⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【瀬尾まいこ】『卵の緒』|瀬尾まいこさんのデビュー作とNHKドラマ化作品の2編収録

今、図書館から続々本が到着していて、

 

読まなくちゃいけない、感想を書きとめておきたい…

 

時間がなくてあっぷあっぷしてます。


ちゃんと返却日まで読み切れるのか??

 

 

そんな中、友人に教えてもらった、瀬尾まいこさんの本、『卵の緒』を読みました。

 

愛に血縁は関係ない

2002年、瀬尾まいこさんのデビュー作にして、第7回坊っちゃん文学賞大賞受賞作です。

 

文庫本『卵の緒』には、表題作と、『7's blood』の2編が収められています。

 

2編で216ページ、『卵の緒』は9ページから81ページ、72ページの短編です。

 

愛情を注ぐのに血縁は関係は無いと思い、家族に限定しない人と人が関わることに関心があり、それを書いている、と瀬尾まいこさんのWikipediaにありました。

そうだったんですね、今知った ^^;

 

その言葉どおり、『卵の緒』も『7's blood』も血縁のない子ども、大人がつながっていく様子を描かれています。

 

子どもの養育者が次々と変わる、『そして、バトンは渡された』(第16回本屋大賞受賞 2019年)にも、著者の思いが盛り込まれていたんですね。

 

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あり得ない設定だが、幸せになる予感…卵の緒

僕は捨て子だ。から始まる、育生(いくお)の物語。

 

へその緒は、お母さんと子どもをつなぐものだから、どの家庭にもあるはずだ、と担任の先生から聞いた9歳の育生は、母親に見せてほしい、とねだるのですが

育生は卵で産んだ、とはぐらかします。

 

親子の証を欲しがる育生に「証って物質じゃないから、目に見えないのよ」

 

登校拒否の池内くんが家に遊びに来たとき、母は

「登校拒否児にしては食欲満点ね。食欲のある男の子は三割ハンサムに見えるのよ。」

と言い放ちます。

 

登校拒否児に面と向かって登校拒否児にしては…と言うデリカシーのなさにギョッ!

さらに三割ハンサム、もちょっとひっかかりながら読みました。

 

この母親の物言いはかなりユニークでイラっとさせられる場面もいくつかありました。

子どもの質問に肩透かしを食らわすとか、真摯に対応していない点など。

 

育生の出自、母・君子の前半生が後半に明かされますが、それを読むと育生の母・君子の言葉遣いや態度など、瑣末事なのかな?とも思えたり…。

 

母は、大学入学して間もない時に、ある授業の先生(年齢的に講師?)に恋をしてしまいます。

18歳の時に16歳年上だから先生は34歳。

先生は余命いくばくもないが、出産で命を落とした妻との間に生まれた一人息子を育てていることがわかります。

 

君子は、愛する先生の子どもを育てる、と大学を辞め、先生と結婚。

 

愛する、と言ったって、そんなにお付き合いもしてないのに押しかけ女房です。

ほどなくして、先生は亡くなり、育生をここまで女手ひとつで育ててきたのです。

 

ちょっと待った〜!!

 

美談を中断、失礼いたします。

 

大学を辞めて、愛する人の子どもを18歳の女性が1人で育てるですって?

美しい話のようだけれど、実際問題、生活費は? どこに住むの?

遺族年金はもらえないから死亡保険かな?

実家の両親に頼ったの?

 

設定に無理があってひっかかってしまったわ。

 

18歳の時に乳児の育生と出会い、どうしてもこの子がほしい、と思った君子、足し算をすればまだ27歳ですね。

 

君子が職場の同僚・朝井を家に招くようになって…新しい家族ができました。

 

母とは全く血縁のない、育生、そして新しい(血縁のない)父となる朝井、君子の3人。

でも、君子のお腹には、朝井と君子の子どもが宿っています。

温かいファミリー。

 

母は、育生のことを、世界一好き、大好き、と常々口にして愛しています。

これから赤ちゃんの誕生後も、おかあさんの育生への愛に陰りが生じませんように…。

 

『7's blood』…こちらの方が感動的だった

七子と七生の物語。

 

七子は、母と二人暮らしでした。

父は愛人の元で子どもを作り、病気で亡くなってしまいました。

 

ある日、母は、男の子を連れ帰ります。

なんと、異母兄弟の七生(小学6年生)でした。

 

七生も母と二人暮らしでしたが、その母が刑務所に入ることになったため(!)、母親が引き取ってきたのでした。

…と出だしから、激しいのですが。

 

七子は高校3年生(18歳)、6つも年下の男の子が急にやってきてとまどいもあり、そっけなく接していました。

 

七生は明るくて、よく気が付き、家のこと(料理など)もできる子でした。

健気な七生は、七子にも屈託なく話しかけてくるのに、七子の返事は、いつも「別に」。

 

「わざとらしいのよ。なにもかも。しゃべり方、笑い方…、あんたはいつも周りの人間に気に入られる事ばかり考えてる。どうすればかわいがってもらえるのか知っているのよ」(出展:『卵の緒』P111)

面と向かって罵倒。

 

七生はそうやって、周囲に気を使わないと生きていけないような環境で育ってきたから、いい子でいることは習い性だったんですね。

七子のことをちょっと嫌いになるシーン ^^;

 

七生の真心を、七子を思う真摯な気持ちを真正面から受け止めてあげてほしかった。

 

七子の母は体調を崩し入院してしまいました。

闘病の後、夏の終わりにあっけなく亡くなりました。

 

七子と七生、二人が残されました。

 

お母さんは、自分の寿命を悟って、七生を引き取り、七子と腹違いの弟を引き合わせてくれたのでしょう。

 

一つ屋根の下で暮らしているうちに、姉弟らしくなっていく二人。

風邪で寝込んだ七子に、おかゆを作ってから小学校に行く七生、健気すぎて泣きそう。

 

そんなある日、突然、七生が出ていくことになりました。

七子には青天の霹靂!!

 

3日後にお母さんが出所するというのです…

 

何故、もっと早くに言ってくれなかったの?

 

せっかく学校にも、七子との生活にも馴染んで来たのに…

七生と暮らした1年の月日は、思ったより七子の中に大きなスペースを占めていたことが、

七生との別れで初めて大きくクローズアップされます…

 

七生は聡い子ですから、自分が居なくなることを言い難かったのでしょう。

自分が七子の元を去ることは、七子よりも実母を選ぶということ、

それによって、七子が1人になってしまうことに申し訳無さを感じていたのかな、とも思いました。

 

やっといい感じの二人になってきたところだったので、読者の私も二人の別れは残念でした。

 

それにしても…

母の出所の連絡は、どうやって七生にもたらされたのでしょうか?

 

誰もいない部屋に、12歳の七生が帰っていく、なんだか切ないシチュエーション。

 

 

NHKハイビジョンでドラマ化されました

『7's blood』は、

「七子と七生 ~姉と弟になれる日~ 」というタイトルで2004年10月にNHKハイビジョンドラマ枠で放送されました。

平成16年度文化庁芸術祭優秀賞を受賞しています。

 

出演は蒼井優さん、知念侑李さん、石田えりさん、野村真美さん。

 

 

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