彩瀬まるさんは、初めて読む作家さんです。
彩瀬まるさんの著書「新しい星」が第166回直木賞候補に選ばれました。
惜しくも受賞は逃されましたが、一度読んでみようと思っています。
その前に、どんな作品を書かれるのか興味があり、「骨を彩る」を読んでみました。
5編が収められた連作短編集です
ネタバレあります、ご注意ください。
指のたより
不動産会社に務める津村成久は娘の小春と二人暮らし。
津村の妻であり、小春の母・朝子は29歳の若さで小春を置いて亡くなってしまいました。
夢に出てくる妻の指が、夢を見る度に減っていく…なんの暗喩か全くわからずorz
妻は、病気の自分を顧みずに仕事にかまけている夫への愚痴か、手帳に「誰もわかってくれない」と書き残していました。
その一言に囚われ続ける成久でした…
古生代のバームロール
津村がよく買いに行く弁当屋の光恵の話。
学生時代の恩師のお葬式でかつての友人、玲子、美鈴に再会し、かつての決して楽しくない人間関係が蘇ります。
卒のない玲子に引け目を感じていた光恵。
お葬式に来なかった真紀子に連絡して、同窓会に誘うと…玲子のことが嫌いだから行かない、と断られ…
光恵も、真紀子のようにはっきりと言えたらよかったのに…
ばらばら
玲子は、小学生の息子が学校でいじめられているのでは?と心配しています。
そんな時、夫から少しゆっくりしておいで、と送り出され故郷・仙台へ。
電車の中で出会った閉所恐怖症の少女・サクラコは、雪が降り積もると息苦しくなると言い、玲子は電車の中で彼女の手を握って語りかけて助けます。
松島でお寺巡りをしている時、偶然再会し、サクラコの言動に救われます。
ハライソ
浩太郎は、津村成久の部下。
ソーシャルゲームでペアを組んでいる、ネット上のみの付き合いのヨシノに心を許してはいるものの、リアルでは、童貞であることを引け目に思っています。
リアルでは、恋人気取りの聡美との付き合いも押されっぱなし。
そんな時、担当物件に住む女性の部屋に新興宗教の人が訪ねてくる…と相談を受けているうちに、年上の彼女の方が、自分の弱さをさらけ出せて…
「ハライソ」はポルトガル語で楽園、という意味のソーシャルゲームの名前です^^
やわらかい骨
最終章の「やわらかい骨」が一番グッときました。
津村成久の一人娘・小春の物語。
赤ちゃんの時に母と死別して母がいないということは、当たり前のことだったのに、周囲の人から哀れそうに扱われることや、過剰に気遣われることが嫌だった小春。
男子が、母に対する愚痴を言った時、「大事にされるって、なくさないとわからないんだ」と何気なく言って 相手が猛省して謝ってきます。
当たり前だと思っていたことが、なくしてみて、初めてどれほど大切だったかがわかるんですね~、同感♪
ある日、クラスに葵という親が宗教団体で働いているという女の子が転向してきて。
クラスで力を持っている理緒が、葵を一旦グループに入れておいて、あからさまにのけものにされているのを見て寄り添ってあげた小春でしたが…
葵はどこか吹っ切れていて、小春と必要以上に心を合わせてこないのでした。
「当たり前が違う子」と一緒にいると苦しい、どっちが悪いとかではない。
そんな言葉が、心に残りました、真理だな、と。
彩瀬まるさんの作品は…
まだこれが初めてなので、彩瀬まるさんの作風とかは何冊か読まないとわかりませんが、原田マハさんの作品のように、脳内でドラマが動く作品ではありません。
が、登場人物の心の動きを表す比喩がお上手だな、と思いました。
表紙の銀杏の葉は、「やわらかい骨」に出てくる森林公園の降り注ぐ銀杏の葉、です。