家族に恵まれない子どもたち…読むのが辛い場面もありました
Amazon評価 ★4.6
Amazonのサイトを見ていると、おすすめで出ていてアマゾンの評価が高いので借りてみました。
本の帯には・・・
育てられない。
生きてゆけない。
深い覚悟が命をつなぐ
それは、血のつながりより深い愛
真面目な女子高生、美優は予期しない妊娠をしてしまう。堕胎するには遅すぎると、福祉の手によって奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」に預けられる。そこには、明良と華南子という兄妹が、深刻な事情を抱えた子どもたちの里親となって、高齢の母、類子と暮らしていた。貧困、未婚、虐待、難しい背景をもつ里子たちを慈しんで育てる彼らにも、運命に翻弄され絶望を乗り超えた苦しい過去があった。光文社HPより
⚠️以下、ネタバレあります、ご注意ください
第一章 夜の踊り場
高校生の優美が同級生の子供を妊娠しました。
親から責められ、当然お腹の子供の父=高校2年の男子は知らんぷり。
家を出て繁華街をうろついているところを千沙という女性に助けられ、
奥多摩にあるグリーンゲイブルズという共同生活をしている施設を紹介されます。
そこには、家族問題で親と一緒に暮らせない子どもたちが共同生活をしていました。
グリーンゲイブルズには、明良という男性と華南子という女性、華南子の母親の類子がいて…子どもたちの面倒を見ています。
物語のベースになる章。
続く3章で、明良、華南子、類子の人生が語られていきます。
第二章 夜叉を背負って
一番読むのが辛かった章。
第一章で登場した千沙、井川明良の生い立ちが綴られています。
高校生の明良は両親が離婚し、母親が再婚したため父に引き取られましたが、父親は、学費などの面倒は見てくれますが、お気に入りの女性のところに入り浸っている状態。
隣に住む指物職人が、見かねて明良の面倒を見てくれて、救われました。
千沙はひとり親家庭で、母親はネグレクト気味。
家に出入りする男が千沙を被写体に児童ボルノを撮っていて、まだ小学生なのに、背中に夜叉の入れ墨まで彫られていました。ひどすぎます…
散切り頭に、体に合わない汚れた服を着て夜の街をふらついていた千沙。
放課後は夜の街で生きていた明良と千沙が出会いました。
自分が他人に救ってもらったように、自分はなんとしても千沙を守る、と決意して
…ある日事件が起こります。
第三章 ただ一つの恋
第一章で登場した、明良と華南子の出会い、華南子と母親・類子の真実。
⚠️重要なネタバレあります、以下自己責任でお読みください
グリーン・ゲイブルズを切り盛りする華南子と明良、類子の娘・華南子と明良…数奇な運命の物語。
第三章が、一番読まされました。
華南子が学生時代に恋をしたのが井川明良でした。
なかなか、自分のことを話さない、彼でしたが、知れば知るほど、惹かれていく華南子は、結婚する、と決め、デザイナーとして成功していた母・類子に紹介します。
明良の母親と義理の妹が、成城の類子・華南子に挨拶に来ました。
母親は明良の子供の頃の家族写真を持参していて、明良の父・裕一郎の腕には、彼の母親の名前「アイリーン」とリボンのタトゥーが彫られているのがわかりました。
その写真を見て、華南子の母・類子は席を立ってしまいました。
類子は結婚に猛反対、そのわけは…
母・類子は、華南子を体外受精で授かったのでした。
類子は、精子バンクに登録していたドナーと一度だけ会った、それが、明良の父親だった、つまり2人は兄妹。
深く深く愛しているのに、絶対結ばれない運命。
なんという絶望感。
国籍や身分で結婚を反対されるというのは昔からありましたが、兄妹で結婚は禁じられています。
子供を育てることを夢見ていた2人に立ちはだかった予想もしなかった壁。
まさかの展開!
このようなことが起きる確率はものすごく低いですがゼロではないですよね…
優美が初めてグリーン・ゲイブルズに行った時に、華南子と明良を見て、兄妹でありながら夫婦のようだ、と感じたのも、こういう背景があったからなんですね…
第四章 月の光の届く距離
優美は、両親や、お腹の子供の父親に対して、一人で産んで育てる!と意地をはっていましたが、
17歳の自分の元に生まれてきた子供は幸せだろうか?
子供が欲しくて、不妊治療しても出来なかった愛情深い夫婦に育ててもらったほうが幸せなのではないか?
本当に子供の幸せを考えたら、未熟で経済力のない自分より養子に出した方がいい、そう思うようになりました。
周りの勧めで、特別養子縁組を決意した優美 華南子。(2022.10.10 訂正)
グリーン・ゲイブルズには、本当の家族から離れて暮らしている子供たちがいて、みんな幸せに暮らしています。
遺伝的につながっているだけが家族じゃない、一緒に暮らしているだけでも家族じゃない。
お互いが家族と認めあって、信頼関係が成立していて初めて家族になるんだな、と思います。
優美の子供は、北陸の家族に引き取られることになりました。
自分の手元から離れてしまうけれど、同じ月の光の届く距離で我が子が生きている、そう思うと、月を見上げるたびに、我が子を思うだろう…優美は、決断したことで、人生の新たな一歩を踏み出そうとしていました。
優美も、生まれてくる赤ちゃんも幸せであってほしい、と祈らずにはいられないラスト。
特別養子縁組のお話は、辻村深月著『朝が来る』が、詳しいです。
映画にもなってますね^^
子供が犠牲になる痛ましい事件や事例をニュースで見るにつけ、胸が締め付けられる思いでした。
一人では生きていけない赤ちゃんでも、一人の将来ある人間です。
みんなが幸せに育って欲しいと願わずにはいられません。
重いテーマで読むのにすごく時間がかかりました。
ふー