⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【本屋大賞受賞】【恩田陸】『夜のピクニック』|巧みな心理描写が素晴らしくて一気読み!

面白かった〜!!

一気読みでした。

 

恩田陸さんの高校三部作(『六番目の小夜子』『球形の季節』『夜のピクニック』)の完結編だそうですが、どれも読んでいませんでした。

 

今更、青春小説もな〜 ^^;

 

『夜のピクニック』は第2回本屋大賞、第26回吉川英治文学新人賞受賞作でもあり、機会があれば読もう、ぐらいでした。

 

ちょうど図書館の予約が途切れた今がチャンス、と読み始めたら納得のおもしろさ、なるほどね〜!!

 

 

学校行事「歩行祭」、たった一夜の物語なのに、深い

Amazon★4.2 ★5=54%  2006年9月7日発売

2004年7月30日に新潮社より刊行、文庫本は2006年に発売。464ページ。

 

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

引用元:新潮社HP

 

夜通し歩く中で、普段言えなかったことを言えたり、知らなかったことを知ったり…

 

暗闇だから、非日常だから、言えることもある。

 

主人公の甲田貴子の心に刺さった小さな棘。

それを取るチャンスは、高校生最後の行事、歩行祭の日にしかありませんでした。

 

一晩の、貴子と融の心情にスポットを当て、青春時代を生きているクラスメートたちを生き生きと描き出しています。

 

『小説新潮』に2002年11月号から2004年5月号まで連載されていたというだけあって、登場人物が多く、それぞれのキャラが見事に立っています。

 

それゆえに、か…

 

多部未華子主演で映画化され、2006年に公開されています。

 

二人の秘密

⚠️ネタバレあります

 

 

 

 

甲田貴子は母娘二人暮らし。

母・聡子は、亡くなった夫と共同経営していた会社を継いでバリバリ働いています。

貴子は母と、クラスメートの西脇融の父・恒(わたる)との間にできた私生児でした。

 

西脇融と貴子は異母兄弟。

あろうことか、同じ進学校に進み、出会ってしまいました。

高校3年では同じクラスになって、互いに無視を貫いていましたが

とても気まずい。

たまに貴子が視線を感じると、鋭い眼差しで見ている融がいる、そしてスッと視線をそらす。

よそよそしい二人を見て、クラスメートはかえって二人は密かに付き合っているのではないか、と勘ぐります。

 

貴子は、血を分けた兄弟の融とこのまま一言も話さず卒業してしまうことを恐れていました。

高校を出たらもう一生会えなくなってしまうから。

 

クラスメートとのやり取りでそれぞれの関係性や立ち位置、キャラクターがわかって興味深いです。

 

心の機微が丁寧に描かれ、登場人物それぞれの感情の揺れが手に取るようにわかるだけに、繰り広げられる状況に心がざわついたり、ホッとしたり。

 

貴子の仲良しグループの友人のひとり、榊杏奈。

 

両親と共にアメリカに行ってしまったけれど、

みんなで夜歩く。ただそれだけなのに、どうしてこんなに特別なんだろう」と「歩行祭」を懐かしんでいます。

 

この言葉は映画のキャッチコピーにもなっています。

 

杏奈は貴子と融のことを思い、遠くから良い働きをしています。

 

杏奈は弟の順弥を「歩行祭」に送り込んできて…

順弥の言葉が、貴子と融の間にあった壁に突破口を開きます。

こんなところにキーパーソンw

 

硬い殻で自分を守り、人を寄せ付けない雰囲気を醸し出していた融は、自然体で貴子と話せたことで、ようやく心の中のわだかまりが溶けていったのを実感します。

 

貴子はいつでもウェルカムだったのに、融が意固地になっていただけ。

貴子親子が堂々と生きていることに嫉妬していただけ。

憎むべきは父親なのに、堂々と生きている貴子が憎かった。

 

もっと早く、許し、自分を解放すればよかったのにね^^

 

青春しそびれた〜と残念に思う融でした。

 

ここからが二人の新しい関係が始まる、そんな明るい希望を抱かせてくれるラストでした。

 

恩田陸さんの「歩行祭」の経験がないと生まれなかった作品

朝の8時から翌日の朝まで、仮眠と休憩を取りつつ夜通し歩き続けるという学校行事「歩行祭」。

 

足の痛み、体の痛み、極限状態の描写がリアルで、80キロの行程を歩いたことがないと書けない文章だな、と思っていました。

 

恩田陸さんの出身校、茨城県立水戸第一高校には、「歩く会」という伝統行事があり、それが「歩行祭」のモデルになっているんですね〜^^

池上冬樹さんの解説

著作が名作と呼ばれるまでには、長い時間がかかり、継続的に読者に支持されなければなりません。

 

なかには”新作にしてすでに名作” といえるような現代の名作があるのも事実。本が出版されたとたんに話題をよび、高く評価され、ベストセラーになり、ある世代に根強く、あるいは世代を超えて読まれている、そして今後も間違いなく読まれ続けられるだろう傑作のことである。

出典:『夜のピクニック』解説 P448 

 

その、新作にしてすでに名作とされるのが『夜のピクニック』だ、と。

 

活字離れしている、と言われる現代の高校生にも読んでもらいたい物語。

 

高校に通ったことのある人なら誰しも、あの頃のことを思い出さずにはいられない甘酢っぱさを感じるのでは?

 

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