happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

【一穂ミチ】【本屋大賞・直木賞候補】『光のとこにいてね』|惹かれ合う二人の運命

本屋大賞3位、一穂ミチ著『光のとこにいてね』を読みました

Amazon★4.3 ★5=56%

 

 

ゆず(小瀧結珠)と、かのん(校倉果遠)の別れてもまた出会う運命の物語。

 

462ページ、読み応えがありました。

 

第一章 羽のところ (6〜69ページ)

第二章 雨のところ (72〜185ページ)

第三章 光のところ (188〜462ページ)

の3部編成。

 

第一章は小学2年生のゆずとかのんの出会い

第二章は高校1年生になった結珠と果遠の再会

第三章は30歳、結婚後に再会、ふたりの思いが周囲の人を巻き込みぶつかり変化をおこします。

 

小学生の頃、2人が経験したこと、感じたこと思ったこと、

高校時代の短い期間、2人の思いや行動。

 

それらを踏まえて綴られる大人になった二人の物語。

 

ゆずとかのん、交互に綴られる二人のモノローグは、出来事に対する視点が違っているから、それぞれ補って立体的に浮かび上がってきます。

 

プロットが巧い。

読まされました。

 

家庭環境が全く違う二人の共通点は、母親で苦労しているところ

以下、ネタバレあります、ご注意ください。

 

 

 

結珠の父親は医師で裕福な家庭に育ちました。

きっちりと躾けられ、私立の小学校に通いたくさんの習い事をしています。

が、母親の締め付けが厳しく、愛在る躾けではないのを感じていました。

 

結珠はある日、母に連れられて古びた団地に行き、そこに住む果遠と出会いました。

 

彼女の身なりはみすぼらしかったけれど、素直な果遠に好感を抱きます。

 

果遠もまた、だらしのない母の犠牲者でした。

父も誰かわからず、母一人子一人で荒んだ家の中。

「無添加」食品にこだわる母は、果遠にお菓子も食べさせず、塩と酢で洗髪させ…

そんな母は、自分のことで精一杯で娘には無頓着…

 

正反対の家庭、過干渉の母親と無関心な母親。

ふたりは口には出さないけれど、なんとなくおそれぞれの生きづらさを察していました。

 

果遠は週一、結珠と会って遊ぶのを楽しみにしていたのに、あることがきっかけで彼女は団地に来なくなりました。

 

お別れの言葉もないままに…

 

まさかの再会! 結珠の通う私立高校に果遠が??

エスカレーター式で上がったS女の高校に通う結珠。

高校1年の始業式の日に、外部入学生の中に果遠を発見します。

どうしても結珠に会いたくて、結珠の高校の奨学金特待生として入学、偶然にも同じクラスになった果遠。

 

美人の果遠は注目の的でしたが、誰をも寄せ付けないオーラを放っていて‥

結珠とだけは、会えなかったときを越えてまた繋がっていきます。

8年の空白を埋めるように、前以上に強く結びつくふたり。

結珠は、「強くて賢くて、自分の気持をはっきり言える」(P161) 果遠に憧れていました。

ずっと続くはずだった高校生活は

果遠の母の夜逃げ連絡先も知らされないまま、ぷっつりと関係は途絶えてしまいました。

 

また時を経て再開した二人

将来の夢は医者、と親の手前表明していた結珠。

子供のころ、時計を読めない果遠に時計の読み方を教えて喜んでくれたことがうれしかった、本当は小学校の教員になりたかった、と気付き教壇に立った結珠でしたが、

学級崩壊で教室に入るのが怖くなり休職中。

 

環境を変える為、知り合いの持ち家(和歌山)に引っ越してみると…その町の飲み屋で果遠は「美人のママ」をやってました。

夫と子供にも恵まれて幸せそうで、あまり幸せそうでもなかった…

 

大人になってからの二人は、さらに多くの柵の中で生きています。

結珠と果遠の互いを求める心、案じる心は更に強くなっていくのに、

磁石のSとS、NとNのように近づけても離れてしまう運命なんですね。

 

もどかしくて、何故こんなに苦しくて、うまく行かないのだろうとやきもきしながら読み進みました。

 

結珠とは一緒にいたいくせに逃げ出してしまう、最後の最後までやきもきさせられっぱなし!!

 

果遠!

 

多くのテーマが盛り込まれた第三章「光のところ」

パッヘルベルの「カノン」やギュスターヴ・ル・グレイの海と空の写真が一貫するモチーフとしてストーリーに絡み巧いなぁ…と思いました。

 

家族関係が希薄な結珠の家庭。

長年関わってこなかった結珠の兄弟や、問題ありの母親のこと。

一見幸せそうな果遠の家族の根底にある問題…

 

第一章、第二章を踏まえて、一気に第三章で物語が立ち上がる感じ。

 

読後、胸の中に熾火があるかのように、いつまでも二人のことを考え続けてしまいます。

 

作者の一穂ミチさんは、「名前のつけられない関係を描きました」とおっしゃっています。

結珠と果遠は友達以上、恋人未満? 

分かち難いけれど、共に生きるというのもまた違う…

常に魂が求め合い、抗っている、その真摯で不器用な、これも「愛」?