初めて読んだ瀬尾まいこさんの本は、本屋大賞を受賞した「そして、バトンは渡された」(2018年)でした。
ご自身の体験をもとに書かれた「夜明けのすべて」(2020年)も読み、じわ~と温かいものがこみ上げてくる作品だったので、図書館の書架にあった「僕の明日を照らして」(2010年)を借りてきました。
誰にも言わず、相談もせず、耐え続ける姿に…胸が痛い
隼太は中学2年生。
母が近所の神田歯科の先生・優ちゃんと再婚して、この春から名前が上村から神田に変わりました。
一緒に住み始めてみると優ちゃんは、イライラが募ると、隼太に激しい暴力をふるいます。
暴力を振るわれて、一瞬気を失っていた隼太が目覚めるところから始まります。
普段は優しいのに、優ちゃんはスイッチが入ると暴力が止まらなくなるのです。
隼太は中学2年生で、逃げることも、応戦することもできるのに、敢えて殴られ続けてます。
優ちゃん自身から、俺の暴力が始まったら逃げてくれ、とまで言われているのに殴られっぱなし。
もちろん、殴り返しなどしません、なぜなら…
優ちゃんが、自分が悪い、と出ていってしまったら困るから。
隼太の幼い頃、母は夜、スナックで働くために隼太を残して出かけていました。
ひとりぼっちで過ごす夜が怖くて、寂しくて…隼太のトラウマになっているのです。
だから、隼太は中学生になっても、夜はテレビや電気をつけっぱなしで寝ています。
夜、お母さん以外の誰か=優ちゃんがいて、家の中で一人じゃない、という安心感が心地よく、暴力より優ちゃんを失う事の方が怖い隼太でした。
暴力を振るわれてることを母に内緒にするのも、優ちゃん第一主義か?
暴力は嫌だ、だめだ、としっかり意志表示しない隼太にもやもや。
優ちゃんの怒りや暴力を鎮めるために、隼太は暴力について書かれた本を読み、「暴力日記」を付けて、傾向と対策を考え、
イライラ解消にはカルシウムが効く、と家庭科で習ったら、カルシウムの多いメニューを作ってあげようと、ひじきを煮る…中学2年生の男子がする??
健気な隼太に思わずエール。
…にしても。
歯科医院の院長までやってるいい大人の優ちゃんが、「無理だ」「謝るくらいならやらなきゃいいとは思ってるけど」って 隼太の寛大さや努力に甘えている事にイライラ。
全然救われない物語
隼太は、お母さんに悟られないように、と心を砕いていたのに、大掃除の日に捨てた「暴力日記」を見つけられて、優ちゃんの虐待がバレてしまいました。
お母さんは優ちゃんに言い放ちます、今すぐここから出てって、と。
子供を守る気持ちはわかるけど、なんの話し合いも、隼太の説明も聞かずに、それはない。
お母さんの行動も理解しかねます。
最後の最後に、すべてがパー。
今まで努力して、我慢してきた隼太の苦労が報われないのが本当に辛いです。
辛い思いをしても、苦労をしても、その先に、幸せな未来があればスッキリできるのに。
なんなの、この終わり方…とボーゼンw
モヤモヤしたものが解消しないままでさらにもやもや。
タイトルの「僕の明日を照らす」のは??
何だろ?