happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【伊吹有喜】犬がいた季節 読了、最終章、涙が止まらない。

伊吹有喜さんの作品を読むと、いつも温かい涙に濡れる

伊吹有喜さんの作品を初めて読んだのは、「カンパニー」でした。

 

宝塚歌劇で「カンパニー」が2018年に宝塚大劇場、東京宝塚劇場で上演されると発表になったのが2017年の6月末。

小説新潮に連載されていたものをまとめて上梓されたのが2017年5月でした。

 

それまで伊吹有喜さんのお名前も知らなかったのですが、初めて読んで、温かい気持ちになる素敵な作品を書かれるのだな、と思いました。

 

あれから4年、今年 直木賞ノミネート作「雲を紡ぐ」を読みました。

家族再生の物語を、岩手のホームスパンを通して描いていて胸熱でした。

 

「犬がいた季節」2021年本屋大賞ノミネート作品、ということで読んでみました。

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舞台は伊吹有喜さんのふるさと三重にある 四日市の八稜高校

八稜高校、通称ハチコウに捨てられた白い子犬のシロ。

シロ(後にコーシロー)の目を通して見た高校生たちと彼らへの思い。

昭和63年(1988年)に捨てられてから、平成11年(1999年)までのコーシロー。

30年経た 令和元年(2019年)に再会する美術部のメンバー。

 

第一話 めぐる潮の音

第二話 セナと走った日

第三話 明日の行方

第四話 スカーレットの夏

第五話 永遠にする方法

最終話 犬がいた季節

 

四日市コンビナートや 鈴鹿サーキット、近鉄沿線の駅名も出てきます。

三重県尾鷲市ご出身の 伊吹有喜さんだから リアルな描写に読まされます。

 

それぞれの時代に起きた事件や当時の世相、流行したファッションや歌の題名が散りばめられ 懐かしく思い出しながら読みました。

高校生の日常を描いた第一話から第五話は最終章への前フリ

高校に犬がやってきて・・・飼い主が見つからないことから、学校内で買うことを許可されました。

責任とはなにか、命を預かるというのはどういうことか。各自、身を持って考えなさいと校長は言い渡しました。

「コーシローの世話をする会」のメンバーとコーシローの独り言を中心に描かれます。

 

第一話 めぐる潮の音

ここに登場する 塩見パン工房の塩見優花と美術部で皆のあこがれの早瀬光司郎は、ずっと「憧れの人」として他の章でも語られます。

二人は、互いに気になっているのに素直に言い出せず 卒業してしまいました。

 

第二話は セナと走った日

堀田五月(男子)と同級生の相羽が、自転車で鈴鹿サーキットへ行くお話。

アイルトン・セナに会えるかもしれない!と片道1時間半かけて自転車を漕ぐ二人。

青春だな~!

相羽くんは、優花の家のパン屋でパートをしていた相羽さんの息子さんなのです。

 

第三話 明日の行方

奈津子の家に阪神淡路大震災で神戸に一人住まいをしていたおばあちゃんが同居することに。

大事にしていた犬のチロも亡くなってしまい、知り合いもいない四日市に来たおばあちゃんは寂しさを抱えていたので 奈津子は、八高の卒業式を見に来てもらいました。

奈津子とおばあちゃんと、コーシローで撮った写真は、奈津子が進学のために上京してすぐになくなったおばあちゃんの棺に収められました…

 

明日はどうなるか、誰にもわからない、だから 明日の行方はこの手でつかむ!と決意を新たにした奈津子の話。

 

第四話 スカーレットの夏

成績はいいが、親の愛に飢えて、放課後 名古屋まで出てこっそり援助交際している青山詩乃。

30代の男と体の関係を持ってお小遣いをもらっています。

ある日 高校の男子・鷲尾に放課後の実態を知られてしまい… その鷲尾もまた、放課後、バンド活動をしていることを知ります。

 

学校では、もっさりとしているのに、バンドをやっているときの鷲尾がかっこいい。

鷲尾は優しい。

本当の愛を知らない青山詩乃は、鷲尾に大きな勇気をもらって 全く違う自分になるために卒業とともに東京へ旅立っていきました」。

 

第五話

もう、耳も鼻も利かなくなってきたコーシロー、寝てることが多くなってきました。

優花は母校・八稜高校の英語教師として教壇に立っていました。

彼女が、週末、コーシローを自宅で面倒をみていました。

 

教え子の中には、昔パン屋にいたころに転んで泣いていた男の子・中原大輔もいます。

つながってる~^^

 

ある日、互いに家族が入院しているので病院で出会います。

雨の夜だったので、優花先生が大輔を車で家まで送ってくれることに…

途中で二人は「うみてらす14」という展望台に立ち寄ります。

 

大輔にとって、優花は先生なのに 肩を抱き寄せたい衝動に…

 

「絵や写真って一瞬を永遠にする方法だと思うの」

 

一代目のコーシロー日記の表紙には、早瀬光司郎が描いたコーシローの絵。

そして、優花の絵も。

 

コーシローは、鼻で、人の感情を嗅ぎ分けることができました。

相手への気持ちが強くなると臭いも強く感じるのでした^^

大輔の 優花先生への気持ちを嗅ぎ取って 陰ながら応援するコーシロー♪^^

 

最終話 犬がいた季節

八高が創立百年を迎え、図書館が全面改装されました。

百周年の記念式典の後に続く祝賀会の会場になりました。

 

もう、ここから 第一話から第五話で登場する人物たちのその後がわかり、なんだか私まで懐かしさで泣けてきて…

 

早瀬はイタリアで絵を学ぶ為日本を離れ、その後賞などを受賞して有名人になって 母校の式典に帰ってきました。

式典で白布を取って披露されたばかりの早瀬が描いて寄贈した大きな絵のタイトルは…

 

犬がいた季節 

 

(T-T) ダー

 

第一話から事あるごとに登場する 塩見優花(結婚で名前が代わって松保優花)と早瀬光司郎との再会が感動的!!

 

30年の時を経て、ようやく素直に気持ちを打ち明けられた二人。

 

もう、涙だーだーで止まりません。