、今はうまくいかない…
たまたま通りがかった神社でお祈りしていると、猫と目が合う。
猫はタラヨウの木の周りを高速で廻り、ピタと止まると左足を樹にかけると、1枚の葉っぱが落ちてきました。
通りかかった宮司さんがあなたは運がいい、と言います。
不思議な猫は「ミクジ」と呼ばれていて、会いたくても会えないのだとか。
猫が落としたお告げの葉っぱには「ニシムキ」の文字。
ニシムキの部屋に引っ越した、と叔母からのハガキが届きました。
子供の頃から自分とは違う叔母の行動で、彼女のことを勝手に悪く思っていたことを反省するミハル。
人の行動にはそれぞれ、その人なりの理由があるのだ、と。
ニシムキの部屋は、夏は熱いばかりだと思っていたけれど、美しい日没の風景が見えます。
刻一刻と色を変えていく夕焼け空を見て、ミハルは無理に忘れようとしなくても、自分の心もゆっくりと変化していくのを待とうと決めました。
チケット
中学生の娘・さつきに疎んじられている父・耕介。
通りがかった神社で「さつきと、うまいことやれますように。」と神頼み。
そこへ、あの猫。
ハラリ、と落ちてきた葉っぱにかかれていた文字は「チケット」。
アイドルグループのCDについていたシリアルナンバーでコンサートチケットが当たる!かもしれない^^ ということで、
一家に一台しかないお父さんのスマホ(妻はガラケー、娘は携帯もっていない)で応募すると…
ペアチケット当選〜! 転売禁止で応募者本人他1名しか入場できないと当選メールに書かれていました。
「俺がさつきとふたりで行く。」宣言。
さつきの好きなグループ「キュービック」のたっちんが、こちらを見てくれた、と興奮気味のさつき。
トロッコで場内を回る時に、会場では珍しい「オジサン」と一緒だったからこちらを見てくれたんだ!と。
たっちんは19歳。
こんな若いのに、堂々と大勢のファンを楽しませて…すごいな、と父は父なりに、「キュービック」の「たっちん」を認め、いつしか応援していました。
娘と同じ気持ちに慣れたことがじんわりと嬉しい父でした。
ポイント
CDショップでアルバイトしている田島慎は大学3年で就活中。
もう何十社も受けて、何がしたいのかわからなくなっています。
バイト先の先輩の竜三さんは、趣味のギターが高じてバンドを組んでいて、メジャーデビューを目前。
慎はというとのんびりしているおじいさんを見ては、やることやりきって余生をのんびり楽しんでいるのを羨んでいる青年w
竜三さんのアパートの近くの神社で
「どこでもいいから早く就職が決まりますように」と祈っていると、猫。
パサッと落ちてきた葉には「ポイント」と書かれていました。
親戚のオジサンが社長を務める不動産会社にコネで入れてもらえる事になり面接にいくと…
社長は、会社設立の動機を話してくれました。
社長が大切な想いで経営してきた会社に、いい加減な僕が入ってはいけない、と入社辞退。
自分は一体何をしたいのか?
竜三さんの素敵な言葉
「なくすなよ、そのくやしいって気持ち。大事に持ってろ。くやし涙がでてるときって、でっかくなってる最中なんだからな」(本文 P124)
タネマキ
元プラモデル屋を営んでいた木下哲。
妻とは離婚し、息子は単身赴任で大阪勤務。
嫁と孫が、息子の単身赴任とともに転がり込んで来て、完全にイニシアチブは嫁がとっています。
指図されて面白くないと思っていたものの…
まさか余生にこんなことが待っていたなんて!な素敵な展開。
良い種子を撒いておくと、いつかきれいな花が咲き、美味しい実を収穫できますね。
因果応報、世の中なんでもブーメラン。
知らない間に撒いた種が、いつのまにか育って戻ってくることもある、そんなお話。
マンナカ
転校生の深見和也は、苔を見るのが大好きで、ジャムの瓶に入れてうっとり眺めるような小学4年生、渋い…
クラスでイニシアチブを取るのは身体が大きく『ドラえもん』に出てくるジャイアンのような岡崎くん。
担任は、岡崎くんに和也の世話を頼んだ、と言います。岡崎が苦手なのに…
くもんの体験教室の帰りに見つけた神社で
「学校に行くのがつらくなくなりますように」と祈っていると、猫。
頭上から落ちてきたタラヨウの葉には「マンナカ」と書かれていました。
和也は自分を苔になぞらえて、真ん中は苦手だ、というと
苔が、道の縁や花壇の隅にあると思っているのは人間だけで、苔は自分が地球の中心だって思って生きているかも、と養護の姫野先生がいいます。
そうか! 自分のいるところが真ん中なんだ、自分が本当に思うことが真ん中。
ストン、と腑に落ちて、保健室という逃げ場も見つけた和也はもう岡崎が怖くなくなりました。
名字の深見をカビとかけてフカビとつけられたあだ名で呼ばれてももう答えない。
いつも目を合わさずにいたけれど、まっすぐ目を見て低い声で言う「何?」
もっと大きい奴だと思っていた岡崎の身体は、よく見ると思っていたほど大きくなかったのでした。
誰でも、自分の人生の主役は自分、ということですね!
スペース
千咲は幼稚園に通う悠のママ。
漫画家になりたいという夢を持ちながらも挫折して、幼稚園だよりに載せるイラストで絵が巧いと褒められるだけで、満たされない思いでいます。
いつまでも、漫画を描く道具を持っているからダメなのだ、とママ友に教えてもらった神社で焚き上げてもらおうと持っていきます。
焚き上げは断られましたが、不思議な猫のお告げが書かれた葉っぱをもらってきました。
「スペース」
幼稚園の広報班に主夫の輝也パパ、奥様は広告代理店勤務のバリバリキャリアウーマン。
千咲がイラストの仕事を探している時に、たまたま輝也パパのインスタを見つけました。
フォロワー数 3万人!
「どうやったらあんな絵を思いつくんですか」と聞いてみると
「神様の入るスペースをつくるです」えっ!!
例の神社の宮司さんからは、「〜のはずだ」「〜に決まっている」と思い込むブロックを捨てましょうと言われます。
自分を生きづらくしていたのは自分だったんですね〜
ふっと漫画のネタが思いついた時、千咲は、両手を広げて神様をお迎えしたのでした^^
タマタマ
月は三日月になったり満月になったり、形を変えるけれど、それは人からの見え方がかわるだけで、月は何も変わっていない。
それは人が人を見るときに似ていると思う。
人もやっぱり、どんな姿もそれは一部にすぎないし、
また矛盾しているようだけど、どんな姿のその人もほんとうのその人だ。
本文P284 より抜粋
占い師の彗星ジュリアこと 笑子 45歳。
郷里・岐阜の高校の同級生のともやんこと、友谷茂と東京で再会。
ふたりの関係性がすごくいい♪
ある日、とある神社の境内で、高校時代に地域にいた猫がいた…正確にはその猫にそっくりの猫がいて…思い出していると、
はらり、と木の葉が落ちてきた。
「タマタマ」と書かれたその葉っぱを見つめて、意味を考えていました…
宮司さんが言うには 魂には荒魂(あらたま)と和魂(にぎたま)の2つがあるのだ、と。
荒魂は、勇猛果敢で強いエネルギー
和魂は、平和や謙遜、献身
どちらも必要で、いつどう使うかで人生も変わってくるのだろう、と。
ともやんが「もう、俺にしとけば?」とプロポーズ、温かい気持ちがじわ〜っと。
人生の半ばで出会った、高校の同級生。
お互いにいろいろあったけど…なんだかいい感じ^^
ここだけの話
宮司さんが語る、7人の登場人物の後日譚。
心温まるファンタジーの中に、生きていく事に勇気づけられる言葉が散りばめられている一冊。
おすすめです♪