本屋大賞受賞作「52ヘルツのクジラたち」に感動して、その後、「夜空に泳ぐチョコレートグラミー」、「星を掬う」を読みました。
家族のあり方に焦点を当てて書いておられる町田そのこさん
町田そのこさんの著作を読むのは「宙ごはん」で4冊目ですが、テレビドラマに出てくるような「フツー」の家族ではない「いろんなかたち」の家族が登場します。
毒親も多く登場し、読むのが辛い場面もあります。
家族の数だけ、家族のカタチがあるから、全ての人の心にフィットする家族の物語はないでしょう。
それでも、主人公の幸せを願わずにはいられないし、小さな感謝を抱きながら読みました。
Amazon ★4.5 ★5=74%
ポイント高いですね、メディアで大絶賛の凪良ゆう著「汝、星のごとく」と同じ評価。
あ…今、「汝、星のごとく」って打っただけでなんか熱いものがこみ上げてきました…
宙(そら)、6歳から大人になるまでの成長物語、その傍らにはいつも…
心を癒やしてくれるごはんがありました。
あらすじは ↓
この物語は、あなたの人生を支えてくれる
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。小学館HPより
⚠️ネタバレあります、ご注意ください
ふわふわパンケーキのいちごジャム添えが宙の心を救った
子供を育てられない、と産んだものの、妹・風海(ふみ)に宙を預けた花野(かの)。
宙が風海一家と風海の実家に遊びに行くと、産みの母の花野がひとりで住んでいました。
古ぼけた屋敷も、美しいカノさん(母のことを宙はそう呼んでいました)も宙は大好きでした。
風海の家族のシンガポール赴任に付いていかない、と決めたのは宙だったのに、カノさんが大好きだったのに…
カノさんはごはんすら作らず、参観日にも来てくれない、宙の話も聞いてくれない、
まるで母親らしくない。
それどころか 不倫相手とのデートに連れて行ったり、機嫌が悪くなるとまだ小学校に上がったばかりの宙に当たり散らして 子供のままのようなカノさん。
ネグレクト気味の母・花野は「お母さん」、と呼ばれるのが嫌で、「カノさん」と呼ばせています。
もう、宙が不憫で不憫で、カノさんにムッとしながら読み進みました。
耐えきれず飛び出していったところにカノさんの後輩でレストラン・サエキの佐伯恭弘が呼び止めて、ふわふわのパンケーキを作ってくれました。
美味しいくじら印のいちごジャムをのっけて食べると、心までとろけていって…
自分もこんな美味しいパンケーキを作りたい、人を幸せにするパンケーキを。
佐伯に教わったパンケーキのレシピをノートに書き留めて…これが宙がお料理に目覚めた第一歩でした…
宙のクラスメートや同級生にも複雑な家庭に育った男子がいて
宙のボーイフレンドも、母はなく、若い姉が3歳の子供を連れてで戻ってきていて
姉は鬱、ボーイフレンドは3歳の子供の世話で自分を見失いかけていました。
そんな時、助けてくれるのが、温かいお料理で心も胃袋もほぐしてくれるレストランサエキのやっちゃん。
ヒーロー登場♪
何も口にできなかったおねえちゃんの佳澄はようやく人心地がついて、前向きに生きていく勇気がでたのでした。
宙の同級生男子の廻(めぐる)が、家族のことをテーマにした本を読んでいる、と宙に語る場面があります。
彼の家族も複雑で、母に捨てられ、唯一の肉親である父親を憎んでいて、全く赤の他人の父の愛人に心を開き、頼っています。
彼は、家族問題の解決のヒントを探すために本を読んでいたんですね。
本に登場する「家族」はファンタジーで、結局最後は希望の光がさして、めでたしめでたしで終わる、
現実はそんな簡単じゃないんだ、と。
理想、ですね。
理想と現実は
佐伯は、宙にとって、遠くから、見守ってくれる父親のような存在だったのに、
ある日、交通事故で亡くなってしまいます。
相手は飲酒運転の常習犯。
その家の小学生の男の子・ヒロムは、毎日花を一輪届けにレストランサエキにやってきます。
学校では「人殺しの子」と言われ、万引を強要されたりいじめられたりしていて、
母親も、心を病みかけていますが…
カノさんが廻やヒロム、その母親らを呼んで一緒にごはんを食べようと働きかけました。
一人で抱えていてはだめだよ、苦しいときは、誰かに手伝ってもらっていいんだよ、と
明るく、決して押し付けがましくなく、
一緒にピザを食べ、一緒にビールを飲むのでした。
大切な人、やっちゃんを轢き殺した人の家族なのに…と思う宙は少し複雑ですが
みんなの心がひとつになり、ガチガチになった心が解けていく様子は、読んでいて泣かずにはおれないシーンでした。
花野も複雑な家庭に育っていた
カノさんは最初、語らなかったけれど、実家で大変な苦労をしていたのでした。
実家の川瀬家のこと、
生まれた時からいなかった、宙の父の話、
佐伯恭弘との関係、
異父姉妹の風海の生い立ちと花野との確執
一枚ずつベールをめくるように、顕になっていく真実。
最初は、カノさんにいい印象を抱けなかったのですが、物語が進むにつれてすこしずつ感情移入していきました。
そんな中で登場する
かつおと昆布が香るほこほこにゅうめん
あなたのための、きのこのとろとろポタージュ
思い出とぱらぱらレタス卵チャーハン
いますぐ作りたくなる調理シーン、食事シーン。
高田郁さんの著書『みをつくし料理帖』も読んで、想像したらもう作りたくてしょうがない。
そんな読者の希望にお応えして、巻末にレシピが載ってました^^
どんなに苦しくても、人は食べることで元気になる!
手をかけた料理ほど美味しい気がするのは、気の所為でしょうか??
宙と周りの人達の悩みも やっちゃんだったり、宙だったり、カノさんだったり…がつくった美味しいごはんがゆっくり心をほぐしていきます。
宙は、やっちゃんから教えてもらったお料理のレシピをノートに綴っていました。
いつか、自分もやっちゃんのような、人の心に届くお料理を作りたい。
最終章は泣けます。
エピローグは、レストランサエキの厨房にいるのは、高校卒業後、調理師の道に進んだ宙。
宙と共に、宙が生きてきた十余年の日々を思い出して胸アツ。
半生を一緒に生きた気分です。
周りの温かい人達に助けられて宙は育ちました。
子育てはひとりじゃない。
周りのいろんな人に、社会に助けられて育っていくんだな、と温かい気もちになりました。
やっちゃんこと、レストランサエキの佐伯恭弘の視点から書いた掌編小説も初版本にのみ付録として付いています。
やっちゃん、ありがとう!あなたがいてくれたからみんな幸せになれたよ!
2023年本屋大賞にノミネートされています
今年の大賞発表は、4月12日水曜日に発表されます、楽しみ〜♪
宙ごはんの他に本屋大賞にノミネートされている作品は、
『川のほとりに立つ者は』寺地はるな(双葉社)
『君のクイズ』小川 哲(朝日新聞出版)
『月の立つ林で』青山美智子(ポプラ社)
『汝、星のごとく』凪良ゆう(講談社)
『方舟』 夕木春央 (講談社)
『#真相をお話しします』結城真一郎(新潮社)
『爆弾』呉 勝浩(講談社)
『光のとこにいてね』一穂ミチ(文藝春秋)
『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒(集英社)
オススメです!