窪美澄著 「じっと手を見る」を読みました。
朝日新聞の読書欄 「売れてる本」で紹介されていた本です。
富士山の見える町に生まれ育った 日奈と 幼馴染の海斗。
2人は 介護の専門学校を出て それぞれ別の職場で働いています。
大切な人を、帰るべき場所を、私たちはいつも見失う――。読むほどに打ちのめされる! 忘れられない恋愛小説
富士山を望む町で介護士として働く日奈と海斗。老人の世話をし、ショッピングモールだけが息抜きの日奈の生活に、ある時、東京に住む宮澤が庭の草を刈りに、通ってくるようになる。生まれ育った町以外に思いを馳せるようになる日奈。一方、海斗は、日奈への思いを断ち切れぬまま、同僚と関係を深め、家族を支えるためにこの町に縛りつけられるが……。
Amazon 商品説明より引用
下記の 7編からなっています、
・そのなかにある、みずうみ 日奈視点 東京のデザイナー・宮澤との出会い
・森のゼラチン 海斗視点 日奈への思い
・水曜の夜のサバラン 海斗の後輩・畑中の視点 海斗のこと、畑中の生い立ち
・暗れ惑う虹彩 日奈視点 日奈と宮澤との暮らし
・柘榴のメルクマール 宮澤視点 生い立ち 妻・仁美とのこと
・じっと手を見る 海斗視点 畑中との暮らし 表題作。
・よるべのみず 日奈視点 海斗への思い
日奈と海斗は 幼馴染、ふたりとも同じ介護関係の学校を出て 別々の施設で働いています。
富士山が見える狭い街で 淡々と繰り返される平和な暮らし。
そこへ 学校を紹介するパンフレットを作成するデザイン会社の宮澤が日奈と海斗の元を訪れます。
それは 静かな池に投げ込まれた小石でした。
日奈へ片思いの海斗は
日奈の庭の草刈りを申し出たデザイナーの宮澤が 東京からしょっちゅうやって来て 日奈の心まで占領していくのを 忸怩たる思いで見ていました。
海斗自身も同じ職場にやってきた 子持ちの畑中の家に転がり込みます。
畑中の子供は 発達に遅れがあり その面倒を自分が見てもいい、とまで思い始めてたのに…
畑中は、あっさり自分を捨てて 別の男性の元に行ってしまった。
二人が 単調な毎日を打破する 刺激的な出会いに、未来をつなげようとする気持ち、すごく良くわかります。
それでも 日奈も 宮澤との生活はうまくいかず、最終的に 幼い頃からよく知った間柄の 日奈と海斗が寄り添う所で終わるんです。
それぞれが少し冒険をしてみたのだけれど 一番安心できる居場所に戻ってきた話。
ストーリーとしてはゆるゆるとしているのですが 現代社会が抱える問題が あちらこちらに散りばめられていて 興味深く読みました。