今、ちょっとハマっている寺地はるなさんの作品です。
本屋大賞ノミネート作品です。
Amazon ★3.8 ★5=35%
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
双葉社HPより引用
9章からなる物語
- 2020年7月23日の原田清瀬
- 2020年7月24日の原田清瀬
- 2020年1月4日の松木圭太
- 2020年7月25日の原田清瀬
- 2020年2月15日の松木圭太
- 2020年7月25日の原田清瀬
- 2020年7月23日の松木圭太
- 2020年7月30日の原田清瀬
- 2020年7月10月25日の原田清瀬と松木圭太
本作の冒頭で、清瀬が読んでいた海外文学『夜の底の川』は、もとはといえば恋人の松木の本でした。
「相手のことをなんだって知っている」つもりでいたけれど、彼女のことはなにひとつ知らなかった…という主人公のモノローグを読んだところでウトウト…病院からの電話に叩き起こされて、物語が始まります。
病院に駆けつけて初めて、清瀬は、松木についてほとんど詳しい身の上を知らなかったことに気づきます。
松木は家族に付いて詳しく話したがらなかったし、自宅に呼ぶのも嫌がったから。
松木と共に病院に運ばれたのは、松木の幼馴染の岩井樹。
小中学校同じで子供の頃から仲良くしていたのに
二人して歩道橋から落ちて意識不明になるとは…
清瀬は、松木から「もしもの時の為に」と預かっていた合鍵を使って彼の部屋に入ります、そこで見たものは…
少しずつ、ベールを剥がすように真実に近づいていく…
そのベールを剥がす楽しみは、これから読む方に残して置かなければ、と今回ネタバレしたくないので詳しく書きません。
この小説は「小説推理」2021年3月から10月まで連載された「明日がよい日でありますように」を加筆修正されて出版されました。
それだけに、推理小説のドキドキ感がありました。
昨今、「多様性」「ダイバーシティ」にスポットが当たるようになってきました。
世の中には、いろんな「多様性」があり、自分が想像し得ないような世界に住んでおられる方もいらっしゃるでしょう。
『夜の底の川』(架空の作品)の一節
「川のほとりに立つ者は、水底に沈む石の数を知り得ない」
川底の石、というのは、自分が知り得ない、いろんな多様性、個性をもった人たちのことでしょうか。
川の中に入らず、ほとりに立っているだけでは
自分と違う人生を歩いている人たちの喜びも、悩み悲しみもそのまま実感することは難しい。
自分の物差しだけで語ることは、相手と齟齬を生むのだと気付かされます。
最終章、意識を取り戻した松木と清瀬の姿が優しい眼差しで描かれていて、ホッとしました。
読了後、しばらく本を膝の上に置いたまま余韻に浸りました。