新聞の読書欄で見つけた本です♪
著者の原田ひ香さんは、初めて読む作家さんでした。
旬のおいしい小説作家さんだそうです。
『三人屋』『ランチ酒』『まずはこれ食べて』などの著書があるようですが知りませんでした。
本屋大賞、直木賞関連の本を読むことが多く、馴染みのない作家さんでしたが、お料理小説が大好きなので楽しく読みました。
料理小説の楽しさは、料理を作るプロセスを脳内再現するところ
駆け出し料理研究家・瑠希子と老舗料理学校「品川料理学園」を経営する母と祖母。相容れない両者の間に隠された秘密とはーーー
品川瑠希子は、幼い頃から後継者の道が決まっている雰囲気や、学園のj方針への抵抗があり、大学卒業後は企業にSEとして就職した。でも。料理は好きだった。
SNSでの発信をきっかけに、料理研究家として活動を始め、令和元年のゴールデンウィークに向けたレシピ企画を立ち上げる。
一方、昭和二年。品川料理教習所の台所では、女中奉公に来て半年の山田しずえが西洋野菜のセロリーと格闘していたーー。
本の帯より
本は、下ごしらえの日曜日に始まって、月曜日の骨酒、火曜日の竹の子、水曜日の春菊、木曜日の冷や汁、金曜日の生姜焼き、土曜日の梅仕事、日曜日のスープ、あとしまつの日曜日…の9章から成っています。
この骨酒や、竹の子を使った料理、春菊のサラダなど、作る行程を読んでいると、今すぐ作りたくなってきますし、骨酒などは、もう香りが漂ってきそうな勢いですw
お料理は、味、食材はもちろん、香り、歯ざわり、温度といろんなエレメントで成り立っています。
どれかひとつでも欠けたら、魅力が半減してしまうこともあります。
瑠希子が試行錯誤でお料理を生み出す様子も、何気ない工夫で、美味しそうなひとしなが出来上がる様子も、読んでいてワクワクします。
しかし、この本の肝は・・・
瑠希子と、母&祖母との確執、その裏に品川料理学園の歴史
瑠希子は、SEの仕事をしつつ、料理を自身のTwitterで紹介しているうちに、お料理アプリの仕事を持ちかけられます。
今流行りの、クックパッドなど、材料を指定すれば、たくさんのレシピが見れるソフト、そういうアプリにお料理を載せてもらえないか、と。
令和のGWに向けて、メニューを考えていたところ。
何度も実家から 品川料理学園を継いでほしいという連絡が…
それがイヤで家を飛び出した瑠希子だというのに。
そうこうするうちに、実家から、訴訟を起こされてしまうのです。
品川料理学園のオリジナルレシピ「生姜焼きの作り方」を盗んだ、という罪状で。
幼い頃から食べ慣れている生姜焼きをSNSで紹介しただけなのに…
物語は、二本の時間軸で語られます。
瑠希子は、令和の時代にSNSに自身が作ったお料理の写真をアップして、作り方を教えてほしい、というフォロワーの要望で作り方も載せるようになりました
いまや、フォロワーは3万人!
実家の品川料理学園を継ぐのが嫌で、離婚した友人と二人暮らしです。
もうひとつは、品川家に奉公に上がった山田しずえが、昼餉の係から旦那様に料理の腕を見込まれて、西洋料理を食べて、家に帰ってその作り方を研究し書きとめるという仕事を仰せつかっていました。
やがて若奥様からとんでもないことを頼まれます…
この2つの話が交互に出てきて、だんだんと山田しずえとは誰かがわかってくるんですね。
品川料理学園の理事長の坂崎がいい働き^^
料理学園の校長の母、会長を務める祖母も瑠希子とは折り合いが悪く、学園を継ぐ継がないでずっと冷戦状態でした。
その両者の間を取り持っているのが理事長の坂崎で、いろんな意味でいい働き。
最初は、疎ましく思っていた瑠希子が少しずつ心を開き、二人の距離が縮まって行くところは微笑ましかったです。
ずっと反感を感じていたのに…。
坂崎が、瑠希子の家から古びたノートを何冊か持ってきました。
ノートに書き付けてある、試行錯誤が伺える料理の作り方。
西洋料理のポークジンジャーを、「生姜焼き」として完成させたしずえという女性がおぼろげながら見えてきたのです。
坂崎に包丁塚のある神社に連れて行ってもらった時 そこに品川家の先代の名前を見つけた瑠希子は 自分の中に流れている品川家の血を感じたのだと思いました。
お料理小説の醍醐味を満喫
それでもやっぱりこの本を読む楽しさは、瑠希子が旬の食材を使ってささっと同居の友人に手料理を作るところをにあります。
凝ったお料理ではなく、家庭料理を いろんな工夫でさっと作ってしまうところがかっこいいです。真似したくなるお料理も多数!
こんなにアイデアが湧いてきて、面倒がらずに作れる瑠希子が羨ましくなりました^^
「みをつくし料理帖」や「親王殿下のパティシエール」など、お料理やお菓子を工夫して作る小説は読んでいて本当に楽しいです♪
おすすめです!