happyの読書ノート

読書感想を記録していこうと思います。 故に 基本ネタバレしております。ご注意ください。 更新は、忘れた頃に やって来る …五七五(^^)

久坂部羊著 「第五番」読了♪

新聞広告に
ダ・ヴィンチ・コード』を超える面白さ。
人類の罪と罰を抉る超弩級ミステリの
うたい文句に魅かれ、久坂部羊著「第五番」を読んでみました。


       9f5bc6ab.jpg




ダヴィンチコードは超えてないと思いますけども 
なかなか読ませられる本でした。


が、最後はあれ? ってなんかあっけなかったです 

ネタバレあります ご注意ください 


「無痛」という 作品の続編的な位置づけの作品のようです。


先天性無痛症で 一家惨殺事件の犯人のイバラ。
彼はかかりつけの精神科医・白神に飲まされた薬で
心身耗弱状態にあった為、軽い刑期を終えて社会復帰している。
当の白神医師は、海外に逃亡して自殺していた。

彼の特異な経験を聞きに 新進気鋭の女流日本画家・三岸薫が訪ねてきた。
実は 彼女は非常にグロテスクな画風を売りにしていて、
身体から内臓がこぼれだしたり 身体に肉腫が寄生したりしてる絵を描いていた。
実際殺人を犯したイバラの話を聞くと、インスパイアされるから、と
イバラを取り込む三岸。

創陵大学医学部病院では、見たこともない奇妙な腫瘍をもつ患者が訪れた。
彼の腫瘍は「新型のカポジ肉腫」と名づけられたが 
治療法が見つからないまま患者死亡。

そのうちに 日本中に新型カポジ肉腫の患者が急増していく。

創陵大学医学部の 皮膚科准教授の菅井は
皮膚科が脚光を浴びるチャンス!と内心ほくそ笑む。



そのころ、日本から遠く離れたウィーンで 精神科医の為頼が
患者の音楽学校生 服部サビーネの診察を行っていた。
その縁で、ハンガリー人のドクターと出合った。
彼は、優秀な医師・為頼に、WHOの関連組織
「メディカーサ」への加入を薦めた・・・。
メディカーサの仕事を知ったが 加入を断ったため
命を狙われる為頼。

フィクションですが、なんだかありそうなお話で 背筋が寒くなります。

この、イバラと三岸新型カポジ肉腫と闘う菅井准教授
そして 主人公為頼・・・一見バラバラの3本の軸が 次第に絡まって
一つの縄をなう様に関連があらわになっていきます。





実は 白神医師は生きていた。 
ウィーンで顔を変え、すっかりオーストリア人になりすましていたという・・・・

ありえん! 設定に無理がある!

新型肉腫が 日本で一部の医療関係者にしか知られてない時に
三岸の作品に あたかも、
写真を見て描いたかのような 肉腫が描かれていた。


実は 白神は、以前、画家・三岸の主治医だったので ウィーンから
肉腫の写真を送っていたのだった。

なーんだ、そうだったのかって・・・ 都合がよすぎやしないか?


ウィーンに本部があるメディカーサという団体は
日本の医療に疑問を持っている。
そして その風潮に 警鐘をならすべく
わざと 彼らのもってる細菌の中で「第五番」と名づけられた菌を
日本に蔓延させたのだ!
彼らは世界の健康を掌中に握っているのだ。

その菌は、皮肉なことに、治療をしようとすればするほど病気は悪化し
放って置くと 自然に消滅するのだった。
健康オタクな人ほど 悪化しやすいという ・・・・。

創陵大学医学部の菅井は、躍起になって治療し過ぎたために
(悪くなったところは 広汎切除を希望して 腕や両足を切断 
ついには 命を落とす羽目になった。

最後は急展開で、ストーリーのつじつまを合わせるというか、
張り巡らされた伏線を 回収していくんだけれど
えーーーー? そんなのあり~?みたいな展開。

かなり緻密に練られたプロットだっただけに
最後、ちょっと残念。


ま、作者は この作品で
現代の日本の健康意識に対する警鐘を唱えているのですね。


命は尊い。 全ての命は平等であって、医療を受ける権利がある。
そんな 人権を主張する日本人は 
ヨーロッパでは、きれいごとをいう、と批判されてしまうのです。

本文より 為頼の言葉を抜粋

「新しい薬や手術の開発には臨床試験が必要ですが
それはとりもなおさず人体実験であると言う事実。
新米の医師が一人前になるには、 失敗も含めて
患者を練習台にせざるを得ないという事実。
高度先進医療を行う病院は 治る見込みのある患者を
優先しなければならないので 治らない患者は入院させないという事実。」


病気は撲滅するのが理想だが 、病気が無くなれば医師は困る、
という矛盾。
助かる命だけが助けられて、助からない命は切り捨てることもある医療現場。
きれいごとだけでは済まされない 医療の現実。
そういう矛盾を抱えて 医療は存在するのですね。


メディカーサのフェへールだったか・・の

「人間ドック。 健康な人間をあれこれ検査して、異常の無いことを確かめる。 
われわれからすると奇異なことです。
検査をすれば無駄に終わる可能性が高い。 
検査は症状が出てからすればいいでしょう。
メタボリック症候群の検診も始まった。
政府が検診を主導し、国民も無抵抗に従う。 信じられないことです。」


医者でもある 久坂部羊さんは フェへールの口を借りて
今の日本の医療に対する思いを訴えているのですね~♪