上演作品の原作は押さえておきたい、ということで
有栖川有栖著「幽霊刑事」を読んでみました。
4月のランチの予定がことごとくキャンセルになり、「はいからさんが通る」や「壮麗帝」、「ピガール狂騒曲」の宝塚観劇予定も白紙になり がっかりですが #おうち時間 が増えまして 読書時間に余裕があるのが嬉しいです。
というのも、この本、手にとって思ったのが… ぶ、分厚い…読みきれるかしら? でした。
が、読み始めると、面白くって、すいすい、先が気になって 602ページ、あっという間に読み終わりました。
幽霊となった 主人公・神崎の言動が面白く、幽霊になったら?と想像しながら読むのが楽しく、ミステリーの要素も相まって楽しめました。恋愛要素は…すごく薄いです。
主人公が「幽霊」である、という設定が話を面白くしています
夜の浜辺。刑事の俺は上司の経堂に呼び出され射殺。結婚を間近に控え成仏できず幽霊となった。誰も、恋人すら俺の姿が見えない。霊媒体質の後輩・早川刑事を除いては。彼の力を借り真相を探るうち経堂が密室で殺された。俺を謀殺した黒幕が他にいる!(表題作)他に早川刑事のスピンオフ作「幻の娘」を収録。恋愛と本格ミステリが融合した傑作。
「BOOK」データベースより
「お前はもう死んでいる」by北斗の拳。
ネタバレあります、ご注意ください。
ミステリーって、犯人探しをするのが多いと思うのですが、この本は、主人公が…お前はもう死んでいる状態w
主人公・神崎の魂がこの世に戻ってくるところから始まります。
神崎を殺した犯人も 冒頭で読者に分かります。
主人公・神崎達也は警察官で、上司である経堂課長に 誰も居ない夜の浜辺に呼び出され、拳銃で胸を撃たれ亡くなりました。
事もあろうか、警察官が警察官に撃ち殺された、その真実を伝えたいのに、幽霊になってしまっているので、誰にも伝えられず悔しい思いが神崎の魂をこの世に留まらせたようです。
幽霊は、姿はそのままで、半透明でキラキラと発光している、という設定です^^
自分の職場(巴東署)に行ってみると… もちろん誰も気づきませんが、後輩の早川刑事だけには 神崎が見えて、会話もできました。早川刑事の実家は、青森恐山の口寄せをするイタコの家系で、霊媒体質だったようです。
2人は、何故神崎が課長に殺されなければならなかったか、その理由を探っていきます。そうこうするうちに、神崎を殺した経堂課長が密室で頭から血を流して死んでしまいました、事態は混迷を深めていきます…
と、謎解きも面白いのですが、「幽霊であること」を想像するのが楽しいです。幽霊ってこんなに便利なんだ、と。
誰にも咎められずに好きなところに猛スピードで飛んでいけます、壁抜けもできます。が 反面、電話ができないので遠方の相手に意志を伝えられない、覚えておきたくてもメモができないなど 不便な面も^^; それらが、早川刑事との会話や、神崎刑事のモノローグで分かって面白いです。
婚約間近だった神崎の彼女も同じ警察署内に勤務していましたが、彼女は幽霊を全く信じていないので、いくら早川が「神崎刑事が成仏できずに 今ここに戻っている」と力説しても信じようともしません…
警察内で盗聴器が仕掛けられていて、それを傍受した音声録音テープが突破口になって…謎が明かされていくところは手に汗にぎりました。
幽霊というのは、成仏できない事情があって この世に舞い戻って思いを果たしに来るのですね。(いるかいないかはわからないけど)
犯人が誰かわかり 捕まった時、神崎は 自分が消えていくのを覚悟しました。
成仏=恋人との別れ。お別れは寂しいけれど いつまでも死んだ自分が婚約者の心を引き止めてはいけないんだ…
恋人・須磨子の幸せを願って消えていく神崎の亡霊が切なく、余韻を残しました。
会話が面白いので長編ですが読みやすいです。
イタコの霊媒体質を捜査に生かそう、と早川刑事はこころを決めました。
その早川刑事を主人公に描いたスピンオフ作品「幻の娘」も収録されています。
宝塚歌劇で上演するとどうなるのか?
えっ?? たまきち(珠城りょう)が幽霊? と、演目が発表になった時に驚きました。
『幽霊刑事(デカ)~サヨナラする、その前に~』
恋愛と本格ミステリーが融合した有栖川有栖氏著の傑作「幽霊刑事」が、心温まるミュージカルとして、珠城りょうの思い入れある宝塚バウホールに登場します。
巴東署の刑事・神崎達也が、夜の浜辺で突然上司に射殺された・・・が、結婚を控え、殺された理由に全く心当たりがない神崎は、成仏できず幽霊となってしまった。母親にも、フィアンセの森須磨子にも自分の姿は見えず、虚しさに苛まれる神崎だが、青森出身でイタコの血を引く霊媒体質の同僚刑事・早川敦にだけは自分の姿が見え、声も聞こえた。神崎は唯一コミュニケーションが取れる早川に事件のあらましを話し、幽霊刑事と霊媒刑事の「最強コンビ?」がタッグを組んで捜査に乗り出す。しかし事件解決はまた、神崎がこの世に別れを告げ、昇天することをも意味していた。「愛する人の為、消え去ることもまた、愛」。
ミステリーでありながら笑いあり涙ありのハート・ウォーミング・ストーリーにご期待ください。宝塚歌劇公式HPより引用
この作品、恋愛要素激薄です。
現在 宝塚の公演は全てストップして スケジュールを練り直していますが、この作品もいつ上演できるのかわかりませんね。
外箱公演として、バウホールで「幽霊刑事」、東上公演で「ダルレークの恋」。
「幽霊刑事」は珠城りょう主演、「ダルレークの恋」は 2番手・月城かなと主演。
ということは、「幽霊刑事」で2番手役を担うのは誰なのか??
ダルレークの恋の2番手役ペペルは、ちなつちゃん(鳳月杏)が似合いそうなのでこちらに振り分けと仮定すると(あくまでもワタクシ的予想)、幽霊刑事の2番手役は…ありちゃん(暁千星)? ちょっと飛ばしておだちん(風間柚乃)?
神崎(幽霊)刑事との会話劇的な面白さのある作品ですから、2人の阿吽の呼吸、
丁々発止のやりとり…そういうのができる生徒さんがいいな、って思います。
風間柚乃くんは・・・軽妙な会話が上手い!「出島小宇宙戦争」のシーボルトで楽しませてもらいました、あの印象が強いので…というか 柚乃くんは芝居巧者ですからね、合うと思うんですが、まだちょっと…早くもないか。
風間柚乃くんと同期の花組のほのかちゃん(聖乃あすか)は、この作品よりも前に バウで「PRINCE OF ROSES」で主演を務めますからね。
月組御曹司と言われているありちゃん(暁千星)だって、この頃にはどこかに組み替
えになっているやも知れず。まだまだ先のことはわかりませんから 好きなことつぶやいてます^^;
登場人物まとめ
神崎達也:主人公 警察官 上司に撃ち殺され、真実を伝えるため戻ってきた。
早川篤:霊媒体質で幽霊が見え話ができる。神崎と組んで真実を暴く。ぽってり丸い愛嬌のある顔立ち。
経堂芳郎:神崎を殺した張本人。個人的な恨みはなく、誰かに操られている。
毬村主任:憎らしいほど金持ちは自他共認めるところ、嫌味なおぼっちゃま発言多数。
佐山潤一:ハードボイルド好きの同僚。密かに須磨子に思いを寄せているらしい?
漆原係長:女性ながら「出来る人」。誰にも告げず一人で何かを探っている様子。
森須磨子:射撃の名手で神崎の恋人。幽霊を信じないが神崎への思いはずっと変わらず。
玖須悦夫:窃盗常習犯。狙ったお宝だけを盗みマニアックな「客」に売っている。
舞台化するにあたり
え~~~っと。たまきちは、半透明にはなれませんから、神崎も早川も見たところ、どちらも人間、ってことになるんですよね。
演出でうまく こちらが幽霊、こちらが人間と差をつけられるのか 演出の石田昌也先生、どんなアイデアを出してこられるのか、興味があります。
この作品、一度だけ、上演されたことがあるようです、あるイベントで。
著者による「あとがき」によりますと、
この小節は、有栖川有栖さんが原案を提供された「幽霊刑事」という舞台劇を膨らませて小説化されたそうです。その舞台劇とは…
1998年9月20日 日立製作所主催の「犯人当てイベント」で放送作家の上田信彦さんの
脚本により「幽霊刑事」が大阪・万国博ホールで1回限りで上演されたそうです。一体どんな舞台だったのでしょうか? どのように「幽霊」を描き、謎解きをされたのか。
にしても、宝塚で舞台化する、って よく思いつかれましたよね、この題材で…。
月組で珠城りょう主演で「カンパニー」(伊吹有喜著)という作品がありました。主人公はしがないサラリーマン。しかもリストラされた…原作はおじさん、でした。
でも なんだかほわんとあったかくて、ところどころダンスシーン(バーバアリアンの)やバレエシーンがあって…恋愛シーンもグイグイこないから余計に キュン♪としましたっけ…
また、あんな感じの好青年・たまきち全開で、恋愛要素もほんわか薄味で 神崎と早川のコンビ感で笑わせ、泣かせる作品になるのかしら?と妄想ちう。
昔 角川書店のCMに 「読んでから観るか 観てから読むか」というキャッチコピーがありましたけど。
絶対 読んでから観る派です。
目から入ってくる情報はインパクトが強いので、映画を先に見ると先入観に支配されてしまって読書の楽しみ半減しちゃうんですよね。
そういう意味で、漫画もあんまり…
自分の想像で頭の中でドラマを作るのが好きなんですね。 あなたはどちら派?
会話と幽霊が楽しい『幽霊刑事』 でした! おすすめです♪