旅とバイクにまつわる4編が収められた短編集
昨年末に同僚がオススメしてくれた原田マハさんの本です。
私が初めて読んだ原田マハさんの本は「楽園のカンヴァス」、2012年の作品でした。
この「さいはての彼女」はその4年前の2008年に出版された本で、タイトルすら知りませんでした。
敏腕若手女性社長、涼香。失恋と社内の内紛でくたくたになり、失意のまま出かけたバカンスは行き先違い。だが一人旅の途中での、予想外の出会いが心を解きほぐしていき…。風と愛情にみちた、ヴァカンス・ストーリー。
図書館HPより引用
- さいはての彼女
- 旅をあきらめた友と、その母への手紙
- 冬空のクレーン
- 風を止めないで
の4編です。
ページの上2.5センチ、下4センチが余白なのであっという間に読めました😊
1話 さいはての彼女
バリバリの女社長・涼香が、バカンスで沖縄に行くはずが、秘書の手違いで用意されていたのは女満別空港行きのチケットでした借りたレンカーは今どきにはないポンコツ。ナビもついてないのでホテルの場所がわからず道端で途方にくれている時に助けてくれたのがハーレー(ハーレーダビッドソン)に乗った女の子。
明るく元気で、バイク仲間に人気のナギ(凪)という少女が、プライドと過去の確執で固くなっていた涼香の心を温かく解きほぐしていきます。
凪のバイクにタンデムで乗って風を感じて、夕日を見て。
青春ドラマみたいだけれど、やっぱり鉄板の感動シーン。
凪が、本当に大切なものは何か、を涼香に気づかせてくれて、じわ~と温かいものがこみ上げてきます。
「さいはて」は、凪の愛車・ハーレーダビッドソンの愛称なんです^^
2話
原田マハさん著「ハグとナガラ」に出てくる波口喜美(姫路出身)と長良妙子(小豆島出身)の、関西弁の会話が楽しい章。
35歳まで都内の大手広告代理店で働いていたハグチは、完璧な人生設計を思い描き、そのために努力を続けていましたが、
交際相手に「俺は君の成功のアイテムじゃない」といきなりの別れ。
そこから、仕事も空回り、気づけば会社を辞める羽目になっていました。
再就職も難しいお年頃のハグは、リフレッシュの旅にでようと長良と計画していましたが…
いつも一緒に旅していた二人だけれど、ナガラのお母さんが入院することになり、ハグチは1人で伊豆・修善寺のホテルへ。(ラフォーレ修善寺かも?^^)
最初は女1人旅であることを意識していたけれど、次第にナガラとナガラのお母さん、故郷でひとり頑張っている母親のことを思い出し、
入院中のナガラのお母さんに当てて手紙を認めるハグチ。
いつか4人で旅しましょう、と。
あまり、読みどころのなかった章。
3話 冬空のクレーン
このお話も、東京で都市開発に携わり、開発チームを率いていると自負していた課長補佐の陣野志保が、北海道で心癒されるお話。
バリバリ働いていた女性が、北海道での出会いで、本当の幸せに目覚めていくところが素敵です。
「さいはての彼女」と通じるところがあります。
大切な仕事を放り出して真冬の北海道に、丹頂鶴の保護区を訪ねていって、雄大な自然の中で、自分があくせくしていたことに気づきます。
建設現場のクレーンと、鶴(英語でcrane)を掛けてあるのが著者の遊び心を感じました。
4話 風を止めないで
1話の続き。
凪は、山梨県出身。
凪の父は凪とハーレーに乗って出かけてトンネル事故で亡くなっていて、母娘の二人暮らし。
凪は父が愛したハーレーのカスタムをする工場で働いています。
だから旅先でバイクの調子が悪くなったライダーの愛車も、通りすがりでも、油まみれになって直してあげられるのです。
ある日、凪がツーリングで留守にしているときに、ハーレーのポスターに出てくれないか、と広告代理店の男性が訪れます。
凪の母は断るのですが…
実は訪ねてきた男性は… そして、凪の母は…と予想外の展開^^
ハーレー乗りは「一分一生」。
一分話しただけで、一生のおつきあいになるのだ、と。
夫を亡くしたことで、心が硬くなっていた凪の母は、凪のように、過去にとらわれず、明日を生きよう、と決意するのでした…
バイク乗りのように、風を感じる4編。
読後感爽快な一冊です。