一穂ミチさんの作品は5冊目。
第171回の直木賞候補5作は、Amazonでの評価が3.9が2作品、全体に評価はいまいちでした。
唯一の高評価 Amazon4.5で★5が70%を越えている『地雷グリコ』は…ちょっと好みのジャンルではなかったので…候補作、全く読んでいませんでした。
「地雷グリコ」、唯一評価の高かった作品。
第24回本格ミステリ大賞
第77回日本推理作家協会賞
第37回山本周五郎賞
トリプル受賞。
「令和元年の人生ゲーム」は、「あまりにリアル! あまりに面白い!」と、熱狂者続出中の問題作。
とまで紹介されていましたが…好みが分かれるのかもしれません。
「ツミデミック」は2024年7月17日に直木賞受賞作が発表になってから慌てて読みました。
第171回 直木賞受賞受賞 『ツミデミック』
6話を収めた短編集です。
今まで読んだ一穂ミチ作品の中では、『パラソルでパラシュート』や『光のとこにいてね』など長編が好きです。
今回の受賞は、この作品が、というのではなく、一穂ミチさんの作品がこれまでに何度も名だたる文学賞の候補作に挙がってきたので、実力を見込んでの受賞かな、と思いました。
あくまでも個人的な印象ですが。
ツミデミックは短編ですので、あまり深い話はないのですが、日常にありがちな風景の中に潜む罪の香り…が面白く、
ストリーテラーの一穂ミチさんの筆致で読まされました。
Amazon ★4.1 ★5=48% 2023年11月22日発売
大学を中退し、夜の街で客引きのバイトをしている優斗。ある日、バイト中に話しかけてきた女は、中学時代に死んだはずの同級生の名を名乗った。過去の記憶と目の前の女の話に戸惑う優斗は――「違う羽の鳥」
調理師の職を失った恭一は、家に籠もりがち。ある日、小一の息子・隼が遊びから帰ってくると、聖徳太子の描かれた旧一万円札を持っていた。近隣に住む老人からもらったという。翌 日、恭一は得意の澄まし汁を作って老人宅を訪れると――「特別縁故者」
渦中の人間の有様を描き取った、心震える全6話。引用元:光文社HP
パンデミック✕犯罪…ですと!
小説「宝石」2021年〜2023年に掲載された作品集です。
まさにパンデミック真っ只中でしたね。
違う羽の鳥
中学時代に踏切で亡くなったクラスメートを名乗って女が客引きをする優斗に声をかけてきました。
死んだはずの井上なぎさだと言う女性は、なぎさは生きている、という都市伝説をつくりたいようです。
中学時代、井上なぎさはTwitterで友達を探してたと言います。
自分の代わりに死んでくれる子、死にたくてしかたのない子を。
なぎさの母は毒親でずっと支配され続けて生きて、最期は遮断器をくぐった・・・
優斗の目の前の女は、死んだ井上なぎさ、が実は生きていた、というていで生きていますが、
優斗には、とうてい同一人物には思えなかった。
なぎさとは違う羽の鳥だったから…
ロマンス☆
百合の夫は全く妻子に興味を示さず、モラハラ気味。自分に甘く、人に厳しい。
ある日、百合は街で出前の「Meets Deli」のロゴのバックパックを背負った配達員に一目惚れ。
それからは、出前を頼めばカレが来てくれるのではないか、と毎日のようにガチャを回す気分でMeets Deliを頼んでいました。
カレは一度も来ず、takuyaという配達員がLINE IDと連絡くださいのメモを入れていました。
百合は、自分がガチャを引く感覚で、当たり=一目惚れしたカレがくるのを楽しみに出前を注文していました。
ある日、配達物を回収に薄くドアを開けた時、takuyaはドアに手をかけて…
やっちまったな。
憐光
私=唯は、どうやら自分は死んでしまっているらしい、と気づきます。
幽霊とは違うけれど誰にも見えず、話しかけても反応してもらえない。
自分の家の方に向かっていると、学生時代の友人のなぎさに出会いました。
彼女は全く気づいていないけれど‥。
駅のロータリーで、唯の担任の先生が車で迎えに来たのでなぎさと共に乗り込みました。
二人の会話から、なぜ唯が亡くなったか、どういう暮らしぶりだったかが語られて…
物言わぬ唯に苦しめられていたなぎさは自責の念から…(ry
特別縁故者
特別縁故者とは、亡くなった人(被相続人)に法定相続人がいない場合に、遺産の全部または一部を受け取ることができる人のことをいいます。
引用元:Search Labs
コロナ禍で飲食店を辞める羽目になった恭一。
調理師免許を持っているのに、ご時世でなかなか再就職が決まらず家でゴロゴロしていました。
小学生の息子のスーパーボールが跳ねて入ってしまった家で
一人暮らしのおじいさんにヤクルトをごちそうになり、肩もみをしたらお小遣いに聖徳太子の御札をもらった、と父・恭一に打ち明けました。
一人暮らしの金持ちそうな老人・佐竹。
これは取り入って、お世話をしていれば「特別縁故者」になって遺産が転がり込むかも??
浅ましい考えの恭一だったが…人格者の佐竹の手紙にラストはほっこりいいお話^^
祝福の歌
「出産」にまつわるお話。
子どもができたから生みたい、の一点張りの達郎の娘、菜花。相手は高校の同級生。
実家の隣の若夫婦の様子がおかしい。
奥さんはお腹が大きかったのに、いつまでも赤ちゃんがいる風もない。
マンション内で噂され、顔色も悪くなっていくお隣さん。
実は、ウクライナの女性に受精卵を託したが戦争で子どもは渡せない、と言われてしまって…。
達郎の実家の母が階段から落ちて救急車で運ばれました。
散らばった荷物をまとめていた時にみつかったのは献血カード。
母はAB、逹瑯はO、今頃わかった本当のお母さんではないこと。
切なくてキュンとなる罪は関係のない物語でした。
さざなみドライブ
ネット上で知り合った自殺志願者がリーダーの車で目的の広場まで向かいます。
車中での会話からそれぞれの悩みやここに集まった動機などが見えてきます。
短い時間ながら、仲間意識が芽生えていく志願者たち。
広場には、すでに目張りされた車が一台停まっていて、延期を決めました。
リーダーの毛利が用意してあった、青いバタフライピーのお茶を皆にふるまうのですが…
みんな苦しい日常に戻っていくけれど…爽やかな読後感。
さざなみドライブが6編の中で一番希望の持てるお話で好みでした。
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