本屋大賞2023 11位の作品、宇野碧著『レペゼン母』
Amazon★4.4 ★5=67 2022年8月10日発売
本屋大賞2023(2023年4月12日発表)10位の『#真相をお話します』が、個人的感想ですが、展開が想像つくような短編集で、これが10位???とかなり疑問でした。
2023年の本屋大賞20位までの作品の出版社は、
講談社5作、集英社3作、文藝春秋社2作、双葉社2作、ポプラ社2作、中央公論社2作、
その他4社が各1作ずつです。
本屋大賞は、書店員が選ぶ賞。
もし、『レペゼン母』(講談社刊)も10位入選したら、講談社の本が6作入選で偏ってしまいます。
2次で新潮社刊の『#真相をお話しします』に多めに投票したのか、と勘ぐってしまうぐらい、作品の出来は圧倒的に レペゼン母 > #真相をお話しします
あくまでも個人的好みですが。
10位 #真相をお話しします ★3.7 ★5=37% ★1〜3計 39%
11位 レペゼン母 ★4.4 ★5=67% ★1〜3計 16%
ほら、レペゼン母、圧勝やん。
『レペゼン母』は第16回小説現代長編新人賞も受賞しています。
これが答えかな、と私は思っています。
2021年の本屋大賞でも…
10位 深緑野分著 『この本を盗む者は』 ★3.9 ★5=39%
11位 藤岡陽子 著 『きのうのオレンジ』 ★4.2 ★5=53%
今年3月に読んだ11位の『きのうのオレンジ』が大感動作でしたから、本屋大賞10位まで、にこだわることなく読もう、と思いました。
前置きが長くなりましたが、レペゼン母…
レペゼンって何? 意味が浸透してないのがもったいない
「レペゼン」って言葉の意味、すぐに分かる方は何割ぐらい?
ラップを聴いてらっしゃる方はご存知かもですが、レペゼンってラッパーがよく使う言葉なんですって。
レペゼンのスペルは、represent、〜代表する、という意味があるそう。
日本代表、だと、represent Japan、 のように使うらしい。
レペゼン母の意味は、母代表ということですね。
主人公・明子は、represent 母。お母さん代表〜!! 納得です。
「レペゼン」という言葉がもっと社会に浸透していたら、読んでみよう、と思われた方も多かったかも?
えっ? 私が知らなかっただけ??
読みやすい文章、脳内でドラマが動く読んでて楽しい作品
1日で読める作品です。
一旦置いても、早く続きを読みたくなる本。
マイクを握れ、わが子と戦え!
山間の町で穏やかに暮らす深見明子。
女手一つで育て上げた一人息子の雄大は、二度の離婚に借金まみれ。
そんな時、偶然にも雄大がラップバトルの大会に出場することを知った明子。
「きっとこれが、人生最後のチャンスだ」
明子はマイクを握り立ち上がる――!引用元:講談社HP
どんな親でも、子供は幸せになって欲しい、と思うもの。
だからこそ、ちょっと煙たがられようが、誤った道に進まないように、良かれと思って口やかましく言ってしまいます。
人生経験の長い親が忠告したり、お説教をしたりするのはよくあることですが…。
子供にとっては親から「言われるだけ」ではなく
子供として親に言いたいこともあるわけで、そこをうまくキャッチボールできないとどんどん溝が深まっていきます。
和歌山の梅農家を一人で切り盛りする明子が主人公。
夫は早くに亡くなり、女手ひとつで息子の雄大を育てています。
だからこそ、余計に気合が入ってしまったのはあるのかな。
雄大は子供の頃から明子を悩ませていました。
高校生の分際で女友達を妊娠出産させ、ままごとのような結婚生活が始まったと思ったら突如家出、行方不明。
借金の督促のみが母のもとに届く、と言った状態。
2度目の結婚は駆け落ちするも3年で離婚、
3度目の結婚は奥さんを置いて行方不明の上、今度は警察から大麻所持で逮捕された、と電話が…orz
そんな雄大はもう35歳。
大器晩成、と慰められてもなぁ…と。
犯罪者にはなってほしくない、世間に迷惑をかけてほしくない…そう思って育てているのに…
どんな犯罪者にもお母さんはいます。
何度も借金を肩代わりし、今度は釈放金を出せ、と言う雄大に呆れ、刑務所に入って反省してろ、
もう、尻拭いはうんざりよ、と突き放そうとしたそのとき、
「ラップバトルの大会があるんだ」と、香川代表なんだ、保釈金払ってくださいお願いしますと真剣に頼まれました。
きらり〜〜ん★ 明子は、ひらめきました、雄大とラップ対決する!
そして、思いの丈を雄大にぶつけてやる!!
ラップバトルは、相手の言葉を聞いて、即座に反論を返す、トークバトル。
今まで明子の言葉に聞く耳を持たなかった雄大ですが、ステージの上なら、
相手の言葉を聞くしかない、そしてそれに対してどんな返しをするのか聞いてみたい…
ラップって、思いの丈をリズムに乗せて語っているだけだと思っていたのですが、
ラップバトルでは
相手に対しての「返し」のキレがポイントなんですね(アンサー)。
瞬時にどこを切り取って、韻を踏んで、リズムに乗のって返せるか(フロウ)。
客席を味方につけるような、雰囲気を支配する言葉を繰り出せるか(バイブス)。
そして決め台詞(パンチライン)が利いているか。
すごく頭の回転が早くないと平凡に終わるし、下手したら詰まってしまいます。
ラップって奥が深いわ〜♪ 初めて知りました。
親の思い、子の思いが随所に織り込まれています
子育てって…結果?が出るまでに時間がかかります。
人生、最後の最後に大成功するかもわからないし、何が起きるか、子どもを信じるしかないのです。
ノーベル賞を取らなくても、オリンピックにでなくても、総理大臣にならなくていい。
幸せでいてほしい、ただそれだけなんだけど、いろいろ欲もでます。
思い通りにはなりません。
子どもや孫の自慢大会やってるグループは、子供の頃は学業成績、その後は進学した大学のレベル、次は就職先、結婚相手、孫の学業成績…ときりがない。
マウント取ったり、比較して自己満足なのはわかりますが、
子ども(孫)が幸せかどうかが一番のポイントなのにね。
子育ては楽しいことばかりではなく、悩ましく苦しいこと、辛いことも多々ありますが、大人になって一緒に笑いあえたら、これほど楽しいことはない。
著者の宇野碧さんは、登場人物に、親の気持ち、子どもの気持ちを代弁させています。
沙羅は親になりたくない、と言います。
「親って鈍感な生き物。自分の言動が子どもにどんな消えないインパクトを与えるかわかろうとしない。」(出典:『レペゼン母』 P171)
特に明子に言わせているセリフは「パンチライン」が利いています。
そうそう! あるある!!
胸の溜飲が下がる!
そんなセリフが多数!
だから明子は、レペゼン母(母代表)!!
ラップバトルでやっと息子の雄大も今まで言えなかった思いを明子にぶつけて来て…
そんな思いをしていたのか、と初めて知った明子。
自分が親としての思いを一方的に息子に押し付けてきたことを反省したのでした。
温かく、希望の持てるラスト
夫に先立たれてから、がむしゃらに梅農園を切り盛りし、一人息子を育ててきた明子。
ラップバトルで優勝した雄大は
ようやくやりたいことを見つけ、母に借金を返そうと頑張っています。
もう大丈夫。
ずっと農園を手伝ってくれていた雄大の3人目の妻の沙羅に農園の会社の経営権を譲りました。
明子のラップの師匠でもある沙羅は、農園の傍ら、ラップ教室を開きました。
明子の梅農園で働きたい、と訪れた一人の少年は…
最後に明るい未来が見えてよかった…じわ〜と温かいものが胸にひろがるいい作品でした。
もう本屋大賞の順位を鵜呑みにしない
本屋大賞を中心に読んでいましたが、書店員が売りたい本であって、物書きが選んだ感動作、名作というわけではないのだな、と今頃気付いた次第 ^^;
個人の好みも左右しますが、
せっかく時間をかけて読むのだから、「本屋大賞」を鵜呑みではなく、自分がどんな本を選ぶか、しっかり情報収集しなくては。
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