⚠️ 基本ネタバレしております。ご注意ください。

【吉田修一】「路(ルウ)」を読みました

今年の5月に、NHKで「路(ルウ)」というドラマの予告が流れているのを、偶然見かけました。

ん? なんだか面白そうよ、原作は吉田修一さんの著書「路(ルウ)」

 

3話完結なので3話録画予約して、図書館にも予約を入れました。

 

「読んでから観る」派なので、ドラマはblu-rayのHDDに入れたままで、本を読んでから観ようと置いてあります。

 

この度、ようやく図書館から本が回ってきました。

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台湾に日本の新幹線が走る。商社の台湾支局に勤める春香と日本で働く建築家・人豪の巡り逢い、台湾で生まれ戦後引き上げた老人の後悔、「今」を謳歌する台湾人青年の日常……。新幹線事業を背景に日台の人々のっ国を越え、時間を越えてつながる想いを色鮮やかに描く。台湾でも大きな話題を呼び人気を博した著者渾身の感動傑作。

裏表紙より

2000年 逆転

2001年 着工

2002年 700系T

2003年 レール

2004年 陸揚げ

2005年 試運転

2006年 開通式典

2007年 春節

…の8章からなっています。

 

大井物産が台湾高速鉄道の入札を勝ち取るところから始まります。

 

主人公の多田春香は、東京・神田生まれの神戸育ち。関西私大を出て商社に入りました。彼女には、学生時代、台湾旅行で知り合った男性との恋とも言えないような 淡いけれど心に残る思い出がありました…

 

その男性、劉人豪もまた、連絡が取れなくなった春香を探していて…

 

9年という長い長い空白の時間を過ごした後 二人は日本で再び巡り合ったのです。

 

互いに求めあいながらも会えなかった二人が、たくさんの人を介して会えるようになったのも、春香が台湾で鉄道事業に携わりつつ 台湾の人たちと温かい交流を大切に下からなんですね…

 

春香の同僚の安西は、日本に妻子を残して台湾に赴任しているけれど バークリステルのユキちゃんといい仲になっていて。

現地採用の女性、芳慧とのやりとりも、「台湾の今」の女性の日常がわかって楽しいです。

 

後に、台湾新幹線の整備士になる陳威志と 幼馴染の美青の結婚への道のり。

 

台湾高校出身で、戦後日本に引き上げてきた葉山勝一郎と妻の曜子。

かつての苦い思い出が、台湾への想いを封印させていたのですが…

 

台湾新幹線に関わる人達が 一見バラバラの様に描かれて、最後にみんな伏線回収されてめでたしめでたしな大団円を迎えます。

 

互いにずっと探し続けていた 劉人豪と多田春香。

探していた割に、恋愛模様はないのですが 人豪は日本で、春香は台湾で働いているのは、相手への思いがあればこそなのです。

 

出会いが人生を作っていく、と感じることがあります。

この作品でも出会いが その後の二人の進み道を決定づけたのです。

 

長い時を経ても、再開すれば、会えなかった時間を一瞬で飛び越えて「あの頃」に戻れる、時間マジック。同窓会では、一瞬にして何十年も前の自分に戻れるのと同じで…

 

葉山勝一郎も、自分の余命が短いことを知り、長い間避けていた 台湾へ「里帰り」して積年の懸案事項だった旧友との和解を果たします。

 

安西は、妻と離婚して台湾人のユキちゃんと結婚、

葉山は、台湾人の旧友の病院で命の火が消えるまで厄介になることに。

 

人豪と春香は、ようやく出会えたのに、自分の居場所はそれぞれの仕事をする場所、とともに人生を歩むという選択はしませんでした。

確かに、恋愛色なかったですものね ^^;

 

 

台湾には旅行で一度だけ行ったことがあります。

春先4月で、本に登場するようなジリジリとした暑さは体験していませんが、聞いたことのある観光地や地名(龍山寺や永康街)などを文章の中に見つけると懐かしく思い出し、

台湾料理や小吃などの名前を読むのも、お料理を想像するのも楽しかったです。

 

台湾に、日本の新幹線が走る!という場面は、胸熱で、目頭が… うるうる…

 

台湾(日本以外の国)は、期限遵守の意識が日本とは違うので苦労させられ、大変な苦労の上にできたのだ、、、とかつての自分の仕事を重ね合わせながら感慨深く読みました。

 

「大地の子」で、大変なトラブルと苦労を乗り越えて中国に高炉を作る様子が描かれたのを思い出しました。

あれも…最高に胸熱でしたね!!