直木賞受賞作 まほろ駅前多田便利軒を読みました。
映画化もされ、タイトルは、よく聞いていましたから気になっていて・・・
ようやく本をゲットしました。
まほろ市は東京のはずれに位置する都南西部最大の町。駅前で便利屋を営む多田啓介のもとに高校時代の同級生・行天春彦がころがりこんだ。ペットあずかりに塾の送迎、納屋の整理etc.―ありふれた依頼のはずがこのコンビにかかると何故かきな臭い状況に。多田・行天の魅力全開の第135回直木賞受賞作。
BOOKデータベースより
ネタバレあります、ご注意ください。
多田は、まほろ駅前で1人で便利屋を営んでいます。
年明け早々、庭掃除と横中バスの「バス停を見張る」という仕事を終えて帰り際に、ふとしたことから バス停にいた見覚えのある男…高校時代の同級生の行天春彦(ぎょうてん はるひこ)に再会しました。
ここで会ったが運の尽きw 帰るところがない、と言って行天は、身一つで多田の事務所に転がり込んで来たのです。
怒涛のドラマの始まりでした。
行天は、学生時代、成績はいいけれど、かなりの変わり者でした。
多田は周りのクラスメートもそうであるように 行天が嫌いでした。
工芸の授業中にふざけた同級生が裁断機に当たって、行天の指が吹っ飛んだのは…多田がそうなるように、わざと椅子を出しておいたから。
多田はまさかの事態に驚き ずっと後悔していました。どこか行天に対して負い目があったんですね。
苦い思い出を抱えながら 多田は行天と同居する羽目に。
行天は、変人故に全く使い物にならず、電話番を頼んでも要領を得ず 留守番電話の方がマシ、…と後悔するようなことも。
便利屋だけに、いろんな依頼を片付ける時の二人の会話が面白く、さすが三浦しをんさん、リアリティのある会話にまたしても魅せられました。
犬を預けたまま、行方知れずになった依頼人。
犬の引き取り手を探すうちに知り合った外国人娼婦や 彼女たちを取り巻くきな臭い男たち。
便利屋稼業を通して いろんな人達との交流を描いていく、という本かと思えば!
それだけに終わらないところが三浦しをんさん、読ませます。
結婚し子供をもうけたことも 離婚をしたのも 多田と行天の共通事項でしたが、それぞれに事情は全く違っていて。それぞれに辛い思いを抱えて今を生きていました。
最後の章の依頼人は、結婚を間近に控えた若い男性・北村。
断捨離の依頼を受けて下見に行った木村家を出てみると依頼人の家を伺っている男、北村。
彼は、自分の出自を疑っていて本当の親は断捨離の依頼者木村家だと思っている様子…
それまでの事件も多田や行天の過去やエピソードも、最後の章で集約されて、ここへ至る前フリだったのです。
多田には、苦い思い出がありました。
結婚後、妻は不倫している、と知人から聞かされた多田。そのころ タイミング悪く妻の妊娠が判明。
多田は、生まれてくる子供が自分の子供かどうかは関係なく愛しかったが…生後1ヶ月で熱を出して亡くなってしまった。
夜中に看病してやる、と言ったのに寝てしまい 朝冷たくなっていたことを妻は責め、やがて離婚。
多田は、生まれた赤ん坊が自分の子供でなくても、愛したかったし愛されたかった、一生かけて家族だと証明したかった…それなのに…。
本当の親を探そうとする北村は、多田にとって亡くなった赤ん坊の将来の姿だったのです。
木村家の納屋から出てきた古い家計簿も廃棄することになったのですが、行天がこっそり内容をチェックしたらしく、血液型や遺伝の仕組みについての本を購入していた、と。
見た目も 木村家の奥さんと 北村はよく似ているので 赤ん坊取り違えはあったのだ、と教えてやりたい行天と 自分の経験や、守秘義務の観点から 教えてはいけないと主張する多田。
意見が食い違った二人。
多田が「出ていってくれ」と行天に言い渡し、行く宛もないのにあっさり出ていった行天だったが…
年始にまた前年にも依頼をしたあの家で庭掃除と横中バスのバス停の見張りの仕事を終えて、ふと見ると あのバス停にまた行天の姿が… デジャブのようにw
様々な思いから、自分から行天を追い出した多田だったけれど 行天の姿を見て、口から出てきた言葉は…
「帰るぞ、行天。」
じわ~っと温かい気持ちになりました。
破天荒すぎる行天と 振り回される多田が面白く、会話もテンポよく、すいすい読めました。
映画にもなりましたし、続編も出ているようです。
そちらも読んでみたいな、と思っています。