寺地はるなさんの本、6冊目は『わたしの良い子』です。
「家族」を温かい視点で描く寺地はるなさん。
今回読んだ作品は、奔放な人生を歩む妹・鈴菜が産んだ子どもを育てる姉・椿の物語。
他人からは母子に見えるけれど「伯母と甥」という血の繋がらない関係。
ちょっと「個性的な」男の子、朔に悪戦苦闘の日々…
子育てあるあるが面白く、サクサク読めました。
子育てあるあるに、共感して、応援したくなります
Amazon評価4.5 ★5=64% 2019年9月6日発売
読み始めは、
妹の息子の朔は、なぜこんなに育てにくい子どもなんだろう、と主人公・椿とともにイライラしたり ^^;
産むだけ産んで、子どもを姉に押し付けて出ていってしまう妹の鈴菜に、なんて身勝手で自分本位な女性なんだろう、と呆れたり。
日々、精神を削られ、消耗する椿に同情しつつ読み始めました。
幕開きから読者の心をぎゅっと椿に引き付ける効果あり!!
育てるのが大変そうな朔くん
朔は、あまりにも「できない子」なのでいつも先生から注意されています。
椿も次から次へとやらかしてくれる朔に切れそうになりながら必死で一人で子育てしています。
もう、自分が泣きたいぐらいに。
子育てではお決まりの、お友達トラブルの相手は、
よりによって椿の中・高と同じ学校で付き合ったことのある男性、静原のひとり娘・結愛でした。
再会した時から不穏な展開になりそうな予感はありましたが、やはり…
朔が愛結ちゃんは嫌い、というと実家の父(朔の祖父)は友達とは仲良くしなくちゃだめだ、と言います、理由も聞かずに。
先生も朔に、愛結ちゃんを叩いた理由を確認せずにただ謝らせました。
朔の扱いが軽んじられている…
子どもでも、人格はあるし、思うところはあるのに。
誰の悪口も言わない、愚痴も言わない。大人でもむずかしいようなことを、わたしたちは生まれて十年にも満たない子どもにさせようとした。良い子は他人の悪口を言いません、なんて。とてもひどいことだ。
出典:『わたしの良い子』P154
大人は建前だけで子育てしがち、理想と現実は違います。
愛結ちゃんはいつも朔のことをばかにしてちょっかいを出してくるのでした。
朔くん、頑張れ、椿も頑張れ、応援したくなるのでした。
椿には、遠距離恋愛中の恋人・高雄がいます
結婚前提で付き合っていて、妹の息子・朔といっしょに暮らすのも問題ない、という理解ある男性です。
彼が出張中に事故で入院した時に、病室で「高雄を狙っている、高雄の子どもを産みたい」とストレートに言うライバル心むき出しの女性・真弓と鉢合わせ。
心がざわつく場面でしたが、椿が「絶対に譲らない、誰にも」と高雄の前で宣言!
かっこいい!
胸の溜飲がさがります。
椿の同期の2人が面白い
同期入社の同僚の穂積とは、何でも言い合える仲で良き相談相手。
テンポのいい会話は読んでいて楽しいです。
もう一人の杉尾は、妻帯者。
デリカシーの無い発言でイラッとさせられることもありますが…
彼は彼なりの悩みも抱えていて。
椿視点では見えなかったことが明らかになります
妹・鈴菜ばかり甘やかされていて、自分は愛されていない、と悲観していた椿ですが、
鈴菜は、鈴菜で、親は叱ってくれない、自分は期待されていない、椿の方が愛されていると引け目を感じ、悩んでいたのです。
なぜ、やっと2歳になったばかりの朔を置いて、一人で沖縄に住む夫の元に走ったのかが妹の口から語られて
鈴菜も悩み、苦しんでいたことがわかります。
DVの夫と別れ、今度こそ朔と暮らしたい、と実家に戻ってきた鈴菜。
椿は毎日、仕事をしつつ、子育てに翻弄されていたけれど、朔はママ・鈴菜が大好き。
やっぱり子どもは血のつながった鈴菜が好きなのか、と寂しい椿。
鈴菜は、椿が帰るまで起きて待っているという朔は、自分より椿が好きなんだ…と寂しい思いをしています。
それぞれが親の愛情や、朔の思いを自分流に受け止めて悩んでいる。
勝手に行動を深読みして悩むのはありがちですが、取越苦労が多いですよね♪
ふいに鈴菜が出ていって、また朔は傷つき、椿は心配します。
鈴菜、ちゃんと連絡ぐらいしたらいいのに…電話にでない。
ダメなのは、そういうとこだぞ、って 精神的に幼い鈴菜にイラッ!
しばらくして、鈴菜は戻ってきました、沖縄の人と別れて。
朔と暮らしたい、でも自信はない、と言う。(甘え?)
甘えるな、とは言わず、頼っていいよ、という椿、器の大きい人だな、
私なら甘えるな、いい加減にして、というかもしれない場面だけど。
出来ないことは責めず、どうやったら出来るかを考える。
前向きな椿。
母親に向いてないことはわかってるけど、という鈴菜。
向いてる向いてないじゃない、やるんだよ、とにかく。
向いてないから、と育児を放棄するのか?
また朔を傷つけそうでこわい鈴菜。
お姉ちゃんは、お母さんの好きな花「椿」で私は、スズナ「春の七草」だと卑下する妹に、
妹が生まれると知って、当時読んでいた本のかわいくて愛されている主人公がすずなちゃんだったから妹の名前は「すずなちゃん」にしてと言ったのは椿だったのです。
姉の思いが詰まった「鈴菜」だったと知り
大声で泣き始める妹の肩を抱き寄せて、良い子、良い子と撫でる椿。
なんて優しい風景。
遅れがちな子どもだった朔が
2年生になって、ひとりで集団登校の班に行ってみると成長を見せました。
ゆっくりでも、確実に前進している、そんな朔の姿は眩しく愛おしいです。
毎日ドタバタの中のささやかな幸せ、ひとときの穏やかな時間にホッとする、自分の子育て時代を思い出して懐かしくなったり…
今だから言える(笑)
朔の小さな不安や椿が直面する不快も、終盤に回収されていきます。
子育て世代の方が読まれたら、共感できる場面が多いのではないでしょうか?
朔の成長を知りたくて…続編希望です!
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