⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【辻村深月】『嘘つきジェンガ』読了|詐欺にまつわるお話3編

全284ページ、読み始めたら面白くあっという間に読めました。

 

振り込め詐欺、オレオレ詐欺、国際ロマンス詐欺…いろんな詐欺がニュースを賑わせていますが…

 

この本に収められた詐欺のお話、どれも最後はほっこりと温かい気持ちになれる、主人公にエールをおくりたくなる内容です。

 

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  • 『2020年のロマンス詐欺』
  • 『五年目の受験詐欺』
  • 『あの人のサロン詐欺』

…の3編が収められています。

 

『2020年のロマンス詐欺』

2020年春、主人公の加賀耀太は山形から東京の大学へと進学しました。

まさにコロナ真っ只中、バイト代で生活費を稼ぐつもりがバイトも見つからず、実家の定食屋もコロナで営業できず…

 

そんな不安な中、地元の友だちの甲斐斗から連絡があり、「簡単なバイト」を紹介してくれるのですが…。

 

ほら、怪しい。

 

闇バイト、と読者は気づき耀太が深みにハマっていくのをハラハラしながら読むことになります。

案の定、バイトの元締めの「怖い人」からどうなっているんだ!と恫喝まがいの電話。

 

耀太は「お金を出してくれそうな人リスト」(過去に詐欺にあったことがある人)を見て、メールを送ります。

その「カモ」中の1人、主婦の未希子さんの悩みを聞いているうちに、彼女とのメールに癒やされている自分に気づきます。

 

ある日、未希子さんから、「助けて、殺される!」のメールが!

緊急事態か!と住所を聞いて行ってみるとそこに、実際に、未希子さんはいましたが、いかにも平凡な45歳の主婦。

Facebookの中のおしゃれに演出している未希子さんではありませんでした。

 

 

今まで夫の悩みを打ち明けられていた耀太は、庭にいた男性に突っかかっていき負傷させてしまい、傷害罪で留置場へ。

 

 

振り込め詐欺のことを気取られてはならない、未希子さんの家庭を守らねばならない、いろいろと考えているうちに…

警察は「コロナ下でストレスを抱えていた青年がカッとなって殴ってしまった」、と結論づけ

被害者からも大ごとにされず、退学も免れ、緊急事態宣言も終わったある日、「未希子さん」から会いたい、と電話がかかってきました。

 

未希子になりすまし、耀太にメールを送っていたのは…(ry


騙すはずの耀太が騙されていた、という落ちですが、ラストシーンはほっこりしました。

 

『五年目の受験詐欺』

数年前、次男がお世話になった「まさこ塾」。

まさこ塾の「特別紹介事前受験」はお受験詐欺だった、一緒に訴えませんか、と知らない女性から電話がかかってきて驚愕する風間多佳子。

 

次男の大貴の受験の際、お受験経験者の母親から声をかけられ、

100万円を支払うことで、希望校の「特別紹介の事前受験」を受けられる、と耳打ちされたのでした。

もし不合格なら、100万円は返ってくるそうなので、のんびりしていて成績がふるわない次男のために、夫に内緒で自分の通帳から100万円を払ったのでした。

 

息子の頑張りを信じず、お金で目の前の合格を手に入れたことを後ろめたく思っていた多佳子。

 

多佳子の葛藤が読みどころ。 

『あの人のサロン詐欺』

仕事は長続きせず、結婚もせずに家でゴロゴロしているから母から嫌味をたっぷり頂戴していた三十路の紡(つむぎ)。

 

紡には大好きな人気漫画作家・谷嵜レオがいて、レオの作品世界は、自分が描いたのではないか、と思うぐらい考え方も、言葉選びも好きでした。

 

紡はファンが語り合う「谷嵜レオ創作オンラインサロン」を開いていました。

谷嵜レオファンとのオフ会も主宰するようになると、もう紡=谷嵜レオとして、一部の熱心なファンから尊敬されていました。

谷嵜レオのようなクリエイターに憧れる人たちに向けての創作講座が人気でした。

みんな、必死で紡の言葉をメモして、耳を傾けてくれる…

 

自分が大好きな覆面漫画家、谷嵜レオとして振る舞うのが楽しく充実していた紡。

ある事件が起きるまでは。

 

谷嵜が覆面作家なのをいいことに、自分が谷嵜レオになりすましているけれど、いつ嘘がバレるのか、とこちらもドキドキしながら読みました。

 

謎の谷嵜レオの素性がバレる事件、全てが終わった…紡はもう大好きな谷嵜の作品を読めなくなること、そして自分が谷嵜を名乗れなくなること、

未来に絶望します。

 

ラスト、急展開ですが、最終ページでかすかな希望を感じさせてくれました。

 

タイトルになるほど〜、納得

「嘘つき」と「ジェンガ」、最初はつながらなかったけれど、

そっか! 

嘘をひとつつくと、その嘘を真実たらしめるために、次々と嘘を重ねる羽目になる、

それをジェンガ、と表現したのですね。

 

相手を慮ってつく「優しい嘘」もありますが、

 

「嘘つきは泥棒のはじまり」、と昔からいいます。

 

ここに出てくる「嘘」は、やだ〜、嘘よ、ウソ!と笑い飛ばせるウソではなく、

全部 嘘つきは「泥棒の始まり」な犯罪絡みでした。

 

3編とも、興味深く読みました。