⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【伊与原新】本屋大賞6位、直木賞候補作『八月の銀の雪』|科学の知識と温かい人とのつながりを描く

 

『青ノ果テ』『月まで三キロ』に次いで『八月の銀の雪』を読みました。

怒涛の3冊連続、伊与原新さんの著書。

 

現在、NHKで放送中の伊与原新さん原作の『宙わたる教室』も大好評のようです。

 

朝ドラ「おむすび」は不評だけど…「3000万」「宙わたる教室」は《やっぱりドラマはNHK》《今期一番》の声|日刊ゲンダイDIGITAL

 

『八月の銀の雪』は2021年本屋大賞ノミネート作品でタイトルは知っていましたが、読んでいませんでした、ようやく♪

 

 

 

 

 

Amazon ★4.3    ★5=54%  2020年10月20日発売

 

伊与原新さんらしい科学ネタと人と人のつながりが温かい感動5編

不愛想で手際が悪い――。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

引用元:新潮社HP

 

憂鬱な不採用通知、幼い娘を抱える母子家庭、契約社員の葛藤……。うまく喋れなくても否定されても、僕は耳を澄ませていたい――地球の中心に静かに降り積もる銀色の雪に。深海に響くザトウクジラの歌に。磁場を見ているハトの目に。珪藻の精緻で完璧な美しさに。高度一万メートルに吹き続ける偏西風の永遠に。表題作の他「海へ還る日」「アルノーと檸檬」「玻璃を拾う」「十万年の西風」の五編

引用元:新潮社HP

 

耳を澄ませていよう。地球の奥底で、大切な何かが静かに降り積もる音に――。
不愛想で手際が悪い。コンビニのベトナム人店員グエンが、就活連敗中の理系大学生、堀川に見せた真の姿とは(「八月の銀の雪」)。会社を辞め、一人旅をしていた辰朗は、凧を揚げる初老の男に出会う。その父親が太平洋戦争に従軍した気象技術者だったことを知り……(「十万年の西風」)。
科学の揺るぎない真実が、傷ついた心に希望の灯りをともす全5篇。

引用元:Amazon

  • 八月の銀の雪
  • 海へ還る日
  • アルノーと檸檬
  • 玻璃を拾う
  • 十万年の西風

 

伊与原新さんの作品を読むと自分がいかにちっぽけかを痛感します

地球の奥深くに降り積もる雪、気が遠くなるような昔にクジラは陸から海へ入った話、

頭に磁場を感じる器官を持つ鳩の帰巣本能、顕微鏡で観る珪藻アート、

偏西風と放射性廃棄物が天然ウラン並の放射線レベルに下がるまで、10万年かかる話など、

 

生きづらい日々を送る人たちと、科学に基づくネタを交えて紡がれる素敵な物語が5編。

 

どの科学ネタも、事実なので、大変興味深く読みました。

 

宇宙の歴史や規模から見たら、我々の喜びも悲しみも、命すら無いに等しいぐらい一瞬のことなのだな〜としみじみ。

大海のミジンコの1細胞もあるかないかの存在。

 

伊与原新著の『青ノ果テ』で地層を調べる場面でも地学部のフィールドワークで部長が「白亜紀の…」と一口で言ってましたが、1億4500年ぐらい前のことで、

これまた想像だに難しい。

 

核のゴミが10万年かかって放射線レベルが下がるなんて、宇宙の歴史からしたらあっちゅー間なのかも。

 

5編の中で好きなのは

アルノーと檸檬

古アパートから立ち退き拒否をするお婆さん、寿美江。彼女の部屋のベランダに迷い込んだ鳩がいるから立ち退かない、と言い張っていました。

 

鳩は「アルノー19」と書かれた足環をつけていました。

 

Photo by Zac Ong

 

1960年代まで数百羽の「伝書鳩」が新聞社で活躍していた | 文春オンライン

 

不動産屋に務める園田正樹が、寿美江に立ち退いてもらうために鳩の持ち主探しをするうちに、鳩の知識が増え、愛着が湧いてきて…

もう、寿美江にとやかく言う気が起きなくなりました。

せっかく、アルノー19が新しい家を見つけたのだから。

 

アルノーはシートン動物記に登場する鳩です。

1960年代まで、文書を迅速に運ぶ手段として、伝書鳩を使っていました。

新聞社各社は、常時数百羽の鳩を飼い、社屋の屋上に鳩舎を持っていたそうです。

 

通信が発達した今、鳩はレース鳩として、愛好家の間で数千万円の値がつくこともあるそうです。

 

磁場を認識できることで鳩は巣に帰れるのだそうです。

 

寿美江は、アルノー19が戻ってきたら嬉しくて仕方がない、と言います、

「ほんとの我が子が久しぶりに帰ってきたりしたら、どんなに嬉しいんだろうねえ」

「ダメ息子でもですか」自嘲を浮かべていった。

「自分のことかい?」寿美江もにやりとする。

「きっとどんなダメ息子でもだよ」

出典:『アルノーと檸檬』P162 

 

正樹はレモン農家の実家とは疎遠になってしまった実家を思ったのではないでしょうか?

 

知れば知るほど、胸が熱くなる1編。

 

どの作品からも科学的興味を刺激されるとともに、人と人とのつながり、主人公が知り合った人の人生ドラマが読み応えあります。

 

興味深い科学的情報が楽しく、温かい気持ちになれる5編、おすすめです♪

 

 

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