お出かけに連れていける、軽く読める文庫本を、と、以前読んだ『東京すみっこごはん』の著者、成田名璃子さんの作品から、
『今日は心のおそうじ日和2』を選んで借りました。
いきなり、『2』だけど気にしないw
Amazon ★4.3 ★5=54%
目次:
四章から成るお話です
- プロローグ
- 第一章 嵐を呼ぶ弟子
- 第二章 彼女が眼鏡を外したら
- 第三章 不都合な真実
- 第四章 縁側のメリーゴーラウンド
第一章、不穏な空気を運んでくる「嵐」とは…
主人公・平沢涼子が住み込みで家政婦をしている 高名な作家のところに弟子入りする、とやってきた若い女性・結菜。
彼女の言動にいちいちイライラさせられて、先へ先へと…
そして、一気読み!
2時間ぐらいで読めました。
大作家さんの住み込み家政婦の涼子の心を逆撫でする訪問者
読むと前を向く元気が湧いてくる。自分がもっと好きになる魔法の家事の物語
大作家の住み込み家政婦となった私。それは思いもしない安らかな日々を与えてくれた。けれどその生活は突然終わりを告げる。若い女性が弟子入り志願してきたのだ。
彼女はたちまち先生の心を掴んでしまう。居場所を失ったかのように感じる私には、見合い話が持ち込まれ……。
すれ違う想い。誰にとって何が幸せか。こんがらがる、それぞれの想いの結末は?
心が淀んだときは家事をしよう──それは自分を変える魔法の時間。なにげない毎日が奇跡になる物語、再び。引用元:メディアワークス文庫HP
子連れ離婚したばかりの平沢涼子は、実家に戻るも居場所がなく、母は世間体が悪いから、と外出するのもいい顔をしない。
縁故で紹介されたのが、妻と娘を亡くして荒れた家に一人で住んでいる作家・山丘周三郎宅の住み込み家政婦でした。
山丘先生は娘を10年ほど前に、妻を2年前に亡くしています。
気難しく無口な作家は、涼子の娘・美空を可愛がってくれて3人暮らしは平穏だったのに…
ある日弟子入り志願の22歳の女性・結菜が現れて平穏が破られます。
結菜は神経を逆撫ですることを言い、
手伝うと言っては一日に1回は、食器を割ったり、花瓶にいけてあったお月見用のススキを捨てたり…失敗や粗相の連続。
家政婦の涼子はイライラが募っていきます。
そして読者のイライラも募っていく!!
家事を邪魔されてイライラする涼子の気持ちをよそに、娘の美空は結菜に懐き、作家先生は、結菜にとても寛容。
それがまた、涼子と読者の心を苛立たせていくのでした。
もう!どうなるのっ!!とページをめくる手が止まらない!!
途中からはミステリー要素濃厚
山丘周三郎付きの編集者・川谷が、家の中の雰囲気がおかしいのを察していました。
彼もまた、結菜のことを怪しんでいて…川谷なりに彼女の身辺、身元を調査してくれていました。
心強い!頼んだよ!!と調査結果が楽しみ♪
彼女は何者??
サイドストーリーとして、涼子のお見合い、美空の問題
山丘周三郎先生とは、雇用主と家政婦の関係、と割り切っているものの、
先生と馴れ馴れしくする結菜を見ていると、心がざわつくのを覚える涼子。
そんな時に実家の母から見合い話を持ち込まれ、会ってみることに。
逃げ場を求めているようで申し訳なく思いつつ会ってみると、涼子が書いた、家事の指南本の読者で、自身、掃除が大好きな男性でした…
デートはお掃除ミュージアム ^^;
3回目のデートを失念してしまい、そこでお別れ、となりました。
3回目のデートの日は、娘の美空の学校での悩みを聞き出す為の遊園地行きでした。
涼子が熱を出したため、行けなくなった美空の授業参観を周三郎先生が代理で行ったときのこと。
たまたま担任の久我先生と美空のやり取りを聞いてしまい、先生との関係に問題があるのではないか、と気づく先生…。
さすが、小説家だけに人間観察と洞察力が優れています。
⚠️以下、ネタバレあります、ご注意ください
押しかけ弟子入りの片瀬結菜とは…
結菜の妹の玲奈でした。
本当の片瀬結菜は、作家志望で野生近代新人賞に応募したものの、山丘が酷評し、大賞を逃したことでもともとの病気が悪化し、亡くなってしまったのだと言います。
姉の死は、山丘のせいだ、と言わんばかり。
山丘は、片瀬結菜の才能は認め、別の作品で大賞を取れると確信していました。
川谷の同期の編集担当が片瀬を推していて、次こそ受賞が叶うよう、きめ細かいやり取りをしていたことも明かされます。
玲奈は誤解していたことにようやく気付かされたのでした。
落ち込んだ時、イライラした時、掃除するに限る!
気分が沈んだ時、イライラした時、何か無心に作業するのがいい、というのは納得です。
ちょっと夫婦喧嘩したときなど、無言でバタバタ掃除したり磨いたりするので家がきれいにった経験があります(笑)
心もお掃除されるのかな?
姉の死の原因を山丘先生のせいにして怒っていた玲奈さんは、まだ生前のままにしてあった、先生の愛娘・香乃ちゃんの部屋の片付けに参加することに。
山丘先生もようやく香乃ちゃんの荷物を整理して自分の気持の整理も整理する気になったようです。
整理や掃除は心が「整う」んですね。
妻と娘を亡くした山丘先生の印象的な言葉
「この世界でどれくらいの時間を過ごすかは、生まれて来る前に、あらかじめ自分で決めてくるんじゃないだろうか」(P213より)
それが運命なのだ、と。
そう考えれば、逝く者も、残された者も気が楽になります。
最愛の家族を失った先生が孤独の中でたどり着いた答えなんだと思いました…
玲奈さんは弁護士事務所の秘書
「仕事柄、訴訟関連の書類なんかを見る機会が多いんですけど、相手に不利な証拠としてよく上がっているのが、録音テープの声なんです。
なので、美空ちゃんがもし学校の先生を告発したいなら、言い逃れをされないように、録音しておくべきだと思います。これ、どうぞ」
出典:『今日は心のおそうじ日和2』P229
ペン型のレコーダーを差し出して…本当はこの家で使おうと思っていたが、紳士的な山丘から、なにも告発できる音声を録れなかったらしいです。
美空の学校の教師のパワハラを知って背中を押してくれたのでした。
「このハゲーーーーっ」を録音していた議員秘書さんの件を思い出しました。
証拠は録音、それが身を守りますね。
山丘先生の涼子へのほのかな愛?
涼子のお見合いも、
片瀬玲奈にかき回された日常も、
涼子の娘・美空のことも
なにより、涼子自身を、少し離れたところから温かく見守っている山丘先生。
多くを語らない先生の言葉には、多くを語らないこその思いが濃厚に詰まっていて…
涼子は、先生の気持ちに気づいているのに遠慮してしまうし、
読者はもどかしい!!
この作品は『2』ですがシリーズになってるんでしょうね。
先生と涼子の今後を読んでみたいです。