おひさしぶりの更新です。🙇🏻♀️
前回の更新が、森沢明夫 著『桜が散っても』の感想で7月19日でした。
あれから3ヶ月放置、申し訳ないです。
遠田潤子さんの『銀花の蔵』を読んだのは、6月2日、パリ行きの飛行機の中。
やっと、やっとの感想文。
図書館に返却前に、ざっくり2度目、読み直して要点を書きとめたメモを見ながら書いていきますね。
『銀花の蔵』を読もうと思ったのは第163回直木賞候補作だから。
タイトルからして、宮尾登美子さんの『蔵』のような物語なのかな、と思っていたら、作者も…
「私の母の実家が能登の山深いところにあり、小さな蔵もあるような田舎だったので、蔵にはノスタルジーを感じます。宮尾登美子さんの『藏』という作品が好きでしたし、蔵モノをいつか書いてみたいと思っていました」
引用元:本の話
朝の連続テレビ小説(通称朝ドラ)を観ているかのような女の一代記。
たっぷりと読まされました。
主人公の銀花の重荷を一緒に背負ったかのような苦しい思いをしながら読みました。

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55年前の万博の頃の大阪と奈良が舞台
今年、2025年大阪・関西万博が開催され、好評のうちに幕を下ろしました。
『銀花の蔵』でも、
ちょうど1970年の大阪万博が開かれようかという時代の大阪から、父が実家の醤油蔵を継ぐ、と奈良へ移り住み…
私は、この醤油蔵の当主になる! 大阪万博前夜。父の実家である奈良の由緒ある醤油蔵で暮らすことになった少女、銀花。蔵を切り盛りする祖母の多鶴子ら一家に馴染もうとするが、母の盗癖、祖母と父の不仲、自らの出生に関する真実に悩む。やがて成長し蔵を継ぐため奮闘する銀花は、一族の秘められた過去を知ることに――。家業に身を捧げ、新たな家族を築く女性の半生を力強く描く長編小説。
引用元:新潮社HP
⚠️ネタバレありますご注意ください
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銀花は、万博に沸く大阪で
優しい父と、いつまでも少女のような可愛くて料理上手の母との3人ぐらし。
父は絵描きになりたくて、実家の跡継ぎを拒んで家を出ていたけれど、祖父が亡くなり、蔵を継ぐべく奈良の実家へと一家で戻ることになりました。
これでもか、これでもかと襲いかかる苦しいできごと
父の実家には、厳格な祖母がいて旧家の主である誇り、醤油蔵を守り抜くという信念を持つ、大変厳しい人。
銀花にとって祖母に当たるのに、優しい言葉ひとつかけてくれません。
実家には、父の年の離れた妹がいて、叔母にあたるものの銀花と一つしか歳が違わないため、小学校も同じ。
美人で高慢な少女でとても嫌味な子でした。
父は、いやいや戻ってきたため醤油づくりに身が入らずいまだに絵で食べていくことを考えています。
母は(そういう病気らしいが)欲しくもないのに盗んでしまう盗癖があり、銀花の友人のキーホルダーも盗んでいました。
銀花が盗んだ、と友人から除け者にされても、母は醤油蔵の若奥さん、お母さんが盗んだ、とは言えず悶々とする銀花でした。
父はある日、蔵のベテラン杜氏と川の畔で水死体で見つかりました。
自殺なのか事故なのかわからないまま、事故で収束。
銀花の唯一の心の拠り所だった父が亡くなってしまった…
そしてまた、杜氏の息子で銀花より一つ年下の剛も父を亡くし、グレて暴走族の下っ端に。
銀花の母が万引きをした時に、暴走族の勝が恐喝しようとするのを剛が突き飛ばして庇ってくれました。
勝は転倒して頭の打ち所が悪くて亡くなってしまいます。
剛は少年院送りになりました。
母を庇ってくれた剛に申し訳ない、謝りたい銀花。
自分の都合が悪くなると泣いてばかりで何も言わない母が憎くてたまらない銀花でした。
母の美乃里は、頭もお花畑、心も少女のようで、ふわふわした人。
ずっと父に守られて、全肯定してもらってペットのような存在でした。
読んでいてイライラします(笑)
読者も、銀花に感情移入するととてもしんどいです。
銀花は気丈に振る舞ってひとつひとつ困難を乗り越えていきます。
高校卒業と同時に祖母と二人で醤油づくりを始めました。
前半だけでも、次から次へと襲いかかる苦しい出来事。
遠田潤子さんの作品は家族関係に苦しむ主人公が描かれる
遠田潤子さんは
「田舎の古い伝統や人間関係、家族関係に苦しむ人々を書いてきました。私の小説の大事なモチーフのひとつです」
とおっしゃっています。
物語の中盤、山尾家は血縁関係が複雑であることが明かされる。銀花はその事実に衝撃を受けるが、家族のかたちは“血縁”だけが正解ではないということにも気づいていく。
引用元:本の話
銀花は大好きな父の子ではなく、母は誰が父かもわからない子を産んだのでした。
その子に銀花という名を与えてくれたのが父。
父の実家、山尾家でも婚外子を作るなどして人間関係が複雑です。
父の妹は、厳格な祖母の不倫相手の子でした…
蔵改装の際に蔵の床下からでてきたのは…😱
と、後半の展開が慌ただしいです。
銀花は気丈に我道をゆく!
どんな困難も明るく気丈に乗り越えていく銀花に肩入れして応援したくなります。
1歳違いの叔母の桜子がぷいと出ていったかと思うと、双子を産んで幼児を連れて戻って来ました。
嫌な予感…
案の定、子供の面倒を見てほしいというお願い。
桜子に子育てさせては子どもたちが可愛そう、と引き取って育てる銀花。
銀花の横には、あの人殺し、と呼ばれた剛が刑を終えて戻って来ていました。
剛の居場所を突き止め、剛のアパートへ通って結婚してほしい、と頼む銀花。
剛が世間から誹謗中傷を浴びることも覚悟での結婚。
銀花と剛は、血の繋がらない桜子の双子を我が子として育てる覚悟もします。
ジェットコースターのようにノンストップで次々に試練が訪れた銀花の人生。
双子も大人になって、それぞれの家庭を持つようになったときには銀花ももう60の齢を超えていました。
ずっと座敷わらしの柿だから食べてはいけない、と言われていた山尾家の庭の柿は、立派な山尾家の杜氏になった剛が食べることを許しました。
ふぅ〜〜、遠田潤子さんの濃厚なストーリー、堪能いたしましたっ!
以前読んだ『イオカステの揺籃』も読むのが辛い小説でした。
遠田潤子さんの作品を手に取るときには、相当の覚悟を持って読み始めなければならないな、と思った次第…。
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