⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【2024年本屋大賞|6位】川上未映子著『黄色い家』|行き場の無い少女たちの末路は結局…

2024年 本屋大賞6 位、川上未映子著『黄色い家』を読みました。

 

物語がどんどん展開していき、ぐいぐい引き込まれて、608ページ、一気読みでした。

 

 

ひとりの女性の生き様を描くクライム・サスペンス

 

Amazon★4.2 ★5=53% 2023年2月20日

2023年 第75回読売文学賞小説賞

2024年本屋大賞6位

 

608ページ、分厚い本ですが、思いの外早く読み終えたのは、先が気になって一気読みしたからです^^;

 

あっという間の第一章から第十三章まで

主人公の花が、かつて同居していた女性の初公判の記事をネットで見つけたところから始まります。

同姓同名だろうか、本当に「あの」黄美子さんなのか。

 

ここでぐっと物語に引き込まれます。

 

ミレニアムまであと3、4年、という時代。

ポケベルやルーズソックスが健在だったころ。

主人公の花は東村山市でスナックで働く母親(毒親)と二人暮らしの中学生でした。

高校生になってアルバイトでコツコツ貯めたお金を母の元交際相手に持っていかれ、何もかもが嫌になっていた高校2年のある日、

母の友人の黄美子さんとばったり会いました。

 

「一緒に来る?」「いく」二つ返事で黄美子さんの元へ。

今の生活から抜け出したい一心でした。

 

今後のことが気になって、一気読み!

 

毒親の元を離れて最初は心地良い「家族ごっこ」

黄美子さんは、スナックをオープンすることになり、花も年齢を偽って、店に出ることになりました。


働いて、お金を貯めて余裕のある暮らしがしたい、花の願いは切実でした。

 

スナック「れもん」には、黄美子さんの知り合いで在日のヨンス(映水)さんが、時々出所不明のお金を持ってきては黄美子さんに渡しています。

クラブで働く琴美さんも上客を連れて来てくれて、なんとか生活できていました。

 

平穏な日々は長く続かず、ある日ビルの1階の食堂が火事を出し、スナック「れもん」も焼けて黄美子さんと花は生業と寝床を失ってしまいます。


スナックの大家さんが、空いている一軒家を貸してくれることになり

近くのキャバクラで売れずにいじめられていた加藤蘭と

実家は金持ちなのに、居場所がない、という高校生の玉森桃子も家出してきて、奇妙な共同生活が始まりました。

家庭に恵まれない、馴染めない少女たちは、黄美子さんという「親」の元に集いました。

 

犯罪に手を染めていく少女たち

花は、スナック「れもん」を再開するためのお金が欲しい。

でも身分証明書もない、未成年の花には真っ当な職業に就くことはできません。

スナック「レモン」の再建どころか

このままでは生活が破綻する…

 

花は、「出し子」の仕事(シノギ)をもらい荒稼ぎすることを覚えました。


やがて、同居人の蘭や桃子も巻き込んでもっと大きなシノギで稼ぐのでした。

 

黄美子さんの友人の琴美さんが亡くなって、花は琴美さんに話した内容が死につながったのではと自責の念にかられていきます


一枚岩ではない少女たちにほころびが生まれ、お金を山分けして逃げようとする桃子。

それぞれの思いはバラバラで、少女たちはとうとう黄美子さんを置いて逃げ出すことにしたのでした。

 

花は、毒親から救ってくれた恩義のある貴美子さんを置いて逃げるのは卑怯だと思いつつ、犯罪に手を染めたことに怖くなって逃げてしまったのでした。

 

黄色い家

風水的に黄色が金運に利く、と知った花は、金運UPを願って黄色の小物を集めていました。

それだけでは飽き足りず、、家ごと黄色くしなくては!!

ペンキや刷毛を買ってきて部屋全体を黄色にする、それが豊かになる近道だ、と盲信していたのです。

金運UPを呼び込みたいが故の「黄色い家」だったのですね。

 

最後に3人は黄色い家を出ていくと言う選択をしますが、

 

蘭が確認します、

「私たちは、大人たちに利用された被害者だった、犯罪もさせられた、お金なんて最初からなかった、そうだよね。」

 

そういう事にして、家を出た花でしたが…

 

花の悔恨

最後は黄美子さんに、面倒を押し付けてそっと逃げてしまったけれど、

花は、家に連れていかれたわけでもなく、犯罪をさせられたわけでもなく、

自分の意思で付いていき、自分の意思で「出し子」をやっていました。

それなのに大人たちのせいにして…罪悪感に苛まれる花。

 

お世話になったヨンスさんに電話をして黄美子さんに会いに行くと…

 

すっかり老け込んで、しょぼくれた黄美子さんがいました。

中学時代、一緒に歩いているのが誇らしいぐらいカッコいい女性だったのに。

 

以前よりももっと話が噛み合わない黄美子さん。
多くのことが忘却の彼方に行ってしまったようです。

 

その姿に、自分を支えてくれた黄美子さんを今、支えてあげられるのは自分だけだ、と花はもう一度やり直そう、一緒に行こうというのですが…

 

カタギの仕事していない人たちの危うい人生

テレビドラマや、映画、警察密着特番などでしか目にしない犯罪のやり口。

 

詳しく書かれていて興味深かったです。

 

ハラハラドキドキ、手に汗握る場面も。

 

また、こんな簡単に(犯罪が)できてしまうのか?と疑問すら抱きながら読みました。

 

巻末の主要参考文献には

『シノギの鉄人ーー素敵なカード詐欺の巻』(藤村昌之 著 宝島社)

『テキヤ稼業のフォークロア』(厚香苗 著 青弓社)

 

殺人やバイオレンスとはまた違った方向の犯罪。

 

気分のいい作品ではないので、個人的に好みにあわなかったのですが…

社会の底辺にスポットを当てた意欲作。

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