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【本屋大賞】深緑野分著「ベルリンは晴れているか」読了

大戦後の動乱のベルリンが見てきたかのように描かれています

本屋大賞2019 第3位 「ベルリンは晴れているか」読了しました。

 

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表紙を開けた所に ドイツ(ベルリン)の地図、そして 登場人物がずらりと並んでいて、それらを見ただけで、この作品を読むには 気合が必要だと悟りました。

一人の少女の、たった2日間の出来事を描いているだけなのに 469ページ、ずしりと重たい本です。

読むのにパワーが要りました

音楽家殺しの犯人探しというミステリー要素と 泥棒の男とのロートストーリー、激動の戦中戦後のベルリンの様子、歴史読み物の側面もあり 読み応えがありました。

巻末の、主要参考文献は ノンフィクションだけでなく、地図、映像、ウェブサイト、小説と多岐に渡っていて膨大です。

著者はこれらの 文献を読み解き、この作品をよりリアルに息づかせるために詳細に細部まで描きこんでいます。

それだけに 戦争の悲惨な光景、想像をするのが辛いような文章もたくさんありました。

現在の日常では考えられないような 些細な事で殺されたり 想像を絶するような軍の行いなどは 先へ読みすすめるのにパワーが必要でした。

リアルな描写

あまりにもリアルな描写ゆえに 脳内再生が映画を見ているような錯覚に陥りました。

日本人の暮らしでは考えられないような ドイツ人の暮らしや細々とした 街の様子の描写はすばらしく 戦争による破壊で瓦礫の積み上がった道路や 壁だけ残った建物など 描かれなければスルーしてしまうような情景も丁寧に描かれていてました。

ヒ素中毒の子供の描写はリアルすぎて恐ろしかったです。

ジェットコースターストーリー

冒頭、アメリカ軍の食堂で働くアウグステが帰宅したとたんに、ソ連の軍人に捉えられ 車に乗せられて…そこから ラストまでぐいぐい引き込んでいきます。

常にピンチ。一難去ってまた一難、そうやって ラストまで駆け抜けます。

これがたった2日間の出来事だなんて。(途中 過去が語られる箇所はあります)

すごく分厚いから 読了にもっと時間がかかると思ったのですが お話がどんどん展開していくので 読み進まずにはいられなくなりました。

一番の圧巻は当時の複雑な政治事情やドイツ人の暮らしもしっかり描いていること

ドイツの歴史は ドイツがロシアと戦ったこともポツダム宣言のことも 昔学校で習ったな。と言うおぼろげな記憶しかなく ヒトラーの悪政や ドイツ国民のナチス化 社会主義者の弾圧など 市井の人々の暮らしぶりを読むのも興味深かったです。

こんな罪もない人々を巻き込んで不幸にして街を破壊する戦争は絶対にあってはならない、と言う思いを強く願わずにはいられない本でした。

きっと いつまでも 悲惨なシーンを思い出してしまいそうです。

読み応えたっぷりの一冊でした。

 

私には 感動がなくて ちょっと重い作品でした。