⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【町田そのこ】『うつくしが丘の不幸の家』1軒の家をめぐる5つの家族の物語

「不幸の家」だなんて、「うつくしが丘」の言葉のイメージと対極にある「不幸」。

 

どんなお話なのか、良からぬことが起こるのか、と構えて読み始めましたが…

 

5章からなる連作短編集で、ラストは温かい気持ちになる、町田そのこさんらしい作品でした。

 

⚠️読書記録故、ネタバレあります、ご注意ください

 

家っていうのはただの入れ物、そこで暮らす人が幸せかどうかが大事

そんなことを、小学生の宗一が言っていました…。

あ、宗一というのは、親に見捨てられた少年です。

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5章からなっていて、登場人物が重なって、緩やかに繋がっている連作短編集です。

 

  • 終わりの家
  • ままごとの家
  • さなぎの家
  • 夢喰いの家
  • しあわせの家

 

一番最初が「終わりの家」ですが…

時系列に並べると 

しあわせの家→ 夢喰いの家→ さなぎの家→ ままごとの家→ 終わりの家。

 

逆から読むと、わかりやすいです。

 

うつくしが丘、というニュータウンに建つとある一軒家は、主が定着しません。

 

皆、何かしらの理由で退去してしまうのです。ホラーではありません。

その「家」に住んだ5組の家族の物語です。

 

おわりの家

主人公の美保理は、髪工房つむぐのオープン直前で夢いっぱいです。 

夫・譲の父は義弟ばかりをかわいがっていて、いつか家を継ぐはずだった夫は弟にその座をゆずり、美しが丘に家を買いました。

 

美保理が庭にある高いビワの木を切ろうと苦戦していると隣家の老女・信子がびわの葉茶と渋皮にを出してくれました。

 

通りすがりの人が

「この家はいわくつきの家、不幸の家って呼ばれてるのを知って買ったの?」と 嫌味丸出しで聞いてきます。

この家に済むと必ず不幸になっ出ていく羽目になるのだ、と。

 

譲が実家から朗報を持ち帰りました。

理髪店を譲に任せられなかった分、近所の介護付有料老人ホーム専属のサロンの美容師の口を譲にクールだった父が紹介してくれて罪滅ぼし。

 

とおりすがりの人に「不幸の家」だといわれたけれど、

 

きっと大丈夫です。幸せな場所にして行きます。

幸せは人からもらったり人から汚されたりするものじゃない、自分で作り上げたものを壊すのも汚すのもいつだって自分にしかできないの。

出典:『うつくしが丘の不幸の家』

 

幸せはいつも自分の心が決める(相田みつを)、ですね!

ままごとの家

結婚しても22年。奈緒子の夫・義明は典型的なモラハラ夫。

5年前に中古物件で一軒家を持つことができたが、そのせいで奈緒子はパートを増やさねばならなかった、しかも交通の便がすごく悪い。

夫は車通勤のため、奈緒子の苦労がわからない。ちょっと読んでイライラw

 

息子の雄飛が樹理亜というアルバイトの女の子を妊娠させました。堕胎期間は過ぎています。

義明と雄飛は相手の家に挨拶に行き、勝手に話を付けてきました。

学生結婚はうまくいかないので、大学だけは出ておけ、と。

その間に赤ちゃんと彼女を家で預かると言います。

 

「奈緒子の人生にも夢や楽しみが必要だろう。子育てに参加できる。それってとても良い楽しみじゃないか。人生がまた充実するよ。」(出典:『うつくしが丘の不幸の家』)

 

人の楽しみを勝手に決めるな、自分の都合のいいように話を進めるな、

本当にモラハラ夫にイライラMAXです!!

 

義明は夢を追いかけて家を出ていった長女の小春を馬鹿にしています、そんな父のいる家に小春からは音沙汰なしでした…。

 

どんなことをしてでも一緒に子供を育てていくって言ってくれたから、信じて産む決意をしたのに、親に甘える姿に失望した、一人で育てて行く、という樹理亜は、雄飛よりよほどしっかりした女性でした。

 

初めて名前のあるお役をもらえた。

舞台女優になるのが夢だった小春は、夢を叶えて舞台の上で、駆け回っていました。

強い意志で、自分の夢を叶えた、自分の手で幸せを掴んだ、それが尊い✨️

 

劇場からバスで帰る時、初めて義明はバス通勤の不便さを知りました。

そして初めて、妻・奈緒子の大変さに思いが至ったのでした。

身の丈にあった家に引っ越そう…。

 

モラハラ夫の言動にイライラさせられますが、最後に、ホッとできて良かった…

さなぎの家

かなえは、紫、紫の娘・響子と3人で「うつくしが丘」の家にやってきました。

高校時代の友人で、どうしようもない状況に追い込まれた2人に、先輩が1年の期限をつけて貸してくれたのでした。

紫の元夫の英人は高校のクラスメイトでモラハラ夫でした。

かなえの母は毒親で母との記憶はろくでもない悲しい思い出ばかり。

 

紫は2人目を妊娠しなかったから、と英人は浮気をして紫を追い出しました。

別れるときに響子を連れて行く代わりに権利を一切主張するなと言われています。

 

響子がおたふく風邪で休んでいる時に突然英人が訪ねてきました。

上がり込んで響子を抱え上げ、バス停のほうに走って行く。

ちょうど児童クラブの浦谷先生が見ていて警察を呼んでくれました。

 

「娘の親権を放棄した」、その声を録音したボイスレコーダーを警察で聞かせました。

英人の負け。

 

1年たち、みんな家から出ていくことになりました、

引っ越しのお手伝いに来た浦谷先生、以前からかなえが気になっていた、と告白。

 

みんな明るい未来に向けて出ていきます、ホッコリするラストでした。

 

夢喰いの家

忠清と蝶子は結婚と同時に築6年の美しが丘の家を買いました。夢いっぱい。

 

忠清は男性不妊と診断され、体外受精を勧められました。

体外受精は女性に多大な負担をかける、忠清は別の男と幸せな家庭を築いてほしいと離婚を申し出ました。

 

隣家の小太郎も男性不妊症だと言い、体験談を話してくれました。

 

そして母の言葉、

 

人と人とのつながりって1本の糸じゃないのよ。いろんな縁が交差して絡み合って独自の模様を作りながら太くなっていくの。

 

自分たちなりの糸で自分たちだけの紐を編み続けていく。それが一緒に生きていくと言うことだと思うのよ。

出典:『うつくしが丘の不幸の家』

 

美しい喩え、心に刻んでおこう。

 

家と言えばこの家、住む場所がなくて、大変な後輩2人に1年間だけ貸すって言っちゃった…という経緯があっての、「さなぎの家」へと続くのです。

 

順番逆転してますが。

しあわせの家

真尋は須崎健斗と2年前に居酒屋で会いました。

 

健斗は嘘つきで息子・宗一の世話に困って真尋に一緒に住まないかと言ってきました。

彼は長距離トラックの運転手でほとんど家に帰って来ません。

 

夏休みの間、、真尋は宗一と一緒に過ごし、仲良しになりました。

 

そんなとき、真尋の父が亡くなったと連絡があり、宗一を連れて亡き父のもとへ向かいました。

宗一は旅行など行ったことなく、大喜びです。

 

父は母を捨てて別の女性と暮らしていました。

父の後妻は敦子と言い、義理の妹は舞子と言ってまだ小学生でした。

 

宗一がカブトムシを獲り、舞子は、それを欲しがる。

 

「だめだよ。欲しいって言えば、何でも貰えるもんじゃない。」

真尋の言葉は、父の愛情を盗った舞子とその母への嫌味に聞こえますね。

 

お姉ちゃんに会いたかったと舞子は言ったが、「私は会いたくなかった」と言ってしまう。

少し大人げないですね。

素直に笑う舞子が羨ましく、ちょっぴり憎らしかった、そんな思いが出てしまったのでしょう。

 

家なんてただの入れ物だよ。家家って大人馬鹿みたいだ。

どこだっていいじゃんどんなところでも大好きな人と笑っていられたらそれでいいじゃん。

出典:『うつくしが丘の不幸の家』

 

ちゃんとした家に住めば幸せになれると思ってた真尋は目からウロコ。

小学生に真髄を突かれてしまいました。

 

健斗がいなくなったのは2人が実家から帰った3日後。

須崎さんの前の奥さんと大至急連絡を取りたいんです。連絡先をご存じありませんか?隣の家の伸子に聞くと、伸子は千秋の居場所の電話番号も知っていました。

 

宗ちゃんに何かあったら連絡お願いしますって言われてたそう。(健斗は当てにならない、どころか危険人物。)

離婚して欲しければそいつを置いてさっさと出て行けと暴れ、命の危険を感じた千秋は1人で家を出て行かざるを得なかったのです。

 

まだ小学生の宗一は実母の千秋と暮らすのが幸せだから…お別れです。

 

美しが丘から最初に去ったのはゆずでした。

また来るから僕のこと覚えててね。そう言ってゆずはプレゼントとビワの苗をくれました。

 

いつかゆずがここに来たときに、ビワの木があったら嬉しいだろうから、この家に植えていく、幸せの家の目印として。

 

エピローグ

髪工房つむぐがオープンして3年の月日が経ちました。

ここで生まれて育つ子供たちに美しが丘で生まれてよかったと思って欲しい。1つでも多くの幸せを、幸せな思い出をつかんで欲しい。

先を生きる大人としてできることをしたいんですと言ってたんだ。

故郷を思い出す時、幸せな気持ちになれるように、どこにいても思い出すと支えとなれるようなそんな場所にしたい。

出典:『うつくしが丘の不幸の家』

 

子供の頃、この美しが丘で過ごしたことがある。その1ヵ月がとても楽しかったんだ。本当に良い思い出だよ。

 

実は俺以前ここに住んでたんです。24年前です。開発中で空き地ばかりでした。実はビワを植えたのも俺なんです。(中略)大きくなったら一緒に実を食べようって。

 

出典:『うつくしが丘の不幸の家』

 

大人になった宗一だ〜!!💡

 

いろんな家族の形があり、いろんな幸せや諍いを見てきた「不幸の家」とビワの木。

登場人物が重なっているのも面白く、ラスト、ほっこりするのが町田そのこさん流。

 

だから町田そのこさんの作品、読むのが楽しいです!

 

 

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