初めて読んだ知念実希人さんの作品は、本屋大賞ノミネート作品の「人つむぎの手」でした。
医師でもある、知念実希人さんらしい、医療系のお話で、感動しました。
もっと知念実希人さんの本を読んでみようと「仮面病棟」。
はらはらドキドキの展開でした。
そして、本作が3冊目。
新聞広告に出ていて、興味をそそられ、期待いっぱいで読んでみました。
地球滅亡へのカウントダウンミステリー!
地球に向けて、巨大小惑星ダイスが接近中。人類は、あと5日で終わりを迎える。人々はその瞬間、『裁きの刻』をどう迎えるのか―。高校生の漆原亮の姉、圭子が殺された。コスモスの咲き乱れる花壇で、全裸で胸にナイフを突き刺された姿で発見された姉は、亮にとって唯一の家族、“世界そのもの”だった。恋人のこともそっちのけで、亮はとにかく犯人を見つけ出し、自分の手で復讐したいと暴走。そして“あるもの”を手に入れるため、クラスの“禁忌”と呼ばれる異端児・四元美咲に接触する。優しく、美しかった圭子を殺したのは、圭子の恋人だったのでは?しかしそれが誰なのかわからない。犯人を追い求めて、亮は圭子が入っていた天文学同好会、そしてダイスを崇拝するオカルト集団「賽の目」に踏み込んでいく…。人類滅亡まであと幾日もない中で、なぜ圭子は殺されなければならなかったのか―。絶望×青春ノンストップタイムリミット・ミステリー!!
BOOKデータベースより
地球に小惑星ぶつかり人類滅亡の前の人間ドラマ、という点で、この前読んだ、「滅びの前のシャングリラ」(凪良ゆう著)と似ています。
「滅びの前のシャングリラ」、とても感動的でした。
地球が滅亡するかもしれない、という絶望の中で、希望を見出していく人たちのお話が。
それぞれが、生き難さを抱えていたけれど、地球滅亡の直前に、希望を見出せてよかった…と、ほのぼのとするストーリーでした。
コロナで先の見えない、不安な時代、世界的パンデミックで地球滅亡とはいかないまでも、人類史上に残る大きな危機に直面していた2020年発刊の「滅びの前のシャングリラ」。
遡ること2年、2018年に、知念実希人さんも、小惑星「ダイス」が地球に向かって来て、地球滅亡するという滅亡前の5日間を描いておられます。
いい話、な部分もあるのですが、全体に違和感と嘘くささを感じて読後感は、はぁ…orzで「滅びの前のシャングリラ」に比べるべくもありません。
なぜか。
共感できない、動機が弱い、ご都合主義
地球滅亡前という「タイムリミット」の中で起きた事件と復讐に燃える高校生。
この作品に高評価をつけている方は、主役の男子高校生・漆原亮の青春物語に感動されている印象。
タイムリミットと早い展開に、この先どうなる??と読まされるジェットコースターノベルですが、真実味がないというか、絵空事というか…登場人物に共感できないのです。
もう、最後の種明かしは、つまらなさすぎて、はぁ?ってなりました。
知念実希人さんだし、面白いかも?と思ったんですが…
⚠ここから先、ネタバレありますのでご注意下さい
ありえない、想像しにくいと思った出来事
・暴力的な父は家族を捨て、母も亡くなり 大学生の姉と高校生の弟の二人暮らし。
生活費は、会計事務所経営の父がたっぷり生活費を送ってくれていたそうです…それでも、大学生と未成年の弟の二人暮らし、って想像しにくい。
・亡くなった姉の火葬に、離れて暮らす父が来て、亮に現金で1000万を渡す
家族を捨てて、不倫相手の元で暮らす父が罪滅ぼし?に亮が要求した1000万を…
振り込みではなく 火葬場に現金で持ってきていた。普通多額の現金は、振り込みますよね。
・姉と弟の関係に違和感
親と縁が薄く、助け合ってきた二人故の親密さはわかるけど、弟の亮が極度のシスターコンプレックスというだけでなく、姉の圭子も、ダイスが降ってくる地球最後の日に一緒に居たいのが弟で、弟は雪乃という恋人と過ごすと思い込み絶望。
それが自らの死を決意させる・・・?
亮の世界のすべてが姉で、母親であり、親友であり、同士であり、恋人だった、と書かれており、私には理解不能。
弟も姉にべったりなら、姉も、最後の日に弟と一緒にいたかったのに拒否されたと思い死にたくなる…
違和感あって気持ち悪い。
・裏社会とつながる四元美咲の存在
クラスメートの四元美咲は、親が裏社会とつながっているので「触れてはいけない存在」とされていました。亮は、拳銃を手に入れるため、彼女に近づきます。
裏社会の人物を登場させることで、拳銃を手に入れられる、警察内の事情もいくらか分かる…と物語の中で便利に使われています。
・嘘くさい状況
1)天文学同好会部屋で、姉に振られた男・魚住が体育座りの状態で死んでいた。喉を切られていた。辺りは血の海…
→ 体育座りしているのに、なぜ喉を切られているのがわかったのか?喉は見えないはずでは?
2)亡くなっている魚住の胸元に自分(亮)と姉がキスをしている写真が貼り付けてあったのでむしり取った。
→ 体育座りをしているのに、胸元が見えるのか? 辺りは血の海なのに、そばに寄ると血を踏んで足跡がつくのではないか?
3)大学近くの駐車場で張り込みをしていた女性刑事の岩田が車の運転席で喉を切られて殺されていた。彼女のスマホを探し出して、串崎刑事宛の予約配信のメールを止めないと、自分が犯人にされてしまう!
→ ジャケットのポケットを探るのはわかるとして、ズボンのポケットも探る?運転する時に、ズボンのポケットにスマホを入れる人がいるでしょうか?運転しにくいのに。
・拳銃が改造拳銃で最後で都合よく壊れる
亮が四元の紹介で裏社会の男から譲ってもらった拳銃は、モデルガンを改造したもの。
強度はないので、何発も撃つと壊れるという代物。
ラスト、その銃を拾った相手は、亮に銃口を向けて来て大ピンチ!!とおもいきや、相手が引き金を引いた瞬間、暴発して壊れてしまい、相手は手に怪我をしたが亮は命を落とさずに済みます。
・カルト集団「賽の目」の存在と姉
姉・圭子が所属していたカルト集団「賽の目」。
10ヶ月前に圭子の通う大学の哲学科の小田桐教授が立ち上げた、「ダイス」をスピリチュアルに捉える集団。
亮は、この教授を殺すつもりで会いに行く。彼の名刺の裏に書かれた自宅住所を頼りに。
個人情報を名刺には記載しないのが普通だけれど、ここは著者都合で、書いてあることになってます。^^;
・便利なワード「地球滅亡が近いからみんな狂っている」
この一言で、どんな状況も肯定されてしまいます。
四元美咲は、母親が学校に乗り込んできた時に、暴力団風の男を連れて校長に土下座させたことで、クラスメートから敬遠され、孤立していました。
彼女の母親との関係や生い立ちや生活もなかなかありえない設定で、「そんなことある?」と思います。が、そう書いてあるから仕方なく納得して読む感じでした。
でも、彼女は、いつも小高い丘の上のブランコのところにいて、亮の心の拠り所となっていきます。
四元は、亮を唯一の「友達」として、力を貸してくれ、暗示に満ちた言葉をかけて導いてくれるのでした。
はぁ??なことが多い作品でしたが、四元の存在が救いでした
これを「青春小説」と捉えてる方もいらっしゃいますが、亮と四元美咲との関係、恋人だと思っていたが本当は姉の代替品だったクラス委員の日下部雪乃との関係がそう思われたのかもしれませんが・・・青春小説というにはちょっと違うかな?というのがワタクシの感想です。
雪乃とは身体の関係もあった亮。その雪乃を姉に見立てていた、という事で…ちょっと気持ち悪い。雪乃にも失礼です。
一番納得できないのが事件の全貌がわかる衝撃のラスト!!
⚠重要なネタバレがありますので、ここから先は自己責任でお読み下さい
スクロールしてください。
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裁きの刻の1時間前。
姉のスマホを使って、連絡を取ってくる人間と 姉が死体で発見された植物園の花壇で待ち合わせをしています。
そこに現れたのは…
亡くなった魚住の恋人・東雲香澄。
魚住ではなく、圭子を愛していた、といいます。
香澄の口から事件の流れが語られます。
真実は…
圭子のことが好きだった香澄は、亡くなった本人の圭子のシナリオどおりに動いていただけ。
この殺人は、圭子自身が仕組んだものでした。はぁぁぁぁ??
周りの人を巻き込んだ壮大な自殺。
人類滅亡まであと幾日もない中で、なぜ圭子は殺されなければならなかったのか―。
とBOOKデータベースにありますが、
香澄に殺してもらったの。
弟が地球最後の日に一緒にいると言ってくれなかった、というぐらいで死にたくなるものでしょうか?
たったひとりの、わかり会える家族から一緒に居られないと拒絶されて寂しいかもしれないけど。いや、拒絶という程のものではないと思うけど、圭子はそう受け止めた。
どうせ ダイスが地球にぶつかれば死ぬのに。
自分が死ぬことにより、最愛の弟を苦しめてどうするの? すごくエゴイストなお姉さん。
嫌な感じがするのは、香澄に自分を殺させていること。
自分のために誰かが殺人罪に問われてしまうのに? ものすごいエゴ(自己中心的)だと思うのだけど。
そんな行動も、ダイスが降ってくるから圭子は「(頭が)おかしくなった」ということで片付ける著者?
亮の姉の圭子は、自分のことを一番に思っていてほしくて、亮が「殺人犯に復讐するようにしむけた」。そうすることで、亮の圭子への思いがより強くなると思って…
それが、この300ページ以上ある本の事件の真相? がっかり。
そもそも、自分が死んだあとで、全裸で公演の花壇の中に置いてって頼むかしら?
ものすごい違和感。
冒頭で、センセーショナルな事件に仕立て上げて興味を持たせるためか、とちょっと鼻白む思い。
もう、シチュエーションから、疑問だらけの 本作。どーでもいいw
真相がわかって、すっきりするのではなく、もやもやしてしまった
誰が犯人か?と、亮が残された時間の中で犯人を追っている時が一番おもしろかったです。
「ダイスのせい」でみんな狂っている、ことになってるし、四元の知り合いの男が非合法のものを調達してくれるので、結局なんでもあり、なんですよね。
著者にとって、ものすごく都合がいい、話書きやすい。
同じ 小惑星が降ってくる設定のカウントダウンミステリーの「滅びの前のシャングリラ」がじわ~っと胸に響いたから、知念実希人さんの作品がつまらなく思えました。
「人つむぎの手」が、感動作だっただけに、がっかり感は大きいです。
いや~、「落日」といい、「神のダイスを見上げて」といい、先が気になって、2冊続けて速いペースで読んだので、ちょっと疲れてます^^
原田マハ著の「リボルバー」は、ゆっくりと味わって読もうと思います。
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