じわ〜っと温かい気持ちになる青山美智子さんの作品。
久しぶりに出会いました、本屋大賞7位の『リカバリー・カバヒコ』
タイトルを初めて見た時、カバヒコ? 何?ってなったのですが…
日の出公園に置いてあるカバのアニマルライド、人呼んで「リカバリー カバヒコ』
カバだけに、と言うオチ付き😆
この、カバヒコ、自分の悩みのある箇所と同じところを撫でると解決してくれる、と言う都市伝説があります。
が、都市伝説を流したのはクリーニング屋のおばさん(笑)
最終章で、クリーニング屋さんとそれまでの登場人物、日の出公園の近くの新築マンションの住人が繋がっているのがわかってじわ〜😢
Amazon★ 4.4. ★5=64% 2023年9月21日発売
あらすじは…
新築分譲マンション、アドヴァンス・ヒル。近くの日の出公園にある古びたカバの遊具・カバヒコには、自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説がある。人呼んで、”リカバリー・カバヒコ”。
アドヴァンス・ヒルに住まう人々は、それぞれの悩みをカバヒコに打ち明ける。急な成績不振に悩む高校生、ママ友たちに馴染めない元アパレル店員、駅伝が嫌でケガをしたと嘘をついた小学生、ストレスからの不調で休職中の女性、母との関係がこじれたままの雑誌編集長……引用元:光文社HP
マンション、アドヴァンス・ヒルの住人5人の物語です。
第一話 奏斗の頭
第二話 紗羽の口
第三話 ちはるの耳
第四話 勇哉の足
第五話 和彦の目
それぞれ、カバヒコの頭や、口、耳…を撫でて回復していきます。
奏斗の頭
公立中学時代は優等生だった奏斗の一家は、奏斗が進学校への入学を期にアドヴァンス・ヒルへ引っ越します。
公立中学を馬鹿にしていた奏斗は、中学の卒業式にも何の感慨もなく、旧友とに別れもあっさりと、新しい生活に胸を膨らませていました。
優秀な生徒が集まる進学校では奏斗の成績は振るわず、初めての劣等感に苛まれます。
親から褒められるために頑張って来た奏斗は、クラスメートの雫田美冬の「自分が頑張りたかったから頑張った」、という言葉に殴られたような気分になりました。
日の出公園のカバヒコの頭をなでて、卑屈で傲慢なこのガチガチの頭を治して…とお願いするのでした。
自分より大変な境遇でも、文句も言わず卑屈にもならず自分のために頑張るクラスメートに尊敬の念を抱いて、奏斗もまた真摯に勉強と向き合おうと決意したのでした。それ
紗羽の口
娘のママ友たちとの息詰まる関係。
幼稚園バスを見送った後のお茶飲み会では、自分の思ったことも言えず、発言力のあるママ友に迎合してストレスをためていた紗羽。
そのうちに、仲間から省かれるようになってしまい…
淡々と「ひとり」で、馴れ合わない絹川さんを尊敬し羨ましくも思う紗羽。
カバヒコの口をなでて、また自由にしゃべれる自分に戻して、ママ友たちとの関係を修復させて、と願うのでした。
ちはるの耳
耳管開放症、という病名を医師から聞くことになったちはる。
原因は、ストレスだといいます。
ウェディングプランナーの仕事はやりがいがあったのに、休職することになってしまいました。
同じ部署に同業他社から転職してきた女性、澄江がちはるの心を乱していました。
ハキハキものを言い、スピーディに物事を勧めていく澄江は、ちはるとは正反対。
ゆっくりじっくり顧客と対話して物事を進めたいちはるのノルマは澄江に押されがちでした。
同期の島谷洋治はちはるを気遣ってくれるけれど、澄江と付き合っていて、それも面白くないちはる。
本当はわかっていました、洋治と澄江が惹かれ合っていることを
自分はいつか同期の洋治と付き合うのだろうと思っていたから真実を受け入れるのが怖かったのです…
彼らは悪くない、自分の思い通りにイカなくてイライラして自滅しただけ。
確かめることもなく逃げてしまった。
苦しい現実を聞きたくなくて、洋治からの誘いも心配するメールも受け付けようとしなかった自分に気づきます。
「不安」という想像力に押しつぶされて塞がってしまった耳
人の幸せを願う私に戻して…カバヒコ…
無理難題にも「無理」と言わずお客様の心に寄り添いとゆっくり向かってきたからこそ喜ばれた、お客様からのお礼の手紙が届きました。
自分のやり方でもよかったのだ、と自分を肯定して、
洋治や澄江の結婚も祝福して、素直になれてようやく自分を取り戻した話♪
ゆうやの足
新築マンション、アドヴァンス・ヒルに越してきた転校生の勇哉。
運動が苦手でリレーの選手から外れるため、「右足を痛い」ことにして
わざと足を引きずって、走れませんアピール。
そうするうちに本当に痛くなって、鵞足炎と診断されてしまいます。
片方の足をかばって歩くと偏った方向に負担がかかるのです。
整体師は、足から意識を飛ばす練習を、と勧めてくれました。
不安な気持ちには立ち向かうより「そらす」ってことも大事だよ、と。
「走るのが嫌だと思うことなんて 全然ダメじゃない、いやなもんはイヤだろ」
すぐるくんは足が遅いけれど嫌がりも恥ずかしがりもせず「番が回って来たからまずはやってみる」、それだけ、と言います。
楽しいか辛いかは、やってみないとわからないから、ととても自然体です。
勇哉が本当に嫌だったのは走ることではなく、みんなにカッコ悪いところを見られるのがイヤだったんだ、と気付きます。
誰もやりたがらなかったランナーを引き受けて 得意じゃなくてもやるからには全力で取り組むすぐるくん、えらい!
人間の体は 回復した後、前と全く同じ状態に戻るというわけじゃない、と整体師は言います。
病気や怪我をしたっていうその経験と記憶が、体にも心にも頭にも付くから、
回復したあと、前とは違う自分になっている、と。
ほほぅ〜〜〜
何が好きで、何が苦手で、何が楽しくて、何が辛いのか、試しながら覚えていくんだ。
誰かの目を気にしてカッコ悪い自分を見せないように 笑われないようにって縮こまっていたらきっとそれがどんなことなのかわからなくなってしまうだろう、勇哉は気づきます。
相手主体じゃなく、自分主体で考えないとね!
好みも考え方も、みんな一人ひとり違うから、自分がいい、と思ったら、それでいいのだ!!
和彦の目
老眼の編集長は、日の出公園のそばのサンライズクリーニング店で育ちました。
だから日の出公園のカバヒコも子供の頃から知っています。
母ひとり子ひとりで育ち、就職とともに家を出て、妻の兄が義両親と同居を期に、
和彦も実家の近くのアドヴァンスヒルに引っ越して来たのでした。
幼き頃、母は
「この子は和彦のためにやってきたカバヒコって言うんだ。
お前の一番の味方だよ。
すごい力を持ってるんだよ、自分が痛いのと同じところを触ると、治っちゃうんだから!
人呼んでリカバリー・カバヒコ!」
カバだけに。
出典:『リカバリー・カバヒコ』 P194
老眼の編集長は、カバヒコの目を撫でる。
最終章で、クリーニング店とカバヒコ、クリーニング店の常連客が見事につながっていきます。
公園でカバヒコといた勇哉は和彦に
悩みに効果てきめんのカバヒコの秘密を教えてくれて、「カバだけに」のオチで和彦の母=サンライズクリーニングのおばさんの伝説が流布されていると知るのでした^^
お母さんは言います、与えるだけじゃない、受け取ることも愛情なのだ、と。
好意や愛情をきちんと受け取る、それも愛。
どう見えるかって結局、目というより脳の判断らしいですよ(出典:『リカバリー・カバヒコ』 P229)
部下に言われる老眼の編集長でした。
お悩みを解決シリーズが青山美智子さんの真骨頂!
青山美智子さんの著作は(引用元:青山美智子 Wikipedia)
- 『木曜日にはココアを』宝島社、2017年
- 『猫のお告げは樹の下で』宝島社、2018年
- 『鎌倉うずまき案内所』宝島社、2019年
- 『ただいま神様当番』宝島社、2020年
- 『お探し物は図書室まで』ポプラ社、2020年
- 『月曜日の抹茶カフェ』宝島社、2021年
- 『赤と青とエスキース』PHP研究所、2021年
- 『いつもの木曜日』宝島社、2022年
- 『月の立つ林で』ポプラ社、2022年
- 『リカバリー・カバヒコ』光文社、2023年
10作中この『リカバリー・カバヒコ』で7作読みました。
初めて読んだのが2021年に本屋大賞2位になった『お探し物は図書室まで』です。
面白くて楽しくて、図書室司書のこまちさんに会いた〜いって、小説の世界に入り込みたい程でした^^
猫のお告げや鎌倉うずまき案内所もファンタジー色が強いですが、ひとりひとりの悩みを解決していくスタイル。
このリカバリー・カバヒコもまさにお悩み解決シリーズ、青山美智子さんの真骨頂!
筆が乗っている感じ!
今回も楽しく読みました。
おすすめです♪
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