happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

山内マリコ著「あのこは貴族」|映画「あのこは貴族」原作本 読了

映画化されるだけあって、興味深いお話でした

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 東京生まれの箱入り娘・華子は、結婚を焦ってお見合いを重ね、ついにハンサムな弁護士「青木幸一郎」と出会う。一方、地方生まれの上京組・美紀は、猛勉強の末に慶應大学に入るも金欠で中退。現在はIT企業に勤めながら、腐れ縁の「幸一郎」との関係に悩み中。境遇の全く違う二人が、やがて同じ男をきっかけに巡り会い―。“上流階級”を舞台に、アラサー女子たちの葛藤と解放を描く傑作長編。

BOOKデータベースより引用

 一人の男性を巡って知り合った二人の女性。

生まれも育ちも全然違う二人。

 

第一章 東京(とりわけその中心の、とある階層) 7~110ページ(104p)

第二章 外部(ある地方都市と女子の運命)   113~178ページ(66p)

第三章 邂逅(女同士の義理、結婚、連鎖)   181~265ページ(85p)

終章  一年後                269~283ページ(15p)

細かい描写に、場面がありありと浮かぶのが面白い 

第一章が一番ボリュームがあるのは…華子が如何にお嬢様かというエピソードが満載で興味深かったです。

大学やホテルなど、架空のありそでなさそな名前を付けているのではなく、実在の大学やホテルが出てくるので物語の中に入りやすく、読まされました。

あるある~!! 

 

家庭の数だけ「普通」の尺度があると思っていますが、そんな中でも突き抜けてるのが、主人公の華子のお家…と思ったら、更にその上を行く、結婚相手、というのが面白いです。上を見ればきりがない。

 

華子は、ステレオタイプのお嬢様として描かれています。

東京は高級住宅地 松濤で三代続く医者の家系。

小学校から大学までエスカレーターのミッション系女子校育ち。

化粧品メーカーに就職するのも、親のコネ。

祖父や父が持ってきてくれるお見合いを重ねています。

 

正月早々、付き合っていた男に振られたばかりの榛原華子が、新年の家族の食事会に出るためタクシーで帝国ホテルに向かっているところから 話が始まります。

食事会で家族に紹介するはずだった彼に、当日の朝に振られて、格好のつかない華子は結婚を決意。

簡単に行くはずのお見合いがことごとく決裂した時に 父が持ってきたお見合いの相手・青木耕一郎がハイスペック男子w 華子が軽く劣等感を抱くほどに。

幼稚舎から慶応、その後東大へ。職業は弁護士。しかもハンサムでスポーツマン。

軽井沢に別荘を持ち、別荘を飾る絵画も一流、華子に優しいし束縛しない。

出来すぎくん♪

 

最高の条件の二人だったけれど…二人はあっけなく離婚に。

外部、とは 大学受験して入学してきた名門私立大の学生の事

内部進学組のグループは堂々としていて空気を牛耳ってる感じ。

それを見て、憧れて近寄る子、近寄りがたく感じる子、様々ですが。

華子と対極に描かれているのが、漁港で知られた小さな街出身の時岡美紀。

新幹線と在来線を乗り継いで、1時間、さらに駅から車で20分で実家にたどりつく。

父は元漁師、母と弟が実家で暮らしていますが 暮らし向きは豊かではありません。

必死で受験勉強をしてなんとか慶応に入った美紀と、下から何の苦労もなく上がってきた内部生とは根本的に違うのだ、と悟る美紀。

 

昔のように身分制度は無いけれど みんな平等だと言うけれど ヒエラルキーは、そこかしこにあるのですね。

 

実家の収入が激減して夜の商売で、生活費を稼ぐようになった美紀は、大学から身も心も遠のいて 大学を辞めてラウンジで高収入を稼ぐようになります。

田舎から出てきて、眩しい思いで眺めていたブランド物もさりげなく着こなせる女性に。

そんな時、学生時代にノートを貸したことのある青木幸一郎が来店、美紀が彼のテーブルについたところから交際が始まりました。

結婚を前提にしない、軽い付き合いが10年ほど。

 

美紀は彼の結婚相手では無いことは はっきりわかっているので割り切ったお付き合い。

そんな気安さが気に入って 幸一郎は華子と婚約後もだらだらと時岡美紀と関係を続けていました…

 

とあるパーティで、華子の友人の相楽逸子が 親しげに女性を同伴している幸一郎を発見!

彼が同伴していた美紀とLINEの交換をして、華子と3人で会う約束にこぎつけました。

 

美紀は、以前から幸一郎の付き合い方に疑問を持っていたので、この際、と二人の目の前で、LINEの幸一郎のアカウントを削除して見せました。

今まで強気だった幸一郎が、美紀に切られた途端、未練たらたらのメールやメッセンジャー送りつけてきて形勢逆転、しかし時既に遅し。

 

華子と華子の友達の逸子、美紀の三人が仕組んだのは。。。

 

華子と幸一郎の結婚式に 美紀がゲストとして出席することでした。

 

キャンドルサービスの時に美紀に気づいた幸一郎の反応が面白い^^

 

華子と美紀

結婚しても、華子に無関心な幸一郎。

華子は、幸一郎と付き合っていた美紀に会うことにしました。

ここの二人の会話が読み応えあります。

美紀の言葉がかっこいいです。

 

華子は主体性が無く、穏便にことを運ぶためにNO!と言えない、ふわふわとしたお嬢様。

東京の良いお家に生まれて、なんでも持っている、最強じゃない?と言う美紀に、華子は、それがコンプレックスだと言います。

ベルトコンベア式にぬくぬく生きて 苦労も挫折も知らないから 自分の力で得たことも成し遂げたこともないのです。

 

幸一郎への愚痴を美紀に話すと

 

もっと心を開いて、ちゃんとした会話をしてほしいなら、自分からどんどんぶつかって無理やりこじ開けて、ちょっとずつ関係築いていかないと

中略

奥さんなんだし、一生ずっと、関係は続くんだから、もやもやしてるんならちゃんと言った方がいいよ。自分はこうしたいんだって主張できるようにならないと。

旦那さんじゃない他のだれかに愚痴言ってすっきりしても、何の解決にもならないもん。

 「あのこは貴族」258ページより

 

あ~なんと明快にバッサリ斬ってくれるのでしょうか!素晴らしい♪

 

私事ですが、以前、我慢して穏便にことを運んでたことがありました。

友人が、「喧嘩を恐れちゃだめだよ、はっきり言って解決しないと!」 とアドバイスしてくれました。本当にありがたいお言葉でした。

 

華子は、相手に対して不満があっても、自分に非があるのかと思ってしまうタイプでした。

嫌われたくないから我慢する。

一人で生きていけないから結婚に期待する。

他力本願の事なかれ主義。

 

華子の生活は、羨ましくもあり、鬱陶しくもあり。

でも、華子のような、人間には絶対なりたくないと思いました。

 

終章では、

周りに多大な迷惑をかけて華子は離婚しました。

ヴァイオリンで活躍する友達の逸子のマネージャーとして働きだした華子。

ある日 逸子のコンサート会場となった店で偶然幸一郎出会った時、対等に話をできるようになった自分がいることに気づきます。

 

美紀が言ってたのは、こういうことだったのだ、と初めて悟った華子。

 

お嬢様すぎるのも大変だ…

 

テレビもスマホも、そしてSNSで見ず知らずの人とでも繋がれる現代。

こんなに、世間知らずで主体性のない現代人がいるのだろうか?とちょっと疑問。

 

フィクションですから 誇張されているとは思いますが「絶滅危惧種」??? ^^;