happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

寺地はるな著「水を縫う」|ゆるくつながる家族…温かい気持ちになれました

【第9回河合隼雄物語賞受賞作品】Amazonのおすすめ図書に度々出てくるので、図書館で予約していました。

 

少し生きづらさを抱えた家族がゆるやかに繋がって、温かい気持ちにさせてくれる本です。

6章からなり、それぞれの家族の物語が描かれています

第一章 みなも         高校1年生 松岡清澄の物語

第二章 傘のしたで       清澄の姉・水青(みお)の物語

第三章 愛の泉         清澄の母・さつ子の物語 

第四章 プールサイドの犬    清澄の祖母・文枝の物語

第五章 しずかな湖畔の     松岡家に養育費を届けてくれる父の雇い主

第六章 流れる水は淀まない   清澄の父・全の物語

 

⚠ネタバレあります、ご注意ください。

 

 

 

 

ざっくり書いてしまいます、あらすじと感想…

松岡清澄は、男子の好む趣味ではない、「刺繍」「縫い物」が趣味。

高1の入学後のHRの自己紹介で、「手芸部」に入るかも、と宣言すると、教室内に微妙な空気が流れました。

 

女子力高い系男子、と言われながらもいじめられることもないのがよかった・・・

早くバイトをしてお金を貯めて、遊ぶお金がほしいのでもなく、ゲームソフトを買いたいのでもなく、たくさん糸や布を買いたい、という清隆でした。

 

姉の水青は、高校時代に何度も痴漢の被害にあい、一度はスカートを切られたことも。

それ以来、可愛いもの(リボンやフリルなど)、極力避けている、というより憎んでいるとすら思わせる言動をとっています。

可愛い格好をすると、また痴漢に狙われるとでも思っているようです。

 

そんな水青が結婚することになりました。

レンタルのウェディングドレスは、華やかでキレイ、可愛いものばかり(当たり前)。

かわいいドレスを着たくない水青のドレスはボクが作る、と言い出した清澄。

何度も清澄のデザインにダメ出しをする水青に、婚約者の紺野さんは、

伝える努力をしてないくせに「わかってくれない」なんて文句言うのは違うと思うで。

と諭してくれました。

 

可愛いのが悪いのではない、人のスカートを切る人間が悪いのだ、それなのに、自分に非があるように思って「可愛い」を避けてきた水青。

あの時、悪いものはスカートを切った人間であり、かわいい服を着ていた水青ではない、そのことを強く言うべきだった、と悟ったのでした。

紺野さん、いい人♪

 

清澄の母・さつ子は、清澄が1歳の時に父と離婚しています。

子供がそのまま大人になったようなマイペースな人で、全く父親の自覚のない人。

清澄は姉の水青、母、祖母の四人暮らしで、母が市役所に務めて生計を立てていました。

 

うちの息子の趣味は「手芸」なんやで、と言ったらどう思われるだろうか。

子供たちが失敗しないように、悪目立ちしないように、「普通」を求め、

先回りしてダメ出しをするさつ子に、祖母の文枝は

「思い通りに育たへんかったら、失敗ってこと?」と突っ込まれます。

 

好きなものがあれば生きていける、という母に、それだけでは食べていけない、と反論するさつ子。

何故、さつ子に 清澄が食べていけないってわかるのか、と質す文枝。

 

他人から見たら失敗だとしても、楽しいこと、嬉しいことがあって、今がむしゃらでも生きていればいいじゃないか。

 

ふと、相田みつをさんの「しあわせはいつもじぶんのこころがきめる」というフレーズを思い出しました。

 

4章の「プールサイドの犬」とは、DOGではなくて、文枝のことです。

家族みんなで、流れるプールのある市民プールに行った時、泳ぐのが大好きな文枝も一緒に。

その時、夫が「若くもない女が水着を着るのはみっともないからやめときなさい」と止めました。

プールサイドで忠犬のようにじっと待っていた文枝を「犬みたい」と笑った夫。

 

自分の意思を、相手の言葉に従って曲げてしまうと、後々まで恨みや後悔が募ります。

結果的に、プールに入らないことになっても、一度は、自分の意見を相手に伝えるべきだと思いました。

一旦心の中に芽生えた思いが、どこにも発することができなかったら…

そのまま、胸の内で発酵して、ドロドロになって澱のように溜まっていくだけですものね。

 

もし、「私も泳ぎたいの!」と主張してみたら、「みっともなくても、これが私の身体よ」と開き直れたら、楽になれたのに。

文枝世代の人たちにはハードル高いのかな?

いえいえ、どんな世代にも、性格的に言えない方もいらっしゃるでしょうけど。

澱を溜め込んで病気になるぐらいなら…(ry

 

「しずかな湖畔の」森の影から、もう起きちゃいかがと鳴くよ、カッコー♪

さつ子の夫で、清澄、水青の父、松岡全が払うべき養育費を届けてくれるのが、父の同級生の黒田でした。

しずかな湖畔~♪は、彼がよく吹いている口笛のメロディ。

黒田は、結婚もせず一人暮らしですが、幼い頃から、全の2人の子供の成長を見守っていて、我が子のように思っています。

 

松岡一家の家族の物語ですが、他人である黒田さんがとてもいい働きをしていてじんわりと心が温かくなりました。

 

最終章は、清澄と水青、命名の思い。

流れる水は淀まない。

流れる水はけっして淀まない。常に動き続けている。だから澄んでいる。〈中略〉これから生きていくあいだにたくさん泣いて傷つくんやろうし、悔しい思いをしたり、恥をかくこともあるだろうけど、それでも動き続けてほしい。

流れる水であってください。お父さんからは以上です。

水を縫う P223 より抜粋

 

姉のウェディングドレスの素材は、ガーゼに決まりました。

ふわふわで赤ちゃんをくるむような優しい手触りで光沢のない自然な素材。

 

デザイン専門学校を出た父と、同じ学校の同級生の黒田、黒田の縫製工場の人たちが、あっという間に水青の意図を汲んで、斬新なウェディングドレスを作ってくれました。

 

清澄は、そのドレスに得意の刺繍をほどこすことにしました。

 

白いガーゼに白や銀糸で刺すのは、水の流れ。

試着した姉がくるりと回ると、裾が翻って銀糸がキラッと光り、清澄のまぶたが熱い…

 

姉のドレスを見に来たのか、玄関のチャイムが鳴ります。

そっとドアを開けたら、暖かい日差しと共に入ってきたのは…?

 

 

世の中にあるいろんな家庭の、とある一家のお話。

少しずつ足りない物があったり、生きづらさを抱えていても、ゆるりとした関係でつながっている「家族」がいい感じです。

 

私達、なかよし家族です、ドヤ!ではない自然体の中に流れる温かさがちょうどいい感じ。

 

大阪弁のくすっと笑える会話もよかったです^^

 

寺地はるなさんの著作、他の作品も読んでみたくなりました。