happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【辻村深月】「傲慢と善良」読了

婚活の中で感じる 傲慢と善良

先日 469ページのかなりボリュームのある「ベルリンは晴れているか」を読んだばかりですが、「傲慢と善良」も本が自立する分厚さ 414ページ。

ベルリン~は、当時のドイツの政治や外交問題も描かれ、街の描写も細かく、ドイツの地名が頻出で読み進むのに時間がかかりましたが

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 傲慢と善良は 若者が婚活の中で 自分自身と対峙し、自分の傲慢さに気づいていくお話。

恋人が失踪してしまう、という冒頭の部分から一気に引き込まれ あっという間に読み終えることができました。

ミステリーで始まるが 婚活の苦しさが描かれています

架(かける)の婚約者・真実(まみ)の謎の失踪と 真実の過去に向き合いながら 自分自身とも向き合うことになる架と真実の物語。

二部構成で一部は架目線で描かれ 二部は真実目線で描かれています。

婚約者が忽然と姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになるーー。

 

進学、就職、恋愛、友情、結婚、家族…。

あらゆる選択を決断してきたのは、本当に

私自身」なのだろうか。

 本の帯より

 

 

冒頭の 何気なく交わしたLINEのやり取りを最後に 婚約者が失踪、スマホも電源が切れたままつながらない。何の連絡もないままで 理由もわからず 事件に巻き込まれたのか 事故なのか まさか・・・と焦る様子に 一気に物語に引き込まれました。

真実は、ストーカーに追われていて怖い、と架のマンションで一緒に住み始めていました。

ストーカーに心当たりはないか、彼女の実家へ話しを聞きに行ったり 昔頼ったことのある 結婚相談所に行ってみたり そこで自分が知らなかった、いえ 知ろうとしなかった真実の過去が見えてきます。

架は学生時代からモテ男。30台も後半になって そろそろ年貢の納め時、と婚活をはじめて、スマホアプリで知り合った真実とは ダラダラと付き合っていました。女友達に 真実ちゃんと結婚しようと思う気持ちは何%?と聞かれて 70%と答えてしまいます。それって そのままその彼女の点数なんだよ、と女友達。

なかなか 結婚へ踏ん切りがつかない 架は 前の彼女にも結婚を迫られ こわ~と引いてしまったのですが、彼女は出産も含め 将来のビジョンを明確に描いている人でした。別の相手をみつけてさっさと結婚してしまい 逃した鯉(=恋)は大きかった、と思い知るのですが それがまさに 架の傲慢だったのです。

 

反対に、真実は、大人しく、主体性を持たないように育てられていて 謙虚すぎて 自分の意見のない女性。すべて他人のいいなりのような。それでいて面食いw

真実の素顔が描かれている箇所は読んでてイライラしますし 彼女の母親にはもっとイライラさせられます。

親のいいなりになることが美徳のような 「いい人」であることに固執して生きています。読んでるだけで息苦しいです。

こちら善良。

 

第二章は真実の失踪後

いい子で育ってきた真実が吐いた 一世一代の大嘘が 架の女友達にバレバレw ストーカーなんて最初からいない。

架に振り向いてほしくて 一歩前進したくて吐いた嘘でした。

一緒に暮らしはじめても 架の真実に対する気持ちと 真実の架に対する気持ちに温度差がありすぎて、架のあまりにそっけない態度に 架の部屋から飛び出して 真実はスマホの電源を切っていました。

一人で着の身着のままで飛び出したので 住む所を提供してもらえる 東日本大震災のボランティアを訪ねます。

泥を被った写真の洗浄を手伝い、津波に飲み込まれた街の地図を作り直す仕事を手伝っていました。

ボランティアや被災地の人たちとの暮らしの中で 少しずつ真実の心も解きほぐされていったある日、ボランティア仲間にインスタグラムを見せてほしいと言われて アカウントを教えたら…

最後に上げた写真に、架からのメッセージが入っていました、もう一度話がしたい、と。

 

失って初めて知る 大切さ。架は自分の傲慢さを思い知らされ 意を決して連絡してきたのです。

任された地図の仕事が終わってから、真実は架に連絡をして 架は真実に会いに来ました。

ティファニーの指輪の入った箱を持って。

 

泥の中から見つかったアルバムにあった古い結婚写真は 被災を免れた三波神社で執り行われたものでした。真実もまた この三波神社で式を挙げたい、と架に頼み ボランティア仲間や石巻で知り合った人に囲まれて 新しいスタートを切ったのでした。

真面目すぎて損をしたり 律儀すぎて人を傷つけたり 生きづらいタイプの 真実が ようやく幸せをつかんだ!とラストは 母親のような気持ちでほっこりしました。 

 

結婚は 二人で描く物語

結婚はゴールではなくてスタート。これからどんな物語をふたりで描いていくか。

結婚に勢いで突入できたらいいのですが このひとでいいかどうか、なんて 考えても答えは出ないのです。

一定の条件をクリアしてたら 後は二人で「いい」ように築いていくもので 最初から100%を求めたら完璧なひとなんてどこにもいないから。

結婚してからもいろんな試練はあるし そこを我慢したり 支え合ったりして 二人でオリジナルの、その家族ならではの物語を紡ぐものだと思います。

子供の手が離れ また夫婦二人になった時 人生のハーベストタイムを豊かに過ごせるよう 長いスパンで考える必要がありますよね。

でも 条件に 三高だったり 趣味だったり フィルターかけますけど やっぱり信頼できそうな人柄か 話しが弾むか 苦しいこともこの人となら乗り越えられそうか 世界が敵に回っても味方でいてくれそうか がポイントかな~ for me 笑

 

分厚いけど 面白くて あっという間に読めました。