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男女六人を惑わす賀集ヒカリとは
昨年5月7日(土)の朝日新聞・読書欄で紹介されていた『ヒカリ文集』。
ヒカリと付き合った、学生劇団NTRのメンバー6人が、それぞれの視点からヒカリについて語る、という内容。
以前読んだ 吉川英治文学新人賞を受賞した 朝倉かすみ著『田村はまだか』のようなストーリーかな、と思い読んでみました。
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ヒカリと付き合った6人がヒカリについて綴る思い出のヒカリ文集
劇団員・鷹野裕が書いた「序」と「結びに替えて」と6人の登場人物の6章から成っています。
劇団を主宰していた破月悠高(はづきゆうこう)が東日本大震災被災地で横死しました。
破月が亡くなる前から、ずっと退団していったヒカリの事を気にかけていた様子。
「ヒカリがいるとしたら被災地にいる」と言って、被災地に通う悠高。
妻の久代は、夫が泥酔して亡くなったのが腑に落ちず、未完の戯曲の続きを鷹野裕に描いて欲しいと依頼します。
鷹野は、皆でヒカリについて書こう、と提案、それぞれヒカリとの思い出を綴るという形で展開します。
設定が極端で不自然、こんなことってある?
第一章 破月悠高(故人) 戯曲・未完
第二章 鷹野裕
第三章 飛方雪実 レズビアン
第三章 小瀧朝奈 レズビアン
第四章 真岡久代 レズビアン
第五章 秋谷優也
賀集ヒカリ バイセクシャル
登場人物はヒカリを含めて男女7人、男性3人、女性4人。
その4人の女性全員がLGBT
セクシャルマイノリティと言われているのに、こんなに…女性全員がLGBT!!
まず、ここで、引っ掛かりました。
さらに、小さな劇団内で、次々に相手を替えて恋愛関係を結ぶヒカリ。
ヒカリとは、
笑顔が最高に可愛くて、相手がしてほしいことを敏感に感じ取って気持ちよくしてくれたり、優しい言葉をかけてくれたり、癒やしの存在です。
魅力的なヒカリに惹かれて行くのはわかりますが、それが小さな劇団内でのこと。
別れた、くっついた、と他の劇団員も見ている中での出来事。
もちろん、別れて別の劇団員とつきあうのだから嫉妬もあり…
こんな状況が気持ち悪すぎて受け入れられなかったです。
そんな、ファム・ファタールが一人いたら、みんな警戒して付き合わないと思うのですが…
次々と籠絡されていくんですね、不思議なくらいあっけなく。
これが現実だったら、異常な集団だと思います。
ファム・ファタールなヒカリをヒロインに「マノン・レスコー」を上演
ファム・ファタール(仏: femme fatale)(或いはファム・ファタル)は、男にとっての「運命の女」(運命的な恋愛の相手、もしくは赤い糸で結ばれた相手)というのが元々の意味であるが、同時に「男を破滅させる魔性の女」のことを指す場合が多い。ファム・ファタール Wikipedia
劇団が舞台なので、たくさんの戯曲の名前がでてきます。
テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』、『欲望と言う名の電車』や、
ファム・ファタールが登場する『サロメ』『マノン・レスコー』『カルメン』あたりは、知っていますが 他にもいろいろ…^^;
主宰の破月ではなく、鷹野裕が書いた『マノン・レスコー』のマノンをヒカリが演じました。
『マノン・レスコー』は、宝塚歌劇で上演したものを観たことがありますが。
これまた納得のいかない内容で、ヒロインを好きになれない、とう致命的な理由により全然心に響かない作品でした。
要するに、ワタクシがファム・ファタールものが嫌い、ということなんでしょう。
再認識。
病的だと指摘された「長続きしない人間関係」
裕の「結びにかえて」で、次々に付き合った人を捨てるヒカリがメンタルクリニックに行けば診断名がつくかも、と言っています。
ヒカリの生育過程に親の問題が絡んでいて、性格形成に影響を及ぼしたのかも??
一見、人気者で、誰からも好かれて幸せそうに見えても、ヒカリ自身、心の底から信頼し、人間関係を構築することができない寂しい人なんですね。
ヒカリは、真のファム・ファタールではなかったのかも?