スピンモンスターは 「シーソーモンスター」の本に収められています
先日「シーソーモンスター」の感想をUPしましたが 「シーソーモンスター」の本には シーソーモンスターとスピンモンスターの2編が収められています。
8人(正確には9人)の作家が 螺旋というテーマで 連作されてるのですが。
そのうちの2編を伊坂幸太郎さんが担当されました。
シーソーモンスターは、昭和のバブル期の話ですが スピンモンスターは時代が流れて 近未来の話です。
スピンモンスターには シーソーモンスターで登場した人物が 年を重ねた状態で登場します。いろいろと符号しているのを見つけるのも楽しいです。
更に いろんな作家さんが書かれた9編をすべて読むと 古代から未来へと面々とつながる 海族と山族の物語がつながっていくようです。
そのつながる感動を体験するのも面白そうですね。
スピンモンスター
シーソーモンスター、スピンモンスター、両方とも面白いのですが…私はスピンモンスターのほうが面白く感じました。
ものすごいジェットコースター小説 あれよあれよと言う間に 話がスピード展開で追いつくのに必死でした。
近未来、20年後。人々の暮らしはデジタル化が進んでいました。2023年に東京大停電で 重要な情報ほどデジタルからアナログへ メールから手紙へという流れになっていて 主人公の 水戸直正は 人に大事な文書を手渡しする仕事をしていました。
北に向かう新幹線の中で隣席の見知らぬ男からこれを渡して欲しい と封筒を受け取るのですが 住所も宛先も書かれておらず 手紙の中のヒントを頼りに 仙台 青葉城へと向かいました。
そこに、なんと手紙の届け先である 中尊寺敦が手紙に書かれていた「約束」どおりに来ていて…
そこから ラストまで一気に駆け抜ける~
シーソーモンスターでは 登場人物の宮子さんが絵本作家になったところで終わりましたが 年を経て老女として登場します、元スパイという過去があるだけに 活躍ぶりは相変わらずです^^
直正は、小学生のころ 自動車事故で肉親を失い ただ一人生き残った子供でした。実は事故の相手側も同い年の小学生一人(檜山景虎)が生き残り 衝突により家族を失っていました。
不幸にも2人は高校で同じ学校に通うことになるのですが それが この小説プロジェクト「螺旋」のテーマである 相容れない 海族と山族の物語になっています。
海族と山族は、避けていても 出会い ぶつかってしまう、そんな星の下にあるようです。
「一人一人の気持ちだとか 目先の社会のことを考えれば、争いは悪いことかもしれない」檜山景虎は言った。「ただ違う次元の話なら、争いは無くてはならないものだ。 中略 「ぶつかり合わなければ何も起きない。衝突が変化を起こして、新しいものを生み出す。星だって、そうだ。」
そうやって 海族と山族はずっと争ってきたようです、太古の昔から…
AIが発達した世の中で AIが人間より賢くなって行くことに疑問を感じ 研究を止めた中尊寺敦。手紙には AIの暴走を止める自己破壊のプログラムのありかへのヒントが隠されていたのです。
それを発見した直後 警察に踏み込まれて大切なパソコンは破壊されてしまいますが 直正の目に眼内カメラが内蔵されているとわかった中尊寺は 直正の目に映ったプログラムのコードを取り出すことを思いつき…
スピンドクター、と言う言葉が出てきます、それでタイトルがスピンモンスターなのでしょう。
スピンドクター spin doctor. 簡単に言うなら、「情報操作」のプロフェッショナル。 良くも悪くも「情報」の印象を変え、善でも悪でも正当化し、狙った方向に世論を誘導する技術に長けた人のこと。
言語辞典より引用
…だそうで、この作中にも 嘘のニュースが流れている!と焦る場面があります。事実があるからニュースになるのではなく、ニュースを流して事実があるように見せかけることもある、というのです。
何を信じていいのかわからなくなりますが。
20年後の東京で 嘘のニュースがまことしやかに流れ 首謀者が中尊寺だ、とされて逃げ回る羽目になるのですが…
説明しにくいからぜひ読んでください! ^^;
将来はこんな世の中になっているのか。と想像しながら読むのも面白いし 逃げても逃げても追ってくる警察(その中に 警察官になった山族の檜山景虎もいて)との攻防も手に汗握る展開で ページを繰る手が止まりません。
螺旋プロジェクトの 他の作家さんの作品にも興味が湧きました。