宝塚歌劇で上演が決まった『夜明けの光芒』。
この作品の原作がチャールズ・ディケンズ著『大いなる遺産』という事なので、読んでみました。
上下巻の長編で、読みきれるか=最後まで読み通す根気があるか、試される小説なので、読む前にちょっと怯みました ^^;
読みきれないのなら時間の無駄だから、別の本読んだほうがいいし…
目次:
迷った末に読んだら…不朽の名作と言われるだけある面白さ
上巻 Amazon★4.3 ★5=54%
下巻 Amazon★4.5 ★5=62%
あらすじは、新潮社HPより ↓
上巻
優しい鍛冶屋の義兄ジョーに育てられている少年ピップは、あるクリスマス・イヴの晩、脱獄囚の男と出会う。脅されて足枷を切るヤスリを家から盗んで与えた記憶は彼の脳裏に強く残った──。長じたある日、ロンドンからやってきた弁護士から、さる人物の莫大な遺産を相続することを示唆されると、貧しいながらも人間味ある生活を捨て去り、ピップは大都市ロンドンへと旅立つのだった……。
引用元:新潮社HP
下巻
ロンドンへ到着し、遺産に相応しい紳士となるべく、贅沢な生活を送るピップ。花嫁衣裳を着て隠遁生活を送る老婦人ハヴィシャム、その養女でピップを魅了するエステラ、再び姿を現した元脱獄囚マグウィッチなど、ピップは周囲の人々の思惑に翻弄される。その危うい運命はどこへ通じているのか。痛烈なユーモアと深い情感で、人間世界の悲喜交々を描いた、イギリス最大の文豪の代表的傑作長編。
引用元:新潮社HP
大勢の登場人物が複雑に絡み合い、大河ドラマのように山あり谷ありのピップの波乱万丈の人生を描いています。
冒頭の、ピップが実の姉や義兄のおじからひどい仕打ちを受け、嫌味を言われる場面が辛く、心が折れそうになりながら読みました。
ピップに遺産が入り、村を出て友人のハーバート、弁護士のジャガーズ、ジャガーズ法律事務所のウェミックとの交流が、物語を立体的にしています。
子供の頃に墓場で出会った脱獄囚のマグウィッチがピップの前に現れてからは、さらに面白さが加速!
⚠️ネタバレあります、ご注意ください
個性豊かな登場人物たちが、物語を深く濃く描いていく
貧しい鍛冶屋の姉夫婦に育ててもらったピップに、大いなる遺産が転がり込んだことにより、運命が思いも寄らない方へと転がっていく壮大なドラマ。
上下巻ある長編小説なので、登場人物も多いです。
それぞれの登場人物にもドラマがあり、重厚に人間関係が重なっていくのです。
ピップの姉は口うるさく意地悪ですが、血の繋がらない義兄・ジョーがピップを守ってくれるので救われます。
親戚のパンプルチュークおじさんも、何故いたいけな子どもにそこまで言う?というぐらいピップに圧をかけて、怖がらせ、嫌がらせをします。
大金持ちのミス・ハヴィシャムは、結婚式当日に婚約者に裏切られてからというもの、隠遁生活を送っています。
養女のエステラの遊び相手に、とピップに白羽の矢を立てたのに、エステラとともにピップに辛く当たります。
著者がピップに辛い思いをさせるのは
読者を味方に付けて、先へ先へと誘うためなのでしょう。
上巻の前半は、ピップはこれでもか、と苦労させられますが、だからこそ、遺産が転がり込んできてロンドンでの憧れの豊かな生活、紳士修行との落差が面白いのです。
意地悪で高慢な美少女・エステラへのピップの恋慕は、子どもの頃から変わらず、どんなに冷たくあしらわれても、一途。
そんなピップに好意を寄せている心優しいビディ。
ピップに遺産が入ることを告げた敏腕弁護士のジャガーズは、クールで人情味のない男。
弁護士事務所のウェミックには、公私において交流があります。
紳士修行先のポケット氏(ミス・ハヴィシャムの親戚)の息子・ハーバートは好青年でピップは意気投合して…この二人の友情は読んでいて救われます。
突然現れた、遺産の送り主、マグウィッチ。
エステラは、ピップに当てつけのように、ベントリー・ドラムルとの結婚を決めます。
「見栄と貪欲と暴虐と卑劣の塊」(出典:下巻P413)と形容されるベントリーは、彼女をこき使った挙げ句、事故で亡くなりました。
ラスト付近でわかるのが、エステラの出自。
なんと、美少女・エステラの父はマグウィッチだった!?????
エステラの母は、弁護士宅で家政婦をしているモリー。
モリーは人殺しの嫌疑をかけられていたところをジャガーズに弁護してもらい勝訴。
その代わりに、まだ幼かった一人娘(エステラ)をミス・ハヴィシャムの養女として出したのでした…
マグウィッチを陥れた悪人・コンペイソンは最後に、やはりマグウィッチの人生にたちはだかるのです。
ピップの姉にも大怪我を追わせたオーリックは、執拗にピップの命も狙ってきます。
苦労の多い前半の子供時代と ロンドンに修行に出て以降の二部構成
ピップの子供時代を読むのが辛いです。
貧しいだけでなく、姉の容赦ないいじめにも苦しめられて。
ピップは義兄のジョーに救われ、よき相棒、よき鍛冶屋の親方、と慕っていたのに
自分がロンドンに紳士修行へ行くと決まった途端、貧しい身なりのジョーを疎ましく感じてしまうのでした。
時折ジョーを裏切ったことへの後悔にさいなまれるピップ。
あれほど抜け出したかった鍛冶屋の貧しい暮らし。
でもそこには愛がありました。
姉の面倒を見てくれる優しいビディすら軽んじてしまうピップは、お金によって傲慢になってしまうのでした。
ロンドンでは、大きく話が動きます。
Amazonでも上巻より、下巻の評価が高いのは、下巻にドラマがぎゅぎゅっと詰まっているからでしょう。
遺産を預かる弁護士から、潤沢な資金を与えられて学んでいるピップの元に、元脱獄囚がやってきてラストへなだれ込んでいきます。
ピップを紳士にしてくれたのは、誰あろう、あの幼い日に出会った脱獄囚だったとは。
幼い頃の恐怖が蘇ったピップでした…
脱獄囚のマグウィッチは、ピップが家から持っていったヤスリで足枷を外し海外へと逃げ、財を成しました。
自由を得て、ピップへの恩返しをしてくれていたのです。
ピップがやがて、マグウィッチに心を開いて行くところは、優しい気持ちで読めました。
後半は怒涛の展開で、上巻とは違ってスイスイとページが進みました。
宝塚歌劇の原作として
原作本が名作なので、見ごたえのある舞台になりそうです。
長編小説なので、どの部分を切り捨て、どこをデフォルメして感動にもっていくのかは、演出家にかかっています。
宝塚では、必ずしも役の比重が小説のそれと一致しませんから、展開次第で、役の重さが変わることもあると思います。
先日、配役が発表になりました。
鍛冶屋のジョーの弟子のオーリックなどは名前が出てなかったです。
お姉さんに重症を負わせ、ピップを殺しに来る悪党なのに。
あれもこれもと入れると散漫になってしまいますから、ここはバッサリ切り捨てたのかもですね。
自分のありったけのお金をピップに与えてくれた脱獄囚・マグウィッチ。
彼の因縁の宿敵、コンペイソンはラストでマグウィッチと一戦交えます。
が宝塚歌劇ですから、ピップとエステラの関係をガッツリ描くのでしょう。
文字を教えてくれた心優しいビディにも心を残しているので、そのあたりも描かれるかな?
恋敵として、エステラの婚約者のベントリー・ドラムルは小説ではほとんど出てきませんが、宝塚では大きく描かれる…そんな配役が出ました。
どのように演出されているのか、観劇が楽しみです♪
分かる人にはわかる、配役表
⚠️配役表は宝塚歌劇公式HPより引用
オールキャスト、適材適所で楽しみです!
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