どのような本を読むのか、その基準は人それぞれですが、
私は、本屋大賞ノミネート・受賞作、直木賞ノミネート・受賞作を中心に読んでいます。
そして、受賞・ノミネート作家さんの著書を読んでいくことが多いです。
読みたい本を選んで、Amazonのサイトであらすじや評価を見て実際に読むかどうかを決めています。
Amazonでは、「お客様へのおすすめ」も出てくるので、そちらも参考に選んでます。
『夢見る帝国図書館』は、以前読んだ心に残る佳作『小さいおうち』の著者、中島京子さんの作品。
404ページ、厚めの本、ようやく読めました。
Amazon ★4.3 ★5=55%
図書館を愛した人々と、図書館に愛された人々の物語
「図書館を愛した」喜和子さんと、「図書館が愛した」人々の物語上野公園のベンチで偶然、出会った喜和子さんは、
作家のわたしに「図書館が主人公の小説」を書いてほしいと持ち掛けてきた。ふたりの穏やかな交流が始まり、
やがて喜和子さんは
終戦直後の幼かった日々を上野で過ごした記憶が語るのだが……。日本で初めての国立図書館の物語と、戦後を生きた女性の物語が
共鳴しながら紡がれる、紫式部文学賞受賞作。引用元:文藝春秋HP
『夢見る帝国図書館』と喜和子さんの物語の二本立て
図書館のルポを書いている「私」は国際子ども図書館(旧帝国図書館)を取材した帰りの公園で、喜和子さんと出会いました。
帝国図書館に深い思い入れのある喜和子さんが語る戦後の動乱期の上野界隈、帝国図書館の思い出…
『夢見る帝国図書館』1話から25話が挟まれ、並行して進みます。
帝国図書館の歴史、戦後の混乱と喜和子さんの子供の頃がリンクして…
ラスト1ページで、ドーンと…
そう来たか…
ラスト1ページの感動のために、403ページ読んだ甲斐がありました!
これは感動!
このプロット考えた中島京子さん、GJ♪
喜和子さんの死後、彼女の生い立ちを紐解いていく過程が読ませます
主人公「わたし」が上野公園で出会った謎多き自由人・喜和子さんとの交流で知った、
喜和子さんが子供時代、一緒に暮らしていたお兄さんに帝国図書館に連れて行ってもらった話が、物語の底流。
喜和子さんは図書館が大好きで、物書きをしていた「わたし」に帝国図書館の話を書いて、とせがみます。
その「帝国図書館の話」が、『夢見る帝国図書館』としてこの本のもう一つの柱になっています。
喜和子さんの来し方は謎でしたが、喜和子さんが施設で亡くなってから、
「わたし」や喜和子さんの孫の「紗都(さと)さん」、
喜和子さんのボーイフレンドの古尾野先生、
喜和子さんの同居人だった東京藝大の雄之助くんたちと生前に語っていた話をもとに紐解いていきます。
ベールを1枚ずつ剥がすように、皆が知らなかった喜和子さんの波乱の人生に迫っていく過程は読まされました。
帝国図書館の成り立ち、歴史を知る楽しみ『夢見る帝国図書館』
現在、帝国図書館の建物は、国立国会図書館 国際子ども図書館として使われています。
写真提供:creampasta様
洋行帰りの福沢諭吉が、近代国家にはビブリオテーキ(bibliothèque)=図書館が必要だ、と説き、明治新政府が帝国図書館を作ることを思いついたところから始まります。
当初、図書館、ではなく「書籍館(しょじゃくかん)」と呼ばれ、湯島聖堂内に設置された博物館に併設されていたそうです。
第二次世界大戦以前の日本における唯一の国立図書館である帝国図書館の歴史が、
永井荷風の父、幸田露伴、夏目漱石、樋口一葉、森鴎外、徳冨蘆花、島崎藤村、田山花袋、宮沢賢治…多くの作家の名前ととも綴られます。
彼らが、帝国図書館(書籍館)に足繁く通っていたところを想像すると…何か親しみを感じました。
いつもお世話になる図書館に改めて思いを馳せました
普段読んでいる本は、ほとんどが図書館の本です。
国立国会図書館 東京本館の目録ホールの図書カウンターの上に刻まれている言葉、
真理がわれらを自由にするところ
国立国会図書館法案・前文に収められたこの言葉はヨハネ福音書8章22節からの引用で、
無知によって日本国民が奴隷とされた時代を歴史学者の羽仁五郎氏は批判しています。
以前、NHKBSで放送していた
文明化によって社会が進歩すると、凶悪犯罪(殺人)が減少していった話。
近代国家にはビブリオテーキ(図書館)が必要という福沢諭吉の主張を裏付けています。
誰でも無料で入館でき、資格があれば無料で図書を貸出していただける図書館の存在は本当にありがたいです。
そのために、今書店が窮地という話題も新聞で見かけました。
こちらは、図書館だけでなく、電子書籍の普及も原因のひとつかな、と思っています。
図書館にご興味のあるかたにおススメの一冊。