⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

呉勝浩著「スワン」、ハラハラドキドキで一気読み~!

2020年 最後に読んだ一冊は吉川英治文学新人賞受賞作「スワン」

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第73回日本推理作家協会賞 受賞作
第41回吉川英治文学新人賞 受賞作
第162回直木三十五賞 候補作

 

面白くないわけがない!!

 

162回直木賞受賞作「熱源」を読んだ時に、他にどんな作品があったのか、と調べて、他の賞も受賞されている、「スワン」を読むことにしました。

テレビ、新聞など各メディアで取り上げられ、話題沸騰!
絶賛の声も続々届いています! とのこと。これは期待できそう!

 

『スワン』の本当の意味にたどり着いた時、あなたの心は震えるだろう。
――恩田 陸

作品の「構築性」と文章の「圧」に押し倒されてしまいました。
お見事です!
――有栖川有栖

巨大ショッピング・モールで起こった無差別殺傷事件を題材に、生き残った被害者の心の傷に真正面から向かい合った意欲作。
一気読み。
――佐々木譲

読者としては大喜びで、同業者としては歯軋りしながら読みました。
悔しい!
――芦沢 央

本の帯より

 作家先生が 歯ぎしりしてしまうほど面白いほんなのかしら?絶対読みたくなりますよね!?

 

あれ?それなのに。Amazonの評価は、★5~★1まで、きれいに分かれています。

こういう評価が分かれるのも珍しいですね。

 

ストーリーは、

巨大ショッピングモール「スワン」で起きた無差別銃撃事件。死者21名を出した悲劇の渦中で、高校生のいずみは犯人と接しながら生き延びた。しかし、同じく事件に遭遇した同級生・小梢により、次に誰を殺すか、いずみの指名によって犯行が行われたという事実が週刊誌で暴露される。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに招待状が届く。集められたのは事件に巻き込まれ、生き残った5人の関係者。目的は事件の中のひとつの「死」の真相をあきらかにすること。その日、本当に起こったこととはなんだったのか?

BOOK データベースより

タイトルの「スワン」は、事件現場と主人公のバレエにかけています

「スワン」と聞いて、鳥の白鳥を思い浮かべていたのですが、「スワン」という名前のショッピングセンターだったんですね。

 

「スワン」は、埼玉県湖名川市にある、ちょっとおしゃれな郊外型ショッピングセンター。

バレエ「白鳥の湖」をテーマにしたショッピングセンターで、白鳥広場と黒鳥広場があり、時間がくると四羽の白鳥のメロディが流れてくる…といった具合です。

 

このショッピングセンターで、無差別大量殺人が行われ、21人が亡くなりました。

その中には ショッピングセンターの経営者のお母さん、菊乃さん(老婦人)も。

 

最後まで犯人と接触していた主人公のいずみは高校生。

彼女は犯人の横にいたにも関わらず、生き延びました、そして友人の小梢は、右目を失うという結果に。

いずみに対する世間のバッシング、小梢からいずみに脅迫めいた言葉も…。

 

二人は同じバレエ教室に通っていて、ライバル。

学校では、小梢が女王で、いずみをのけものにしてマウントを取っていました。

バレエでは、いずみの方が上だったのだけれど、小梢も、猛追をかけてきた頃に二人は事件に遭遇してしまい…大きく運命の歯車が動き始めます。

 

ライバルの二人が犯人の目の前に居て、明暗が分かれたというのも、高校でもバレエ教室でも確執のある二人が生き残ったことも この物語に緊張感を与えていて、読まされました。

証言を集める「お茶会」とは。そして 集まった誰もが嘘をついている!

いずみの元に、手紙が届きました。

ショッピングセンターの経営者の母親が亡くなったことで当時の状況を知りたい、話を聞かせてほしい、と経営者が主催したお茶会の招待状。

出向くと、5人の生存者が集められていて、司会の弁護士から、日当やボーナスが出ること、嘘は減額対象になるが、偽名(仮名)を使っていいという条件のもと、それぞれが証言していきます。

 

無差別に買い物客を狙い殺戮した二人の犯人は最後に拳銃自殺してしまうので、犯人探しではないのですが、弁護士の問いかけに答える5人の態度が怪しくてw 嘘なんだろうと察しがつくのが面白いです。

いずみ自身、絶対に本当の事は言わない、言ったとしてもわかってもらえるわけがないから…と 嘘を突き通す決意で出席しています。

欠席してもいいのだけれど、お小遣いももらえるし、皆の反応も知りたくて出席していたのです。

ハラハラ、ドキドキのお茶会の証言

犯人二人は、ゴーグル型のウェアラブルカメラで、自分たちの犯行の様子を写していました。そしてそれは、ネットにUPされるように設定されていたため、多くの人が生々しい事件現場を知ることになったのです。

 

ネットや週刊誌でいずみや、ショッピングセンターの警備員らがバッシングの対象になりました。

 

途中で、犯人がゴーグルを外したため、事件の最後の部分の映像がないので、被害者の息子は真実を知りたかったようです。

 

弁護士の徳下は、犯人のカメラの映像と、館内の監視カメラの情報を熟知していてファイルを見ながら、みんなの証言を値踏みするように質問していくのが面白い…というか、ハラハラ・ドキドキです!

 

読まされます!そして、一気読み!!

 

ネタバレあります、未読の方ご注意ください

 

 

 

 

 

犯人のひとりは、5階のスカイラウンジで、その場に居た人を四つん這いにさせて…1人ずつ銃弾を撃ち込んで行くのですが…

誰を撃つかを、いずみに選ばせていたのです。

いずみは、自分が誰かを選んだことになるのがイヤで顔をそむけていたにも関わらず、犯人はいずみのちょっとした動きを理由に、撃つのです。

 

その場に、同級生の小梢もいました。

小梢は、母親とはぐれた小さい男の子を連れていて、彼女の隣の男の子が先に撃たれ、その後犯人は小梢に照準を合わせた時、亡くなった男の子を盾にしたのです。

 

皆、一発ずつ撃たれていたのに、男の子だけ2発撃たれていたのはそのためだったのです…

 

犯人が落とした銃には弾丸が残っていて…最後の一発で小梢は自分の頭を撃ち抜こうとした時 いずみがとっさに止めたため、弾はそれて、小梢は、一命をとりとめました。その代わりに、右目を失ってしまったのです。

 

この事実だけは、誰にも言わない、いずみはそう決めました。

 

犯人の間近にいながら、生還したいずみと小梢。

いずみは心に大きな傷を、小梢は、心と体に大きな傷を負いました。

 

でもいつか、と いずみは思うのでした、いつか 一緒に白鳥の湖を踊ろうよ、小梢!

 

スワンの経営者にお願いして、閉店後のショッピングセンターをいずみのために開けてもらいました。

誰もいないショッピングセンターの中央の通りを、トウシューズを履いたいずみが、おもうままにグランジュテをしながら進んでいきます、いつかその日を思いながら…。

 

面白いのに何故低い評価があるのか?

このお話の面白さは、手に汗握るお茶会にあると思うのですが、肝心のテロ事件が薄っぺらいこと=リアリティに欠けることや、ラストの数ページで一気にネタバラシで興ざめという意見も納得できます。

 

ひとことぐさりの感想「めんどくさい」には笑ってしまいました。

 

どの時点で誰がどこにいて、何をしていたか…事細かく書かれているけれど、嘘を付いているので本当かどうかもわからない。

信じて読み進めて 後であらら…となりそうで^^;

真剣に読むならメモを取って(刑事みたいw)整理しながら読まないと 事件の流れはわかりにくい。

 

とにかく、最後は、「白鳥の湖」を出してきて、美しく終わります。

 

直木賞の選考委員の方の評価は

「作りものという印象が拭いきれず、茶会と称する集まりの人間描写が、強いものを伝えてこないのである。」北方謙三

 

「被害者、目撃者、関係者などの話を組み立ててゆくという趣向は、いかにも作為的で、作者の計算からはみだしてくるものがないだけに、おもしろみがすくない。」宮城谷昌光

直木賞第162回選評の概要より

 …ということで受賞に至りませんでしたが、第73回日本推理作家協会賞 並びに第41回吉川英治文学新人賞 W受賞であるので、一読の価値ありです。

 

(読んだ時間を返せ、とおっしゃってる方もいらっしゃるので自己責任でおねがいします…^^;)