ミステリーというジャンルは、謎解きが面白くて、以前よく読んでいましたが、最近は、青山美智子さん、伊吹有喜さん、瀬尾まいこさん、町田そのこさんら、心がほっこりする ややライト目の作品を読んで癒やされています。
最近読んだ本、今年の本屋大賞『同志少女よ、敵を撃て』(逢坂冬馬)、昨年話題になった『小説8050』(林真理子)が読むのが苦しいヘビーな内容の本でした。
今年6月3日に出版されたばかりの 伊岡瞬著『朽ちゆく庭』を読みました。
新聞に広告が出てたので、読んでみました。
Amazon評価 ★3.9
⚠ ネタバレありますご注意ください
セレブタウンに引っ越して幸せ家族に見えていても…
家族の心はバラバラでした。
前半は、陽一、裕実子夫婦と一人息子・真佐也の山岸家の家族三人、それぞれの秘密が描かれています。
セレブタウンに庭付き一戸建てを買ってやってきた一家は、周りの目からは人も羨む家族に映っていましたが…
ゼネコン勤務の夫は、コンプライアンス違反で自宅待機を命じられていて、職を失うかどうかの瀬戸際、もちろんなぜ自宅待機になったのか、家族には内緒。
子会社の営業の女性と不倫もしていました。
中学生の息子は、最近、学校に行かず部屋に閉じこもっていて、ゲームばかりしてろくに口をきこうともしません。
裕実子は、パートで働く税理士事務所の所長と不倫関係にありました。
そして、パート仲間で息子の友だちの母でもある相沢に執拗に誘われて自宅に遊びに行ってみると…所長との不倫以上の最悪の事態に。しかもカメラがその一部始終を捉えていて…
ある日、裕実子が友人宅から帰って、階段下の物入れを開けてみると…そこには…
そこから一気にテンポよく、進みます。
冬の寒い日にずっとひとりで公園にいた8歳の女の子が横たわっていました…いえ、死んでいました…。
以前、真佐也が、寒いだろうから、と温かい飲み物を用意してあげた、家庭的に恵まれていない女の子、あかりでした。
ここからラストまで息をもつかせぬ展開でぐいぐい読者を引っ張っていき、一気読みです!
警察が来て、親子3人はビジネスホテルで事情聴取を受けます。
別室に隔離された真佐也は、「自分がやった」と自白しますが、誰かをかばっていた、ことが判明、二転三転。
読書の楽しさを味わいました。
伊岡瞬作品に登場する白石弁護士が今回も良い働きをして、真佐也のために落ち着いて、でも行動は速やかに働いてくれました。
白石弁護士、警察の事情聴取…真実へ近づいていく楽しさ
真佐也は、「自分がやりました」と友達をかばい。
最後に山岸家を出た友人の純二も「自分がやりました」と認め
本当は、パート仲間の相沢の息子の恭太が「失神ごっこ」を提案して、ロシアンルーレット、と皆で代わる代わる8歳の女の子あかりちゃんの首を締めたのだと、事の顛末を琉生が、自首する前に裕実子に電話で話してくれました。
ぐったりしたあかりの鼻と口を覆って止めを刺したのは純二だけれど、その前のいじめグループよりも更に前に、あかりの首を締めたのは…実は真佐也だったのです。
まだ、母親にも話していないこの事実を、弁護士立ち会いのもとで話すことを決意した真佐也。
…完。
父・陽一の言葉 自分で蒔いた種を刈り取る、それが人生だ
陽一は、子供に無関心でエラソーで独善的な嫌な父親ですが、この言葉にはうなずけました。
先日読んだ林真理子さんの『小説8050』に登場する父親も、同じタイプでした。
読んでてモヤモヤしました。
かなりのイヤミスでしたが、読後感は爽やかでした。
タイトルは、「朽ちゆく庭」
家庭は崩壊していて求心力を失っています。
憧れの庭付きに一軒家に移り住んで、素敵なお庭にしようという夢も潰え、家庭崩壊寸前の山岸家を庭に例えての朽ちゆく庭。
それでも、陽一は自宅待機が解かれて、出社を始め、裕実子はパートを退職して悪縁を裁ち、家は売ることになりました。
以前のように穏やかな日々が戻ろうとしている希望がうっすらと感じられて良かったです^^