⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【寺地はるな】『雫』30年、時間を遡って描く今へ至る道|4人の男女の群像劇

ゆるやかに繋がった男女4人の30年。

 

読む前は30年の物語か〜と腰が引け気味でしたが、面白くてあっという間に読んでしまいました。

 

会話が生き生きしていて、脳内ドラマがはかどりました^^

 

 

 

 

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今日が、雨でよかった――時を超え、かたちを変えて巡る、“つながり”と再生の物語。

ビルの取り壊しに伴うリフォームジュエリー会社の廃業を起点に時間をさかのぼりながら、物から物へ、人から人へと、30年の月日のなかで巡る想いと“つながり”、そして新たなはじまりを描く、寺地はるな(2023年本屋大賞9位)の真骨頂が光る、感動長篇。
出会い、卒業、就職、結婚、親子、別れ……。中学の卒業制作づくりで出会った4人がそれぞれ直面する数々の選択と、その先にある転機、人生のままならなさ。不器用に、でもひたむきに向き合う彼らの姿を通して、日常のささいな不安や違和感を丁寧にすくい取って人の弱さにそっと寄り添いながら、いまを生きるあなたにエールを贈る大人の青春小説。

引用元:NHK出版HP

 

5年刻みで時間が遡る30年

青山美智子さんの『鎌倉うずまき研究所』や瀧羽麻子さんの『乗りかかった船』などでも時間を逆行する手法で描かれていました。

 

読み進んでから、そういう経緯だったのか、と気づいたり、

通常の時間の流れに沿って描かれる作品とは違う面白さがありました。

 

『雫』は、各章のタイトルが、

2025年 4月、2020年 2月、2015年 12月、2010年 7月、2005年 4月、2000年 8月、1995年 9月…となっているので、とてもわかりやすいです。

あぁ、そう言えば、そんな時代だったなぁ…と自分の過去と重ね合わせて懐かしんだり。

 

物語では中学3年で一緒に卒業制作に携わった4人の男女が40代なかばになるまでの30年の歳月。

 

山あり谷あり。

 

4人の個性を読むのが興味深い

⚠️知りたくない方はブラウザバックお願いします

 

 

 

 

 

永瀬:

主人公。元美術部員。就職がうまくいかずジュエリーデザイナーの道を諦めていたところに救世主あらわる。

 

高崎:

勉強もスポーツもできて、陽キャでかっこいいモテ男。

実家は宝石商を営み、たくさんの不動産も持っている裕福な家庭。

甘やかされて育った自覚があり、それが悩み。

 

森 侑:

優しくて思いやりがあって…でもちょっと不器用な男性。

一緒にいるとホッコリしそうなタイプ。

 

山下 しずく:

3年になって転校してきた女の子。

物静かで人を寄せ付けない雰囲気。

高崎家の遠縁で、父子家庭だったが、しずくだけ高崎家に面倒を見てもらっている。

 

4人の関係は読み応えがあります。

 

30年のあいだに、大好きだった母が認知症になり、疎ましくなったり、姉との関係もぎくしゃくする永瀬。

 

親から会社を引き継いだ時に、ジュエリーをリフォームする会社を作る、と夢を描く高崎。妻との間にすきま風が吹いています。

 

お人好しで舐められやすいけれど、人一倍優しくて、愛妻家の森。

 

タイトルと同じ名前がついたしずくは、未だに父からの無心に困っています。

コミュニケーション能力が低いので、自分の思いをはっきりと伝えることが苦手。

周りは良かれとアドバイスしますが、本人はあまり気にしてない風。

 

4人がゆる〜く繋がっていて、とてもいい感じ。

 

男女4人、恋愛沙汰もなくゆるゆると30年繋がっていられるのは、ちょっぴり羨ましいです。

 

『雫』に託された思い

4人が中学の卒業制作に選んだテーマが「雫」でした。

 

美術教師、杉村先生は、

雫は永遠だ、と話してくれます。

 

「古代、雨は神々が流す涙であると考えられていました。雨の雫はあつまって川となり、海へと流れ込み、やがて空にのぼっていく。その繰り返しが『永遠』を意味する。という説があります」

出典:寺地はるな著『雫』P246 

 

しずくが永瀬に雫型のラピスラズリのネックレスをくれました。

昔、病気で亡くなった母親からもらったものだといいます。

母親も、人からもらった、って。

 

そのネックレスはお守りだよ、今までお母さんを守ってくれた。もうじきその役目を終える。これはいつまでもおかあさんが持っていちゃだめなの、しずくが持っていて。

そして「もう必要ない」と思った時に、また誰かにあげて、と言ったのだそうだ。

出典:寺地はるな著『雫』P218

 

しずくは少し強くなりました、このお守りネックレスを卒業するまでに^^

 

そして時を経て、永瀬から高峰の娘の杏梨の手に。

 

 

晴れてよかった。でも永瀬は…

晴れてよかった。人々は人生の折々でそう口にする。

でも、わたしは雨の日が好きだ。《中略》

なにかが終わって、なにかがまたはじまる。

傘を開いて、一歩踏み出した。

今日が、雨でよかった。

出典:寺地はるな著『雫』P286

 

上の中略の部分は、雨のしずくが永遠、のエピソードが入っています。

 

大きな事件も起きず、淡々と過ぎゆくそれぞれの日々。

でも、「人生」それこそがドラマ。

 

調子のいい時も、そうでないときも、ビュンとスピードが上がる時も、停滞気味のときも、キラキラしている時もくすんでいる時も

 

後から振り返れば「それが自分の人生」。

たとえ今は小さい一歩でも前を向いて歩いていきたいな、と私も思います。

 

時系列にもう一度読み直したくなる作品です!(読み直してないけど…^^)

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