happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

篠原悠希著「親王殿下のパティシエール」楽しく読了♪

お友達が紹介してくださった本、「親王殿下のパティシエール」を読み終わりました。

 

篠原悠希さんという作家さんのお名前を聞くのは初めて、読むのも初めてでしたが…すごく面白かったです。

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 「親王殿下のパティシエール」には、「親王殿下のパティシエール(2)最強の皇女」、とサブタイトルのついた続編も今年の4月に出版されています。

最強の皇女とは…お菓子をバリバリ独り占めして食べて 見様見真似のバレエを踊った公主のことかしら?と思いながら、続編を読むのを楽しみにしています。

 

舞台も設定も興味深い!

ネタバレありますのでご注意ください。

 

舞台は、中国、時は、フランス革命の直後か・・・

なぜフランス革命が出てくるのか?

清の乾隆帝の皇子・永璘がフランスに外遊している際に 主人公である パティシエール見習いのマリー(瑪麗 本名は、マリー・フランシーヌ・趙・ブランシュ)とフランスで知り合いました。

ちょうどその頃 フランス革命が起きて、マリーは両親も婚約者も亡くして一人ぼっちになってしまいました。

マリーは、フランス人でパティシエの父と中国人の母との間に生まれたので、フランス人でも東洋的な顔立ちでした。

永璘は、お気に入りの菓子職人見習い・マリーを中国に連れ帰ったのでした。

 

慣れない異国で、母が中国人だったのでなんとか言葉は話せるものの マリーが連れて行かれたのは王族の台所・膳房、悪戦苦闘の日々が始まったのでした。

 

以前読んだ、ハルキ文庫(角川春樹事務所)の「みをつくし料理帖」に通う面白さが蘇りました。

 

お料理のシーンを読むのがとても楽しいのです。

当時の中国には牛乳もバターもアーモンドパウダーなどの材料はもちろん、お菓子を焼く型やオーブンなどもなく、マリーは、どうしたら現状で洋菓子を作れるのか、何を代用しようか、様々な工夫をして、みんなをあっと驚かせるのでした。

 

当時の泡立て器は木でできていたようです、メレンゲを作るのに汗が吹き出す、腕が痛い、というような表現が出てきますが、一体どんなお菓子作りだったのか・・・

 

想像しながら読むのが楽しい作品

200年以上も前の、清の厨房を想像する。

とても不自由な状況の中で洋菓子を作るプロセスを思い浮かべる。

清の皇帝、親王、皇后、貴妃らの装束、豪華な宮邸の内装なども、見てきたかのように描かれていて、映画やドラマで観た知識を総動員しながら読みすすめるのも楽しいです。

 

ハリーポッターを読むときのようなワクワク感がありました。

ハリーポッターは、情景を事細かに描写されているのでそのひとつひとつを頭に思い浮かべて映像化する、そんな脳内作業の楽しさを「親王殿下のパティシエール」でも味わうことができました。

 

痛快なことは・・・

厨房の皆が、畏れ多くて、拝顔も叶わない皇子と懇意になったマリーは、皆が「老爺」(ラオジェ=旦那様)と呼ぶのに、マリーは「リンロン」と呼ぶことを許されています。

「私の事をリンロン、と呼んでくれ」と言われたからなんです。

特別扱いしてもらって、皆の見る目が変わるシーンがあります。

永璘が、北の宮殿から帰還するとあって、使用人が到着の随分前から 凍てつく冬の道にひざまづいて待っていますと、ふと目の前に永璘が立っていました。

今しがた 馬に跨って通ったはずの永璘は、マリーがいる、と従者に聞いてわざわざ戻ってきたのでした。

そんな永璘に、寒くてこんなに手が冷たくなった、ほら、と永璘の頬に自分の手を当てたのでした。

なんという無礼を!と周りが息を呑む中 冷たい手にこれをはめなさい、と自分の毛皮の手袋をマリーにプレゼントしてくれたのでした。

時の皇帝の末子、もしかしたら次の皇帝になるかもしれない高貴な皇子に軽口を叩き、待たされたことに文句を垂れながら、その尊い頬を凍えた指で突っついた上に、邸に入れと急かした。万死に当たる無礼をひとつならず犯しながらも、叱責も懲罰も受けることなく、あろうことかご使用の手袋を賜るとは。

 周りの畏怖と羨望、そして驚愕の刺すような視線を避けるため

親王殿下のパティシエール 本文より引用

 マリーは永璘から下賜された革の手袋をはめた手で顔を覆ったのでした。

 

「前よりみすぼらしくなったな」の永璘の一言に、膳房長はふるえあがって、マリーに仕事着を新調してくれました。

 

大勢の前で、マリーは特別な存在、というのを知らしめた一件でした、

 

その後も、マリーのお菓子のおかげで、皆がよろこんで、賜り物があったり、いろんな人に笑顔をにするマリーのお菓子のお話が楽しくて、あっという間に読んでしまいました。

 

続編も早く読みたいです。

 

篠原悠希さんのチャイナファンタジー

2013年、「天涯の果て 波濤の彼方をゆく翼」で第4回野性時代フロンティア文学賞を受賞する(選考委員 : 池上永一、山本文緒)。同作を改題・改稿した『天涯の楽土』で小説家デビュー

篠原悠希 Wikipediaより引用

お名前は、お聞きしたことがないと思っていましたら、デビューされて10年も経っていないのですね。

 

それでも人気のシリーズをお持ちで、

金椛国(ジンファコク)春秋シリーズ、と言うそうです。

理不尽な運命に立ち向かう少年の中華ファンタジー!

とのこと。

なんと、少年は、小柄な事を生かして、女装して後宮に出仕!?

どうなるの??という興味津々と、苦難を乗り越えていく少年から目が離せないんでしょうね、シリーズも、8作を数えています。

 

  1. 後宮に星は宿る 金椛国春秋(2016年12月 角川文庫)
  2. 後宮に月は満ちる 金椛国春秋(2017年6月 角川文庫)
  3. 後宮に日輪は蝕す 金椛国春秋(2017年11月 角川文庫)
  4. 幻宮は漠野に誘う 金椛国春秋(2018年4月 角川文庫)
  5. 青春は探花を志す 金椛国春秋(2018年9月 角川文庫)
  6. 湖宮は黄砂に微睡む 金椛国春秋(2019年2月 角川文庫)
  7. 妖星は闇に瞬く 金椛国春秋(2019年7月 角川文庫)
  8. 鳳は北天に舞う 金椛国春秋(2020年1月 角川文庫)

 

篠原悠希さんのチャイナファンタジーを読んでたら、浅田次郎さんの「蒼穹の昴」に重なる部分もあり、懐かしく読んだ「親王殿下のパティシエール」でした。